第529話
「御主人様!奥様!」「ナナ!何があったの?!」
「おお!ふたりともよくここがわかったな!いや、今はそれどころじゃないんだ。手を貸してくれ。ナナを引き上げるぞ」
「はい!」「えぇ!それにしてもなぜドモン様は下半身を晒して・・・」
「理由は後でだ!今はとにかくナナを助けるぞ!」
どうやってこの場所を知ったのか、サンとシンシアも屋根裏へ。
ナナを正面から抱え上げようとしているドモンの左右に分かれ、ナナと肩を組むように支えようとしたふたり。
「ナナしっかりしろ!今助けるからな!」半歩下がって片膝を付き、改めて力を入れ直したドモン。
「ああああ・・・誰か・・・誰か掻いてよぉぉ!!頭がおかじぐなるぅぅぅ!!」ナナは食いしばった歯をガチガチと鳴らす。
「なんだ?何を言ってうおっ!!」「キャッ!!」「あんっ!」
ガチャリと音を立て、またも突然床に穴が開いて下半身を落としたドモン。そしてサンとシンシアも。
麻雀卓を囲むように四人が向かい合い、呆然とした。驚きすぎて声も出ない。
「何?!下はどうなっていますの??」
シンシアのドレスは捲り上がって、上半身がある屋根裏に残った。
つまり下半身側は下着のみ。着衣を直すことが出来ない今、下に人がいないことだけを祈った。
「うわぁぁん!!誰かが!誰かがいますぅ!足を触られましたぁ!」
涙ぐみながらサンがそう訴えたことで、シンシアは絶望。
やはり下には人がいた。
「下には恐らく二十人くらいの男がいると思う。すぐに俺が上がって助けるから・・・」
「もももももっといるわよ・・・あああ・・・」
ナナの言葉でシンシアだけではなく、ドモンとサンも絶望。
そしてその瞬間両足首を掴まれて、全員が下半身を晒すこととなった。
「このちっこいのは、随分と小便臭いガキだな。みんな嗅いでみろよ」
「ピッタリと閉じて開いてもいないな」
「尻や腿は甘い匂いがするぞ。まあやはり子供なんだろう」
「う、うぅ・・・御主人様恥ずかしいよぉ・・・ふぐっウッウッウッ・・・」
下から聞こえた言葉から、サンが何をされたのかを察したドモン達。
泣いているサンを慰めたシンシアだったが、魔の手は当然シンシアにも襲いかかった。
「これはまた高そうな下着だ。だけどそれより何より、えらく汚れているな」
「おいこいつ!こんな透けるような白い肌してるくせに、大きな方をしたばかりのようだぞ」
「慌てていたのかしっかりと拭き取れてないようだな。やたらと臭うぜ」
「い、いやああああああああ!!!ドモン様!耳をお塞ぎになって!!」
トイレットペーパーなどないのだからそれも仕方ない。
何もかも終わったとばかりに、ガックリと肩を落とすシンシア。
しかし女性達を励まし、助けるはずのドモンの言葉はない。
「痒い!痒いよ!お股が痒いの!!ねえドモン!足でいいから私のお股を掻いてよ!なにか変なものを塗られて、すっごく痒いの!!」
必死に訴えかけたナナだったが、ドモンは顔を伏せたまま。
それによりドモンも何かをされているのだと女性達も察した。
「その声はおっぱいの大きな奥さんだね。ご明察の通り、あんたの大事なとこに塗ったのは、とあるキノコを潰した粘液で出来た『かゆみ薬』だ。蚊に刺された時に痒くなるだろ?あれと似たようなもんだ」
「ここへ案内した方の声ですわ!やはり罠でしたのね!」ハッとした顔をしたシンシア。
「御名答~!じゃあ褒美に同じ薬をたっぷりと塗ってやるからな」
確かに下から聞こえた声はドモンとナナ、そしてサンやシンシアもここへ連れてきた、入り口にいたホビットの男の声。
男の宣言通り、サンとシンシアも大事なところにたっぷりと薬を塗られたが、ナナのように痒くなることはなく、苦しむことはなかった。
「これは・・・まずいぞ」ようやく口を開いたドモン。
「い、いかがなされたのでしょうか?」下半身の感覚が何故かなくなり、冷静さを少し取り戻したサン。
「俺もさっき塗られたんだよ尻に・・・で、今は感覚がない状態なんだけど、もし本当にあいつの言う通り蚊の出す唾液と同じような成分なら・・・蚊の唾液の何万倍も何十万倍もの量を塗られたのと同じだ・・・」
「はーい、旦那も正解~。まあ針で皮下に入れたわけではないからまだマシだろうけど、それでも粘膜の薄い部分に塗れば同じくらい効くというわけだハッハッハ」
ドモンの話にも口を挟むホビットの男。
もしその話が本当なら最悪である。大事な部分を数万匹の蚊に同時に刺されたようなものだ。
しかも自らの手で掻くことも許されない。
ナナが正気を失うのも当然の話。
「う、嘘だろおい・・・」
「痒くなり始めましたの?!」「御主人様・・・」
「何を挿れ・・・くっ・・・くっそぉ!!あっあっやめろぉ!どうして痛くないどころか気持ち良・・・そんなバカな」
「・・・・」「・・・・」「・・・・」
ドモンが何をされているのかはわからない。
ドモンも自分が何をされているのかわからない。
サンとシンシアもナナと同じようなとんでもないかゆみに襲われ始めたが、今はドモンが悶え苦しむ・・・いや、悶える姿に夢中でそれどころではない。
時折漏らすドモンの言葉を聞き逃さまいと、必死に聞き耳を立てていた。いつの間にかナナまで復活。
「ねえドモン、下には男の人しかいなかったのよ?わかってる?」何故か赤い顔のナナ。
「だよな!だよな!そうだよな!そうなんだよな!あ、そんなにしたらまた出・・・止まら・・・」
「じょ、状況を詳しく教えて下さいまし!それでは聞き取れませんわ!」何故か赤い顔のシンシア。
「フゥフゥ!!」何故か赤い顔のサン。
「俺女の子にされちゃ・・・ごめ・・・こんな凄・・・また飛んじゃ・・・せめてカールに・・・」ドモンはもう意識朦朧。
「どういうこと?!ねえそこ詳しく!!」「フゥ!フゥ!フゥ!フゥ!」「受けですの?まさかドモン様が受けですの?!お答えくださいまし!」
身を乗り出すようにドモンににじり寄る女性陣。
気がつけばドモン以外の三人は、自力で穴から脱出することが出来ていた。
なんか布の向こう側で麻酔らしきものをお尻に塗られ、触診され勝手に元気にされて、勝手に賢者タイムにされてしまったあの時の心情。




