第522話
「あとサンは自動車からひき肉を作る機械を持ってきてくれ。それとオーガ達から新鮮な牛肉を貰ってきてくれないか?ここからなら自動車で一時間もあれば往復できると思うからさ。ついでに自動車にこいつらも乗せてやってくれよ」
「は、はい!」「わーい!!」「やった!!!」「ねーおかあさんいいの?」
デジャヴと同じように、はっきりとした記憶ではない。今と似た何かを経験した気がし、何かを覚えている気がするというだけ。
そして何かを避けなければならない危機感も一応持っていた。
この時ドモンは料理をする上で、自動車の中にある冷凍の肉で十分だと思っていたし、それをサンひとりに取りに行かせようと考えていた。
が、だからこそ、それらの全て避けたのだ。
「あとオーガをふたりくらいここに連れてきてくれないか?」
「オーガの方を・・・ですか?」
「うん、やっぱり素通りしちゃったのも悪いし、挨拶ついでに土産でも持たせようかと思って」
「???かしこまりました!」
土産なら今持っていけばいいのではないだろうか?と考えたサンだったが、ドモンになにか考えがあるのだろうと理解し、良い返事をしながらペコリと頭を下げた。
ゴブリンの青年も子供達に引率することになり、張り切って自動車まで行き、ひき肉機を担いで戻ってきた。
「おぉ悪いね兄ちゃん、運んでくれて」
「このくらいは朝飯前ですよ!では行ってまいります!」
「ああ頼んだよ。あいつらの面倒も見てやってくれ」
「はい!任せてください!」
別にひき肉機は肉と一緒の時で良かったのだけれども、どうにかお礼する意志を伝えたかった青年がわざわざ今持ってきたのだ。
満面の笑みで戻ってきた青年を見てドモンにもそれがすぐに伝わり、素直に礼を述べた。
サン達が出発したのを見届けてから、ドモンはプリン作り。
卵とミルクももっと新鮮な物の方がいいのではないかと、仲間のゴブリン達が暮らす山に行こうとした母と姉をドモンが止める。
「もう暗いし、女だけで向かうのは危険だろ」
「アハハ心配しすぎよね?お母さん」「少し行けば仲間達も暮らしていますので平気かと思・・・」
「駄目だ!」
「ひっ!」「いきなり大きな声出さないでよ・・・怖いよ・・・」
突然ドモンが不機嫌な顔を見せ、ビクッと体を竦ませたゴブリンのふたり。
それによりナナも何かを察し、「普段ふざけてるドモンがこれだけ言うってことは、きっとなにかあるのよ。この人の悪い予感はよく当たるから」とフォロー。
プリン作りをしながら、ゴブリンの母娘に仕掛けていくドモン。
ドモンは姉とナナとシンシアに作業工程を教え、土産分のプリン作りを頼んでから、ギド達と母親と共に二階の寝室へ。
歯の状態を調べるふりをしながら、例のキノコの絞り汁を付けた手で口の中を弄りまくり、ドモンのニオイまで嗅がせて発情させた。
母親がビクンビクンと体を跳ねさせ、ぐったりしたところでそのままベッドに寝かせ、「このまま休ませよう」とギド兄弟に小屋へ戻るように指示。
静かになった家の中。キッチンだけが騒がしい。
「ドモーン、大体出来たわよ~。そっちはどうだった?」と呑気な声を出すナナ。
「上手に出来ましたわ!見てくださいまし!」「ねえあなた、こんなものかしら?」話している内に、シンシアの口調に少しつられた姉。
「おお上等だ。それよりもお前達水浴びでもしてこいよ。ナナはわきの下が肉の腐った臭いになってるし、シンシアはさっき下着を汚したな?ふたりとも随分臭ってるから、子供らが戻ったら臭いって言われちゃうぞ?」
「え?やだ嘘?!」「ああドモン様!秘密にしてくださいまし!」
もちろんドモンの当てずっぽう。
だがデジャヴの中でも印象に残った部分なので、それを元に少し大げさに言ってみたのだ。
ふたりはドモンの思惑通り、大慌てで水浴びをしに行った。残ったのはドモンとゴブリンの姉のみ。
「お、お母さんはどんな様子なの?あなた・・・」急にふたりきりとなり、胸を高鳴らせる姉。
「疲れたのかそのまま横になっているよ、母さんは。心配だし一緒に様子見に行こうぜ?」
「ちょ、ちょっと!まだ・・・あなたのお母さんじゃ・・・ないんだから」
真っ赤な顔でプイッと横を向き、怒ったふりをした姉だったが、思わず嬉しそうな顔をしてしまいそうになり、慌てて階段を駆け上った。
ドモンはゆっくりとその後を追う。例のキノコをひとかじりして・・・。
しばらくして暗い寝室の中、姉の声だけが小さく響く。
「うぅぅ・・・ふたりで騙したのね・・・やめてお母さん!そんなとこイジらないで!」
「お母さん、見ないで顔を・・・私と同じ蕩けた顔をして・・・」
「良かったねお母さん、これでこそ本当の親子ね。あ、もしかして姉妹ってことになるのかな?アハハ」
「次は私よ!お母さんは見てて。え?仲間はずれなんかじゃないわよ。もう仕方ないなぁ~じゃあ私が慰めてあげるから、そこで仰向けになって」
結局最後は三人とも例のキノコを食べ、頭がおかしくなるのを堪えながら、快楽を貪り合うことになった。
ナナとシンシアがお湯を沸かして水浴びをしている、ほんの三十分間の出来事。
ベッドでタバコを咥えるドモンの右の上半身には、姉がうっとりとその余韻に浸っていて、ドモンの左の下半身にも、やはりうっとりとした顔でしがみつきながら、ドモンの何かをイタズラし続ける母親がいた。
そろそろ戻らなければ流石にまずいことになるという予感はあるものの、名残惜しさと体の気だるさが相まって、三人とも動けない。
お互いに「あと1分」「あと10秒・・・20秒だけでも・・・」「ほんの少しでいいから」と、気づけば更に十分が過ぎた。
そこへ響くトントンという階段を上がるふたつの足音。
姉は素早くドモンのジャケットを全裸の上に羽織り、母親は上半身裸のままで娘のミニスカを穿き、ドモンも急いで姉の下着を身に着けた。




