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第515話

小さな器にカラメルや、卵と温めた牛乳をドモンが流し込んでいく様子を見守るナナと子供達。

先程の騒動ですっかり打ち解けて、今はお姉さん風を吹かせていた。


「いーい?あれはきっと美味しい飲み物よ。私がこの世界の誰よりもドモンの料理を食べているんだから、まーず間違いないわね」

「すごーい」「いいなぁ」「だからドモン様と同じニオイなんだね」

「誰がおじさんのニオイよ!」

「あイテ!」


男の子の頭を引っ叩いた後、自分の脇のニオイを確認したナナだったが、まだ水浴びをする前だったのもあって、本当に少し蒸れたニオイがして顔をしかめた。

その際大きな胸が邪魔だったのか、片手でぐいっと内側に寄せたため、正面にいた青年ゴブリンが両手で自分の顔を押さえ「あぁもう」と大悶絶するはめに。


「飲み物じゃないっての。それより手が空いているなら、これを冷蔵庫に入れてきてくれ」とドモン。

「なーんだ」「全然違ったね」「はーい」「あーれー?おっかしいなぁ」


ドモンを叱ってばかりで、子供らに少し怖い人だと思われていたナナだったが、ドモンのおかげで仲良くなれて今は良い気分。

「屋敷の子供達もニオイを嗅がせれば仲良く出来るかしら?」と冗談も飛び出たが、ドモンに「ヤメとけ」とすぐに止められた。


「こちらの捏ねた小麦粉は何に使用するのでしょうか?」とサン。額の汗が眩しい。

「これはこうして丸めて、潰して薄い皮を作るんだ。中に具材を包み込んで茹でて食べるものなんだよ。たくさん必要になるからシンシアもサンを手伝ってくれ。お前は俺が中の具材を作るところを見て覚えるんだ。これから作れるようになるためにな」

「宜しくてよ。サン、お手伝いいたしますわ」「はい!」「お、覚えられるかな私に・・・」


野菜置き場からキャベツやニンニク、ニラによく似た香草を持ってきてみじん切りに。

ひき肉にそれらを混ぜ、味噌や醤油、ゴマ油や片栗粉などを加えてゆくドモン。


「あなた随分手際が良いわね。なんかその・・・ちょっぴりだけ格好良く見えるわよ・・・」

「子供の頃から料理してたからな。ほら俺なんか見て無くていいから、料理の方を見ろ」

「わかってるわよ。でも不思議ね。なぜだか初めて会った気がしないわ」やはりドモンが気になる姉。


「この人の特技みたいなものよ。私も初めて会った時そう思ったもん」戻ってきたナナもそれには同意。

「御主人様ってたまに不思議なことがありますよね。色んなことが初めてのことなのに、全くそんな風に思えなかったり」とサン。

「それこそあの村のゴブリン達を私達の街に連れ帰った時も、全く初めてな気がしなかったわ」

「わかりますぅ!もう何をしたってまた暴動が起きちゃうんですね・・・と思った記憶があります」

「???」「???」「・・・・」


ドモン達には、ナナとサンが何を言っているのかさっぱり分からず。シンシアは何か引っかかりがあるけれど、確証を得るまでではなく沈黙。

子供らも戻ってきたところで、次の行程へと移った。


「これなにー?」

「これは水餃子っていうものだよ。今から作り方を見せるから、みんなで一緒に作るんだ。きっとお前らの母さんや、歯を失った人でも食べられるものだから」

「!!!」「!!!」「!!!」「!!!」「!!!」


ドモンの言葉でゴブリン達の目の色が変わる。

姉は何かの気持ちを抑えるのに必死。

ドモンが手本に具材を皮に包み、ひとつ餃子を作ってみせると、全員が競争するかのように、皮を手に取り餃子を作り始めた。


「ドモン様見てー!」「ああ破けちゃったぁ!」「中身が多すぎで溢れてきちゃった・・・」

「ほらほら、喋っていないで手を動かせ。これはもう少し具の量を増やしてもいいぞ。そっちは多すぎだ」


餃子づくりを楽しむみんなの出来具合を確かめるドモン。

みんなどんな味がするのかもまだわかっていないが、きっと美味しいものだと期待に胸を膨らませ、食べるのをものすごく楽しみにしていた。


「ナナ・・・肉団子の時とまるで変わらないじゃないか。何だよその食いすぎた鳥みたいな巨大餃子は」

「う、うるさいわね!ほんのちょっぴり大きくなっただけじゃない!」「フピッ!」

「他の餃子の40倍はあるぞ。お前のたくさん食べたいという欲望がそうさせるんだな」

「そんなに大きくないわよ!!せいぜい4~5倍よ・・・」


どうやってそこまで皮を伸ばすことが出来たのか、ナナのげんこつ餃子の完成。

真っ赤な顔で反論するナナにサンは吹き出し、子供達も頬がパンパン。


「皆さん、楽しそうに何を作っているのですか?」トントンと階段を下りてきたギド。

「お、俺も手伝っていいかい?俺こういうの好きなんだよ!」ギドの兄は実は料理好きで、ドモン並みに料理は上手。

「私もすぐにお手伝いしますね」平静を装っているゴブリンの母親だが、生まれて初めて口の中をこれでもかと弄られ、頭がおかしくなりそうになっていた。



家の中は大騒ぎ。

いつもは日が落ちたこの時間にもなると眠くなってしまう子供らが、楽しくて楽しくてまるで眠くならない。

お互いにあーでもないこーでもないと指摘し合いながら、出来た餃子はすでに二百個を超えた。


「さあそろそろ食べようか。お前達の母さんが食べられるとなれば、これを食事することに難がある者達に広めたらいい。それで栄養も多少取りやすくなるだろ。休憩所で売っても儲かっちゃうかもなハハハ」


こうしてドモン達とゴブリン達の、楽しい食事が始まった。




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