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第510話

出発の朝。


「そろそろ出発するぞ。ナナ、ギド達にそろそろ出るぞと声をかけてきてくれ。サンは忘れ物がないか最後の確認を。シンシアは運転前に自動車の点検をしといてくれ」

「わかったわ」「はい!」「ええ」


前日の夜に散々準備はしたものの、出発直前はどうしても慌ただしくなってしまう。

あれは持ったか?これはいらないかな?とギリギリまでやっていた。

馬や馬車での冒険旅行だと、持ち運べる必要最低限な物だけを考えていたけれど、ある程度余裕がある自動車での移動だとついあれこれと持って行きたくなってしまう。贅沢な悩み。


「ねえドモン、折角だから向こうでのんびりゆっくりしようよ。サンの披露宴もやらなくちゃだし、ゴブリン達の温泉宿にも行ってみたいし」

「ああそうだな」

「ちょっとナナ?ワタクシの披露宴でもありますわよ!でもまあワタクシの国の城でも何度か行うつもりではありますけれどもホホホ。ワタクシ庶民とは違いますのよ、庶民とはホーホホホ!」


久々の帰省で羽根を伸ばしたいナナと、少し憎まれ口を叩きながらも、今回の旅が楽しみで仕方のないシンシア。

ついいつにも増して口数も増えてしまう。

サンも新調したメイド服を着て、ニコニコとしながらも気合が入っている様子。


「一ヶ月くらい居られないかな?」とナナ。

「・・・一ヶ月は無茶だろ。会社だってほっとけないし」タバコに火をつけたドモン。


「だってみんなでお祝いしたいじゃない」

「何を?ナナの誕生日は終わったし、サンもシンシアも誕生日はまだ先だろ?」

「違うわよ。ほら・・・ドモンがこの世界に来て来月でちょうど一年よ?ということは、私達が出会った記念日というかエヘヘ」


大きな胸の前でちょんちょんと自分の人差し指同士をくっつけたナナ。

随分前から考えていたことらしく、ドモンが思っているよりもずっと、ナナにとって大切な思い出の日だったらしい。


「あぁちょうどこのくらいの季節だったか。北海道はまだ肌寒くて、あの俺の黒のジャケットを着て買い物に出かけたんだった。あとどのくらいでその記念日なの?」

「もう、だから男の人って!ええとね、今日からだとうーんといちにぃさん・・・ちょうど27日後ね」

「・・・そりゃ確かに丁度だな」その答えを聞いて、ドモンが大きく煙を天井に向かって吐いた。

「なにが丁度なのかしら?教えていただけますこと?ホホホホ・・・」


ドモンとシンシアにツッコまれて、顔を赤くしたナナと頬をパンパンに膨らませたサン。

ただドモンにとって『27日後』は、確かに『丁度』であった。あくまであのステータスの情報を信じるのならば。


「まあゆっくりしてお祝いしたいのは山々だけど、今回は披露宴でのお祝いもあるから戻ってからにしようよ。俺達だけでさ。俺も美味しいもの作るから」

「えー!もう仕方ないなぁ。じゃあ今まで作ったことがない珍しいお菓子作ってよ」

「わかったわかった。任せとけ」


ドモン達がそんなやり取りをしているところに、ギドと兄貴がやってきた。


「お待たせいたしました皆様!」「いやぁ準備に手こずっちまった。申し訳ない」

「こっちも今準備が整ったところだし別にいいよ。さあ行こうか。最初はシンシアの運転でいいんだよな?」

「そうですわね。さあ皆様お乗りになって」


荷物を持ってぞろぞろと階段を下りる一同。

ドモンはナナに支えられながら、ひょこひょこと皆についていく。


「俺らの街までどのくらいだったかな?昔の馬車で一週間、新型馬車で早けりゃ三日くらいってのは聞いたけど、実際距離的にはどのくらいのものなんだ?」ドモンの素朴な疑問。

「先生がおっしゃられていた単位で言うならば、300キロメートルから500キロメートルの間かと思われます」と答えたギド。


「結構あるなぁ。そりゃ新型馬車でも三日かかるわな。道中で馬も休ませなけりゃならないし」

「ええ、でも自動車なら・・・と言いたいところなのですが、現在は別の事情で同じくらいか、それ以上に時間がかかってしまうかもしれません」


ギドがそう言った意味は、実際に道に出てみてすぐにわかった。

街を出てカルロス領へと向かう道中、馬やら馬車やら大勢移動をしていたためだ。


交通量は日に日に増しているようで、いくら自動車が速くても、前をゆっくり走られていては意味がない。

せめて片側二車線ならばやりようがあるかもしれないが、馬車同士がすれ違うのがやっとの道ではどうにもならない。


「まああんなビルが建てば人が集まるのもわかるけど、それにしても随分と旅人が増えたもんだな。前は滅多に人とすれ違うこともなかったから、ナナとスケベしながら窓を開けて風景を楽しむことも出来たというのにムググ・・・」

「ちょ、ちょっと!それに旅人は居なかったけど、窓を開けたら思いっきり護衛の騎士さんと目が合ったじゃないのよ!」


後部座席にゴロ寝してナナの膝枕で寛ぐドモンと、慌ててドモンの口を塞ぐナナ。

シンシアは馬車を追い抜くのに苦労してイライラしていたというのに、ドモンの話にますますイライラ。

そんなシンシアの気持ちを助手席のサンが必死に宥めていた。


「旅人が増えた理由はそれだけではないのですが・・・」


ギドはそう伝えようとしたが、ドモンとナナの会話に顔を赤くしてつい声が小さくなってしまい、しっかり伝えることが出来なかった。





迫る実家の引っ越し。今週。

流石に手伝わないわけにはいかないので、更新はどうなるかわからず。

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