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第507話

「話には聞いていたが・・・やはりこれも貴様が手配したのか」

「俺がと言うより、王都の職人が作ってくれたんだよ、冷蔵馬車ってのを。まだ試作品だけど王都の職人もやるもんだろ?しっかりした車は、またギドに作ってもらえるように頼んであるけどね」


驚くカールの目の前には、この国ではまず手に入らないと言われていた沢山の魚が並んでいる。

他国と協定を結んだことと、冷凍したまま運ぶことが可能になったことで、なんとか販売にまでこぎつけた。

ドモンの言葉にトッポは少し得意げな顔。


カールは、いつかこんな事も出来るであろうとは思っていたが、いざ現実にその様子を見せられると、ドモンの持つ実行力と影響力に改めて驚かされた。義父を含め、各国の王族がドモンと手を結びたがるのも納得である。



「こちらはこの場でも食べられますの?!」「ねえ奥様これも見て!私にはあちらをくださる?」「わぁ!美味しそう!」


向こうの店では女性陣が大騒ぎ。

お妃様からお付きの侍女達まで、一緒になって買い物をしているのがカールから見えた。


「あれはアイスクリーム屋というものですよ」またも得意気に説明をしたトッポ。

「なるほどあれが・・・噂には聞いておりましたが」

「アイスクリームに関しては、僕が発案したものもいくつか含まれているのですフフフ」

「流石でございます陛下」目を伏せてきれいなお辞儀をしたカール。


ふんぞり返って鼻息を荒くするトッポの頭をドモンが引っ叩き、そんなドモンの頭を思わず強く引っ叩くカール。

イテッと叫びながらよろけたドモンをナナとサンが慌てて支える。

後方でそんな事があったけれど、アイスクリームを食べる女性陣は気にも留めず。留められるはずもない。


「ハァハァハァ・・・!美味しいっ!!なんですのこれは?!」

「んっんっ!ほっぺたが落ちてしまいそうです奥様!」

「ほらあなた!私のも食べてご覧なさい」「では奥様も私のをどうぞ」

「た、大変ですわ皆様!このアイスクリームをクレープというものに包んだものが・・・もう言葉にもなりません!!」


アイスクリームが銀貨一枚、クレープに包まれたものが銀貨二枚、更にそれに果物や生クリームが挟まったものは銀貨三枚弱。

甘味としてはこの世界ではまだまだ高価なもので、なかなか売れ行きは伸びていなかったが、奥様達のその様子に、二の足を踏んでいた一般客の女性達も、飛びつくように店に群がり始めた。


「ハハハ原宿かよ。ほら、折角だからカールも味見してこいよ。魚の方は慌てて買わなくてもあとで食事に出すからさ」

「う、うむ。だが女性達がこれほどいると少し気恥ずかしいな・・・」


流石にドモンも躊躇するほどの女性の人口密度。間違って女性専用車両に乗ってしまった時のよう。

間違ったのは決してわざとではない。神に誓って。悪魔だけれども。


「じゃあ私が買ってきてあげるわよ!」とナナ。当然自分の分も買ってほしいという催促でもある。

「私が購入してきても宜しいですわよ?ね?サン」「あ、あの・・・はい・・・」カールには恩義があるけれど、シンシアには逆らえないサン。


「では皆の分を・・・」仕方なく金貨を出したカール。

「お?悪いなカール」「献上品代わりというところですかね?」「カルロスにしては気が利くではないか」

「・・・全員に一番高価なものを」

「やったぁ!!ちょっと待っててすぐに買ってくるから!」


奪い取るように金貨を持ち、おっぱいの隙間を縫って進む超巨大おっぱい女。置いていかれたシンシアはヤレヤレのポーズ。

素直に喜ぶ国王と義父の姿に、カールはここでもドモンの影響力を垣間見た。


まるで世界が変わっている。

そもそもここに国王が普通にいることがおかしなことなのに。


「サーン、ちょっと手伝ってぇ!持ちきれないのよ!」沢山の人の向こう側から大声を出して、ブンブンと手を振るナナ。

「は、はい!」「???」「???」「???」


人の隙間を通り抜けてサンがナナの元へと行き、引きつった顔をしながらナナと一緒に戻ってきた。

その手には大量のクレープが。


「流石に全部は使い切れなかったわ。それに他の人の分まで買っちゃ悪いしね。はい、お釣りの銀貨40枚」

「な?!」「お前それは流石に・・・」


クレープを含むスイーツを銀貨60枚分、日本円にして約6万円分も購入してきたナナに驚くカールとドモン。

サンは横でカールに向かってペコペコと頭を下げていた。

カールもある程度のお金は持ち歩いてはいるけれど、一軒目の買い物でこれでは先が思いやられる。


「昨日も食べたけどやっぱり美味しいこれ!ほらカールさんも食べてみて」両手に二種類のクレープを持って、交互に食べるナナ。

「き、昨日も食べておったのか・・・」呆れながらもカールもひとくち。奢った甲斐もなんだか半減。


ナナは試食係として、オープン前から時折食べていたのだ。


「むっ!これは一体?!こんなものがあっただなんて・・・」

「あれ?カールはクレープ食べてなかったか?」

「食べておらん。それにこの中の冷たい・・・アイスクリームだったか?噂通り、いやそれ以上だ」


この日ばかりは混雑していてゆっくりもしていられず、少し行儀が悪いが、その場で立ったまま食べ尽くしたカール。

今見たこれらの店を含め、自身の領地でまた作らなければならないものが増えてしまったと、頭を抱えることになった。




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