第504話
「やりやがったな・・・」
司会者、オークキングも含め、全員が結託していることを悟ったドモン。
恐らくこれを機会に、何かしらの役職や、下手をすれば本当に義父と養子縁組させられてしまうのだろうと予想した。
他国の者達や、シンシアとその両親も含み笑いをしていて、なんとも怪しげな雰囲気。
まるで小学生の学級委員を決める時のよう。
「他にも巷で今人気の調味料、醤油を生み出したのもドモン様だということですが」
「・・・・」ドモンはムスッとした顔のまま。
「それと便利な24時間営業のお店もそうでしたね!私もいつも利用させていただいてますよ。あそこの唐揚げがとっても美味しくて。あ、それもドモン様がお作りになったものでした」
「おぉすごい・・・」「あれもそうだったのか!」「いいぞドモン様!」
打ち合わせ通りにドモンの功績を称える女性司会者。
ドモンからはトッポと義父が、ゴニョゴニョとなにか打ち合わせているのが見えた。
「本当に良いのかな?勲章なんて突然あげちゃって」ゴソゴソと懐に手を突っ込んだトッポ。
「こういった場では流石の奴も断れまい。それに受け取ろうが受け取るまいが、勲章を与えるにふさわしいという既成事実さえあれば、もうこっちのものであろう」ドモンに見えないように口元を隠し、耳打ちをした義父。
同様に他国の王族達も懐に勲章を用意。
トッポと義父はドモンの王家入りを狙って、他国の者達はドモンと更に強い友好関係を築き上げようとして。
完全に外堀を埋められ、ドモンは逃げ道をなくした。
いくらドモンが嫌だと言っても諦めない、懲りないわがままな王族達。
このビルを見ればそれも仕方のないことだろうけれども。
「くっそ・・・この場でクソでもして、式ぶち壊してやろうかな?ちょうどちょっと腹も壊してるし・・・」
「え?何かおっしゃいましたか?ドモン様。随分と汗の方が額に浮かんでおりますけれどもウフフ」
「今日はまだ三月だというのに、日差しが強くて暑いからね。いやぁ暑い暑い。流石に北海道とは違うな」
「北海道が何かはわかりかねますが、熱中症には気をつけてくださいね!ドモン様」
女性司会者にすっかり手玉に取られ、意気消沈していたドモンだったが、司会者のその言葉に即座に反応。
ニヤリと嫌な含み笑いをし、それを見たナナが「どいてどいて!ちょっとそこを通して!」と混み合っている観客席の後ろの方で暴れでいた。
「え?何に気をつけろって?」とぼけた顔のドモン。
「だから熱中症に気をつけてと」訝しげに答える女性司会者。
「その言葉、ものすご~くゆっくり言ってもらえる?」
「熱~中~症~・・ですか?」
「もっともっとゆ~っくりと」
ドモンと女性司会者のやり取りに、ナナ以外の全員が不思議顔。
ドモンが次に何をしようとしているのかを知っているナナだけが大騒ぎしながら、必死になって止めようとしていた。
「ね~ちゅうしょ~う?」
「もーっとゆっくり言えば良いことが起きるんだよ・・・・俺にとってだけれども」最後の方はボソッと呟いた。
「もっとゆっくりですか??ねぇ~・・・ちゅ~・・・しよ~う?」
「はい、いただきまーす」
両手で女性の頭を鷲掴みにして振り向かせた瞬間、唇を重ねて胸とお尻を揉むドモン。
何が起こったのか全く把握できないまま、女性司会者はドモンの軍門に降った。
突然のことに観客達も呆然。
「ぶはあぁあああ・・・酷いっ!どうしてこんなことを!私、夫もいるというのに!!」ドモンの罠にかかり涙ぐむ女性。
「俺は知らん。そっちがチューしようって言ったんだから。ワッハッハ!」
「それだけじゃなく体まで触るなんて!痴漢よ!!」
「まだ触ってないところがあるんだけどなぁイヒヒヒヒ!」
ドモンにとっては、人妻であっても関係などない。
貴族の奥様達ですら平気でキスをするし、そもそも義母であるエリーの胸に飛び込んだり、盗撮をする男なのだから。
何が起こったかを把握するに連れ、ざわざわとした声が徐々に怒号へと変わる。
当然記念式典は台無しとなり、ドモンに勲章を送るどころではなくなった。
「殺してやる!!」と壇上に上がってきた夫らしき男性と、「あんたぁ!」と怒りながら走ってくるナナ。
シンシアだけではなくサンも怒っている中、一番にドモンの元へとやってきたのは、ドモンも想像していなかった人物であった。




