表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
502/786

第499話

エレベーターが最上階へ到着し、ドアが開く。

目に飛び込んできたその光景に、全員が心を奪われた。


居住スペースであった先程の階までとは打って変わり、ビルの周囲の壁はほぼ全体がガラス張り。

ガラス張りとは言っても透明なだけで、実際はガラスよりもずっと丈夫な透明な樹脂で作られており、安全面は問題なし。

いくつもの店が用意されていたが、その壁もガラス張りになっている部分が多く、全体的に視界が開けて明るい雰囲気になっている。


「す、すごい・・・これが・・・僕の国・・・」


ゆっくりと窓際まで歩き、その街並みを見たトッポ。

城はもちろん、大きな歌劇場や先ほど見えなかった王都の門も見えた。


行き交う馬車が豆粒のように見え、どうにも現実感がない。だがそれがとても美しいと感じる。

中世ヨーロッパ風の建築物がびっしりと並んでいるのを見下ろし、ドモンも思わず感嘆の声が漏れた。


「実はこの世界はゲームの中でしたって言われても、今なら信じちゃいそうだよ。俺好きだったんだ。シムなんちゃらってやつとか」とドモン。

「なによそれ?それよりもドモン、望遠鏡で見てみようよ!」ナナが三つほど並んだ有料望遠鏡を指を差す。


その瞬間、我先にと走り出したトッポとチィ。

「ずるいですわよ!」とシンシアもスカートの裾を持ち上げ猛ダッシュ。

慌てたナナが「ドモン!早く早く!!」と腕を引っ張ったが、ドモンは走ることが出来ず「先に行ってるわよ~!」とナナだけが走っていった。サンとミィは銅貨を用意してその後を追う。


何枚も銅貨を床に転がしながら、トッポとチィとシンシアが必死に機械に銅貨を入れていく。

チィの背中をボカスカとナナが叩いていたが、チィは知らん顔。

十枚の銅貨を入れ終えた瞬間カシャンと音が鳴り、機械についているメーターが3の位置を示した。銅貨十枚で三分見ることが出来るらしい。


「ここ以外にも、別の窓にも望遠鏡は設置してありますから、宜しければそちらも利用してください」とギル。

「え?ホント?!じゃあドモン行こうよ!」

「わかったわかったから!慌てんなって。サン、お金ある?」

「はい!シンシア様、御主人様のお世話をしてまいります」

「ええ、よろしくてよ。ワタクシはまだここで見ておりますから」

「サン、こちらは私が見ていますのでドモン様の方を」「うん!ありがとうミィ!」


ミィがこの場に残り、サンはドモンとナナと一緒に西側の窓へ。

ナナは早く見てみたくて走り出したけれども、脚の悪いドモンはサンと一緒にノロノロと歩いていた。

当然ナナはじれったくなって、その場で地団駄を踏んだり、窓とドモンのところを何度も往復し、服のボタンをひとつ弾き飛ばしてしまうほど、大きな何かをはね散らかしていた。これでもエリーよりはずっとマシなのが恐ろしいところ。


ようやくドモンがナナの元へと追いついた頃、トッポ達の一度目の有料望遠鏡が終了し、ドモンとは反対側の、東側の望遠鏡へ向かって歩いていた。


「自分の街が・・・自分の国がこんなにも大きいものだとは・・・」何かを思うトッポ。真剣な顔。

「この街を・・・この国だけではなく、この世界を守らねばなりませんね・・・。改めてお詫び申し上げます。アンゴルモア国王陛下」シンシアも真面目な表情。

「もう水に流しましょう。我々はこの人々の幸せを守るため・・・」


「世界だの人々の幸せだの急になに言ってんのよ?高い所のぼって、神様かなんかになっちゃったって勘違いしてんじゃないの?キャッキャ言いながら望遠鏡覗いていたくせに」「だ、だめチィ!もう!」


後ろを歩いていたチィがうっかり心の声を漏らしてしまい、ミィが慌てて止めた。が、ミィも実は同じことを考えていた。

チィにそう言われて、自分がちょっぴり悦に入っていたことを悟り、みるみる耳を赤くするトッポとシンシア。

ドモンがこの場に居なかったのだけが、本当に不幸中の幸い。



「うわ~見てよふたりとも!あれってチーズの美味しかった隣街よね?!」

「方向的には確かにそっちの方だな。ここから見えるのか。ほら、サンも見てごらん」「はい!」


ドモンと交代したサンが、ナナと横に並んで望遠鏡を覗き込む。

サンは背が低いので、小さな踏み台の上に乗りながら望遠鏡を覗いていて、それがなんとも可愛らしい。


「今度旅に出るのって、確か北西の方だって勇者さん達が言ってたわよね?だったらあっちの方よね。サンも探してみて!」魔王の居城を必死に探すナナ。そもそも地下にあるので見えるはずもない。

「は、はひ・・・ふぐ・・・」

「ん?どうしたの?・・・って、ちょっとあんたぁ!サンに何してんのよ!」


メイド服姿で突き出していた小さなお尻にしがみつき、幸せそうな頬ずりをしていたドモン。

必死に声を出すのを我慢していたサンだったが、ナナは異変にすぐに気が付き、あっさりとバレた。


「まったく油断も隙もあったもんじゃない!」

「申し訳ございません奥様・・・」サンはしょんぼり。

「サンのことじゃないのよ?悪いのはドモンよドモン。大体触るならこっちにおっきいのがあるでしょうが!」パーンと自分のお尻を叩いてみせたナナ。

「イチチ・・・だってナナはちょっとがに股で望遠鏡を覗き込んでたから可愛くなかったというか・・・うわぁ!もう許して!死んじゃうって本当に!」


余計なことを言って余計に尻を叩かれ、HPが残り4まで削られたドモン。

改めて銅貨十枚を追加して望遠鏡を覗き込み、エルフの住む森を探してみたが、当然見つかることはなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー

cont_access.php?citi_cont_id=985620636&size=135
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ