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第498話

「ドモンさん早く!早くこちらに来てくださいよ!ここからお城が見えるんですよ!!」大興奮のトッポ。

「ドモン何してるのよ!見てよこれ!早く来てってば!」ナナももちろん大興奮。


いくつかある窓の前にずらりと横並びとなって、皆歓声を上げている。

その様子がまるで修学旅行に来た田舎の学生達のようで、ドモンは思わず吹き出した。


「サン、あの山の向こう側がワタクシの故郷かしら?」窓に指を当てて、遠くの山を指差すシンシア。

「シンシア様のお国は、その後ろのお山の、そのまたもうひとつ後ろのお山の向こう側ではないでしょうか?」

「まあ随分と遠いのですわね!ここに来た時は、確かにいくつか山を越えたり迂回もしましたものね」

「はい」


サンがシンシアに説明しているところにドモンも合流し、「確かもう少し左側だったと思うぞ?あっちの山の方じゃないか?」と指を差す。

「もうこっちこっち!ほらこっちに来て!」少しだけ嫉妬しながらナナがやってきて、ドモンの腕を引っ張った。


「見てくださいドモンさん!ほら!お城が見えるでしょう?」

「もう!こっちが先よ!ドモン、あれを見てほしいの!あの行列って王都への門の行列よね??」

「おお、本当に城が見えるな。トッポの住む王城じゃなくて手前の城だと思うけど。あと行列は、確かにあの門の行列っぽいな。流石に門自体は、他の建物に隠れて見えないけど」

「やっぱりそうだったのね。あそこから手を振ったらここから見えるのかなぁ?」


トッポとナナの興奮は収まらない。

カールの領地とは違い、びっしりと建物が並ぶ様子は圧巻の風景。

結局、ドモンも田舎の学生の仲間入り。


「流石にここからは望遠鏡でもないと人の姿なんてわからないよ。それともナナのおっぱいだったら、デカいからわかるのかな?」

「ちょっと!わかるわけないでしょ!」

「ナナが先っぽをぺろんと見せてくれれば、どんなに遠くても俺は見つける自信あるぞ」

「み、見せないわよ!このスケベ!!」


遠くからこのビルに向かって胸を出している自分をうっかり想像してしまい、真っ赤になって否定するナナ。

どこからか「サンなら出来ます・・・」と聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう。


「望遠鏡なら最上階に設置してありますよ。以前先生が話してくださった、時間貸しの望遠鏡というものを作ってみました。銅貨を十枚入れると中の時計が動き出し、その時計が動いている間だけ覗けるようにしました」とギド。すでにシーケンス制御を応用しはじめていた。

「そりゃすごいな。じゃあ途中で寄る予定のエルフの森だかってのもそれで見えるのかな?」

「え・・・?」「へ??」「・・・・」


全員の会話がピタッと止まり、突然訪れた静けさの中、ハァ~と大きなため息を吐き出しながら頭を抱えるエルフ。

そもそもエルフの存在自体が都市伝説くらいの話で、その存在がここにいることが珍しいことこの上ない状況なのだ。

絵本などの中で世界にはそんな場所がきっとあると語られてはいるが、当然人間が行ったことなどない。


元の世界で例えるならば、妖精と呼ばれる小さなおじさんの自宅か座敷わらしの実家か、河童や天狗の巣に招待されたようなもの。

あとは竜宮城といったところか?徳川埋蔵金の在り処など可愛くなるくらいのレベルの珍しさだ。


もしそれがあるのだとしても、人間には絶対に近づくことが出来ない領域だというのが共通の認識であった。

これは人間に限らず魔物にとっても一緒だったようで、チィやミィまで驚きの表情でドモンの方を見ていた。


「わざわざふたりの時にこっそり打ち明けたというのに・・・ハァァァ・・・」

「な、なんだよ。そんなの俺知らねぇもの・・・。でも魔王のところに行く途中のどっかの森にあるんだろ?」

「だーかーら!言うでないというのに!!」

「そんなに珍しいんだ。スマホで写真と動画撮ってこよ~っと」

「くっ・・・」


気まずい空気に冗談で誤魔化したドモンだったが、どうにも誤魔化せそうな雰囲気ではない。

世界七不思議のひとつの解明は、全冒険者と研究者の夢でもあるのだ。


「そ、それって私もついて行って良いのかしら??」とナナ。

「まあこうなってはもう仕方あるまい。本来であればドモン様以外遠慮願いたいところではあるけれど。ただ勇者達には流石にご遠慮願うさね」

「サンとシンシアもいいよな?」

「その代わり他言無用じゃぞ。万が一約束を違えるようなことになれば・・・」

「わかってる、わーかってるってば。なんか面倒だと思ったけど、そういう話なら少し楽しみになってきたよ。早速上の望遠鏡使って、みんなでエルフの森探してみようぜ」

「なんにもわかっておらんではないか!!」


ドモンの言葉に思わず天を仰いだエルフ。

出発前にまた会う約束をして、一行は最後のエレベーターへと向かった。




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