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第485話

「大変です大変ですぅ!」


ナナ達の後を追ったサンだったが、サンの駆け足は歩幅が小さすぎて、歩く速さとあまり変わらない。

子供達とかけっこをすると大抵ビリになる。

そんなサンが廊下を走っている頃、ドモンはナナに問い詰められていた。


「やってくれたわねドモン!またインチキをして私を騙して!」

「バレてしまったか。まあラーメンでも食って機嫌直せよ」


その台詞とは裏腹に、ドモンの背中に抱きついたナナ。

本当はすごいすごい!と叫びたかったが、騙された張本人なので自重したつもり。


「ドモンさん、なんかやっちまったのかい?ほら、みんなの分のスープもあるから、座って待っててくんな」口調がすっかり親方口調になってしまったラーメン屋。

「おお、上手く出来てるようだな。かなり独特なニオイだから、賛否両論あると思うけど・・・」と鍋を覗くドモン。

そこへ「大変です奥様!シンシア様!」と食堂に飛び込んできたサンが叫び、ドモンはニヤリ。


「御主人様は奥様を騙してなんかいません!騙してなんていなかったのです!!」


スタスタとナナに近寄り、タバコケースに入っていたメモを渡したサン。

きっと驚くに違いないとニヤニヤしながら様子を見守っていたドモンだったが、驚いたのはシンシアだけで、ナナはすぐに怒りの表情へと変わっていった。


あまりにも訳が分からなすぎて、怒りと怖さが湧いてきたのだ。

凄すぎるマジックを目の前で見た時の気持ちと少し似ている。


「どういうことか言いなさいドモン!」

「な、怒るなよ・・・きっとインチキだの何だのと言うと思って、それも用意してただけだってば」

「異世界の魔法?それとも悪魔の力?ねえはっきり言って!!何をやったのよ!!」

「え?ええ?!そんなんじゃないってば!」


涙ぐみ、ドモンに詰め寄ったナナ。

ラーメン屋も何があったのかをサンに説明を聞き、頭を捻っていた。


「イテテ腕をつねるな!説明するから説明するから!」

「もう嘘は無しよ?」

「最初に当てた予言の仕組みはわかったんだよな?全部の数字を用意しといて、ナナが言った数字を書いた紙を拾わせただけだっていうのは」

「それはわかったわ。でもこの紙のは何なのよ?『7と言ってしまう』って・・・なんだか怖いの!」


元の世界ならば「すごい!」の一言で片付けて、「これがメンタリズムです」とでも言えば拍手喝采なところなはずだが、ナナにとっては恐怖でしかない。

わざわざ種明かしをしたくもなかったドモンだったが、仕方なくその仕組みを説明し始めた。


「それは予言でも何でも無くて、ナナがそう答えるように俺が誘導したんだ」

「やっぱり変な力を使って!!」

「そうじゃなくて、この勝負をする前に、俺が何度もナナの名前を言ってたの気がついたか?」

「そういえば、随分私の名前言ってるなぁ~って少し思ったよ」

「そうやって無意識の内に、ナナの頭の中に『7』という数字を刷り込んだんだ」

「えぇ?!」「そんなことって・・・」「まさか!」「ありえますの?!そんなことが」


メンタリストがよくやる手法だけれども、元々『思い込ませること』が得意なドモンが本気になれば、あっさりとその手段に皆引っかかり、思考は誘導されてしまう。

ナナが懸念していた悪魔的な力も加わっているが・・・。


「案の定ナナはそれに引っかかったから、わざとその紙を入れておいたタバコを置いていったんだ。それはサンしか見ないだろ?お前らがすぐに追いかけてくるのなんていつものことだし」

「・・・・」ドモンの思惑通りの行動をしてしまったナナはへの字口。

「万が一違う数字だったなら、タバコを自分で持っていけばいいだけの話だからな」


全員ポカンとした顔。

ドモンがやったことはわかるが、それしきの事で思考が誘導される意味が分からなかった。


「その思考誘導といったものは、ワタクシに仕掛けることも可能ですの?」とシンシア。

「場合にもよるだろうけど、出来ると思うからやってみようか?んじゃちょっと待てよ。先にシンシアに言わせる言葉を紙に書いてサンに渡すから。サン、白い紙とペンを用意して。ペンは長くて太いのがいいな。持ちやすいから」

「はい!」


タタタと走り、すぐにサンが戻ってくる。


「じゃあシンシアはナナと目が合わないように、ナナの方をしっかり見ていて。目が合うと余計なこと考えてしまうからな」

「わかりましたわ」

「サン、この白い紙持ってて。ではシンシア、料理に使う食材をひとつ頭に思い浮かべて。野菜でもいいし、他の物でもいい。頭に思いついた色や長さから、パッと思いついた物をひとつ言ってくれ」

「えぇ~と・・・お大根ですわ」


シンシアの言葉に「えー!!」と叫んだサンとラーメン屋。

次に紙を見たナナとシンシアも、同様に叫び声を上げる。

ドモンが書いた紙には、しっかりと『大根』と書いてあった。


「どうして大根が頭に思いついたの?!」と叫ぶナナ。

「わ、わかりませんわ・・・でもそれしか思いつきませんでしたの・・・」


ナナと同じように恐ろしくなってしまったシンシア。

ナナの気持ちがよくわかった。


「まあ今回はわざとらしいくらいに誘導したんだ。わかりやすくするために。『白い』紙、『長くて太い』ペンって。『野菜でもいいし他の物でもいい』と言ったのも、野菜への誘導だよ」

「たったそれだけのことですの・・・?」


「いいや。最後の決め手は、ナナの方を向かせたことだ。目を合わせないようにしっかりとナナを見たら、まず足を見るだろ?デカいおっぱいを凝視するわけにもいかないだろうし」

「ええ、確かにナナの足を見ていましたわ」


真面目に答えたシンシア。

ドモンが何を言いたいのかに気がついたサンは、両手で自分の口を押さえ、ほっぺたをパンパンに膨らませている。


「なんで私の足を見て大根が思い浮かぶのよ。あ」「あ!」


疑問を投げかけたナナも途中でその意味に気がついた。

シンシアも思わず声を上げ、ラーメン屋も笑いを堪えて真っ赤な顔で厨房へ消えた。


「こぉらドモーン!!」

「ワハハ!ごめんごめん!でも人なんてこんなことで思考が誘導されちゃうものなんだ。美味しいラーメン試食させてやるから許してよ。ラーメン屋、あれの準備は?」

「もうすぐ出来るよ」


その言葉に皆がラーメン屋の方へと振り向くと、ラーメン屋が持ち込んだ大きな鍋から、怪しげなニオイの湯気がもくもくと立ち込めていた。





完全に小説のストックゼロ。

温泉の翌日、奢ってくれるって言うから寿司食いに行ってしまった結果がこれ。


明日更新されてなかったら、普通に間に合わなかっただけでございます。

毎話、最低2000字以上書いているんだけど、400字詰め原稿用紙にひとつの隙間もなく5枚分を毎日書くって結構厳しいんだよ・・・


入院中は毎日6~7話書いていたから、真面目にやれば余裕なんだけども(笑)



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