第484話
「よし、準備は出来たぞ。紙に数字を書いてきたから、もうこれから俺がなにかインチキすることは出来ない。真剣勝負だぞナナ」
「わかったわ。1から5までの間だったわね?」
「そうだよナナ。もし5分の1で当たったなら、今回だけは見逃してくれ。もちろん当たっても浮気だけはしないからさ、ナナ」
「・・・いいわよ」
ドモンとナナは真剣な顔。
サンとシンシアは瞳に映るカード当てで「凄いですわサン!」とまだ盛り上がっている。何度も当てて、サンの笑顔はピッカピカ。
「じゃあ私が選んだ数字は『7』よ」
「ハァ??お前なぁ・・・」「え?!」「ちょっとナナ!何を言ってますの?1から5の間と言っていたのに」ナナ以外、驚きの声を上げた。
「わかってるわよ。だから7にしたの。要するに絶対に許さないってことよ。どんな手を使ってでも」
「・・・・」「・・・・」「・・・・」
ナナの決意に言葉を失う三人。
つまり、どんなに汚いと罵られてでも、今回ばかりはドモンにお灸を据えるつもりなのだ。
現にそう言ったナナの瞳には、涙が浮かんでいた。ふざけていたわけではなかった。
「さあどうなのドモン?私の気持ちは伝わった?」
「・・・わかったよ。じゃあサン、俺が書いた紙を確認してくれ。ベッドの枕の下だ」
「は、はい」
「待って!私も行く」
ドモンの指示でサンは隣の部屋に向かったが、ドモンがサンにズルをさせないようにと、ナナもサンの後をついていく。
ドモンはヤレヤレのポーズでその更に後ろを歩き、それを見てシンシアがクスクスと笑っていた。
「あ、ありました・・・って、え??」両手で紙を広げ、中を見て固まるサン。
「なんて書いてあったの?」
「あのあの・・・ええと・・・『ナナは1から5以外の数字を選ぶ』と書いてあります・・・」
「なんですって?!ちょっと見せて!!」「ワタクシにも見せてくださいまし!」
その紙を見て愕然とするナナ達女性陣。
ドモンが得意気にタバコに火をつけ、「なんとか当たって良かったよ」と言っているところに、例のラーメン屋が訪ねてきた。
明後日行われる麺料理の品評会に出すラーメンの、最終的な打ち合わせ。
「サン、厨房でしばらく作業するから上着預かっておいて。暑くなると思うし」
「は、はい!」
上着をサンに預け、半袖姿となったドモンがラーメン屋と共に去っていった。
ナナやシンシアはまだ茫然自失。
まるで心を読まれたかのような予言に、あの例の悪魔の存在まで頭にチラついていた。
「昔からそうだけど、やっぱりドモンは普通じゃないわ」ベッドに腰掛けたナナ。
「それが良い事か悪い事かはわからないけども、そんな方だからこそワタクシもついてきましたの」シンシアもナナの隣へ。
「その能力をもっと別のことに活かして欲しいわよ。まったく・・・。あーあ、またドモンに負けちゃった!」
そう言ってベッドにバンザイしながらバタンと倒れたナナだったが、その顔はなんだか嬉しそう。
誰かに今日あったことの愚痴を言うフリをして、自慢したい気分。
「心を読み取ると言うよりも、ドモン様はナナのことなら何でもお見通しで、わかってますのよきっと。それだけ通じ合っているということですわ。少し妬けますわね」と微笑むシンシア。
「えへへ、やっぱりそうかなぁ?私がお腹空いてる時も、すぐにわかってなんか作ってくれるしね!」
「・・・」「・・・」
それは正直誰にでもわかる。
派手にお腹を鳴らす上に、明らかに不機嫌になるからだ。
だがサンとシンシアは黙っておいた。
「恐らく御主人様は奥様のことを信頼してたのではないでしょうか?そうでなくてはこんな無謀な勝負しな・・・あ、おタバコをお忘れのようですね」
ドモンの上着をハンガーに掛けながら、ポケットの中身を確認したサン。
みんなが脱いだ服に忘れ物がないかを確認するのはサンの役目。
ポケットの中には、ドモンのタバコとライター、そして小さな紙が一枚入っていた。
中を覗いてはいけないと思いつつも、見覚えのある紙の折り方で、サンは思わず中を確認した。
先程みんなで見た、ドモンの予言が書かれた紙とそっくりだったからだ。
「あ・・・!これは・・・」すごく困った顔になったサン。
「どうかしたのサン?忘れ物なら届けたげて」ナナはベッドに寝転んだまま。
「え?それはもしや?サン、何が書かれているの?」シンシアも先程見たものと同じような紙だと気がつく。
「あのその・・・『ナナは1を選ぶ』と書かれています・・・」
「あ!」「え???」
サンの答えに、サンと同じようにすべてを察したシンシア。
ナナにはまださっぱりわからない。
「サン!この部屋を隅々まで探しなさい!」
「は、はい!」
シンシアの命令で部屋の中を探すと、窓のところに『ナナは4を選ぶ』と書いた紙が見つかり、ベッドの下からは『ナナは2を選ぶ』と書かれた紙が出てきた。
そこでナナもようやく全てを察した。やはりドモンはインチキをしていたのだ。
「全部の数字の紙を用意してたんじゃないのよ!!しかも丁寧にそれ以外の数字の場合のも用意して!そこまでしてお酒が飲みたいわけ?!」
怒ってはいるけども、やっぱりなんだか嬉しそうなナナ。
ナナくらいにしかわからないことだけれども、この約一ヶ月、少しだけドモンの様子がおかしいとナナは思っていた。
だけどようやく本当のドモンが帰ってきたような気がして嬉しかった。
「もう!すぐに追いかけてドモンに文句を言わなくちゃだわ!エヘヘ!」
「ナナはそれを理由に、ラーメンが食べたいだけではないですこと?」
「あんただってそうじゃない」
「何のことですの?ウフフ」
部屋を飛び出していったナナとシンシアを、にこやかに見送ったサン。
中身が入っているかどうかを確認しようとタバコの入ったケースを開けると、そこにもう一枚の紙が入っており、こう書かれていた。
『これが本当の予言 ナナはきっと7と言ってしまう。その後、ナナとシンシアが部屋を飛び出し俺を追いかけてくる。どうかな?サン』
サンは驚き腰を抜かし、一度床に女の子座りをしてそのメモを読み直したあと、タバコとライターを持って部屋を飛び出していった。
話のストック切れで、いつか幕間に使おうとしていた話を改変してねじ込んだ次第。
しかも次回に続く・・・。本編進まなくて申し訳ない。
そんな中、明日ケーコが温泉に連れて行ってくれると言うのでまた休む可能性(笑)




