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第480話

「牛肉はこうやって包丁で叩いて粘りが出るまで細切れにしてくれ。芋は皮を剥いてくし切りにして、水にさらしておいて欲しい」

「わかりました」「ええ」


ドモンの指示に従い、調理を始めた料理人達。

屋敷に国王がやってくるという話を聞いて、大慌てで着替えを済ませて準備したが、料理長はたまたま食材の仕入れのため不在だった。


チーズを確認すると、ドモンが予想していた通りの保存食用のラクレットチーズ。

その他にも色々な種類のチーズが保管されており、その中のいくつかをチョイスした。


柔らかめのチーズをひき肉で包み、丸く形を形成していく。

芋は小麦粉をまぶして、熱した油の中へ。

その様子を料理人達は、ぽかんとした表情で見つめていた。


「よし、これがチーズインハンバーグ。こっちはフライドポテトだ。今いる人数分を真似して作って欲しい。ただ、今回はこれで完成じゃないんだ」


ドモンは出来た料理を熱した小さなフライパンの上に乗せ、更にそれを小さな木のまな板の上に乗せた。

ふたりの料理人が料理とチーズを持ち、ドモンのあとをついていく。


「はいはい、まずは国王陛下様からご賞味いただきますよっと。そっちのチーズは暖炉で表面を温めて溶かしておいて」「はい」とドモンと料理人。

「これは・・・ハンバーグ??話に聞いて王宮の料理人達に作らせて食べましたよ。あとこっちはあのコンビニにあったフライドポテトですね」


何を作ってるのかと思いきや、トッポが知っている物が出てきて少しだけがっかり。

ただそれでもこれが美味しいのは、ひと目見てすぐにわかった。


「へへへ、これだけじゃ終わりじゃないんだ。そろそろいい頃合いだから行くぞ!」

「うわぁ!」「すごい!」「なんと!!」「キャッ!」


調理した物がすべて隠れるほど、ドロリと山盛りのチーズを上に掛ける。

熱してあったフライパンにチーズが当たり、ジュウジュウと音を立て、香ばしい匂いを立ち上げてゆく。


「熱い内に食ってくれ。フライパンは熱いから触らないようにな」

「わっ!わっ!中からもチーズが出てきましたよ!!」ナイフを刺したトッポの驚きの声。

「これは『チーズインハンバーグ・オンザチーズ』だ。名前があってるかどうか知らねぇけど」


チーズだらけのハンバーグ。

フライドポテトにまでチーズがかけられ、小さなフライパンの中はチーズでいっぱい。


「うわもう、なんですかこれは!食べますよ?食べちゃいますよ?ハフ」

「ねぇちょっと!王様だからっていつもずるいじゃない!!」テーブルをバンバンと叩きながら、ナナ大暴言。

「あぁ~・・・王様で良かったぁ」


チーズのようにとろけた顔のトッポ。ナナの言葉は耳に入っていなかった。


「みんなの分も作ってもらってるから慌てるなよ。ほらちょうど来たみたいだぞ。今チーズも溶かして準備してるから」

「わ!わ!ねぇドモン早く入れて!たくさんかけてよ!ハァハァ・・・」

「やめろバカ!お前はまた」「お、奥様・・・」「ナナ!はしたないですわよ!」

「いいから早くそのドロドロの濃いやつたっぷりぶっかけなさいよ!」


元々はドモンとふたりだけの時にするナナの悪ふざけなのだけれども、目の前の食べ物に興奮するあまり、うっかり大勢がいるこの場でそれが飛び出してしまったナナ。

大慌てでドモン達が止めるも、もうすでに後の祭り。


「ちょっとナナさん、食欲がなくなるじゃないですか。せっかくの美味しい料理だというのに」と言いつつ、トッポは食べる手を止めない。

「まったく此奴は・・・皆の者すまぬな」代わりに謝罪した義父。だがナナ本人は知らん顔。


「だはぁああ!!すんごいわよこれ!女の子は全員大好きよきっと。でもこんなにチーズ食べたら、まーたおっぱいが大きくなりそうで怖いわ」

「・・・・」「・・・・」「・・・・」


他の者ならいざ知らず、ナナが言うと信憑性がありそうに感じてしまい、サンやシンシアだけではなく侍女達までもざわつき出した。


「御主人様、私のにも少し多めにチーズをかけてください・・・」恥ずかしそうに人差し指同士をチョンチョンとするサンが可愛い。

「サ、サンがそうするのならば、ワタクシのにもお願い致しますわ!決して他意はございませんわよ?」シンシアは赤い顔。


「なんと美味しいものなのだ!この芋も我が街の名産品であるが、このような手法でこのような美味なる物に生まれ変わるとは・・・これが噂にも聞くドモン殿の調理の腕前であるか!これは恐れ入った!」と領主。

「腕前ってほどのことでもないよ。元の世界のファミレスには、よくありそうな物だからな」

「ファミ・・レス?」「ってなんですか?」


領主の言葉に続いたトッポ。

それに対し領主も思わず恐縮。


「ああ、正装をしていないと入れないような高級な店ではないんだけど、冒険者達がちょっと腹を膨らませるような店でもなくて・・・なんて言えば良いのかな?こういった料理が安価で楽しめる、高級店風な庶民用の店だよ」

「ほ、ほう・・・」


全く理解が出来なかった領主。ドモンも上手く説明ができずもどかしい。


「とにかくこんな料理が銅貨6~70枚くらいで味わえるから、俺等みたいな奴らや子供を連れた庶民が、気軽に店での食事を楽しめるようになってんだよ」

「なんですって?!」「これが銅貨60枚ですと???」「えー!!」


その値段を知り、ようやくドモンが言いたいことを理解できた一同。


「どうしてそのような値で客に提供することが出来るのだ?」と義父。

「工場で料理を大量生産して冷凍保存しておくんだよ。それを各店舗に配っておいて、あとは焼くだけの状態にするんだ。調理の手間も省けるし、時間が早く客の回転率も上がるから、薄利多売で商売が成り立つんだ。きちんとしたものが食べたければ高級店でどうぞってところだな」

「うむぅ。それで高級店の方も客が減ることもなく、面目も保たれるのだな」

「そういうことだ」


さらっとそう説明したドモンだったが、この世界にとってはまたもや革新的な話であった。

この時の話をきっかけに、この世界に冷凍食品が誕生し、ドモンが建てるビルにはファミリーレストランが入ることになった。




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