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第469話

結婚式を終えシンシアの両親も帰国し、いつもの日常に戻ったドモン達。

しばらくはコンサルタントの仕事をしながらのんびり出来るとドモンは考えていたが、そうは行かなくなってしまった。

なので、この日から早速ドモンは家探し。


王都になら屋敷を用意してくれると言われたが、自由にタバコも吸えず、なんとも息苦しい思いをした場所には絶対に住みたくはない。

シンシアの国ならば何処にでも自由に屋敷を用意するとも言われたが、サンに少しイタズラしただけで鞭打ちを食らうような法律があるうちは、やはり住みたくない。


飲み屋やスケベな店が近くて、買い物も気軽に行けて、娯楽もあってサウナ付きの銭湯もあるような場所がいい。つまりは現在のこの色街だ。

ドモンが求めるがままに街を作ったのだから、ドモンの理想となるのは当たり前。


「せめてこの近くに住めたらなぁ・・・」

「この辺りは住宅も店も密集してますから、流石に屋敷を構えるのは難しいかと思います」


この日もドモンとサンのふたりでお出かけ。

シンシアは当然無理なのでナナを誘ったのだけれども、ナナはすっかりメイド喫茶の仕事に夢中で、サンに全て丸投げ。


しかももうメイド服など着ておらず、客から貰った服に着替えては、大量のチップを貰うの繰り返し。

客はなんとか自分が買った服を着てもらおうと、大量のチップを手紙に添えて渡す毎日。

最終的には、その場で自分の書いた手紙を声を出して読んでもらえるだけで、飛び跳ねて喜ぶ者も現れる始末。


ちなみにその客達が買う服の殆どが、例の仕立て屋の新しいコスプレ衣装を売る店のもの。

売り上げの一部がドモンにも入るので、ドモンも文句は言えない。


「ナナも店に近いとこにしろって言ってたしなぁ」

「シンシア様もお風呂やエステに通える方がいいとおっしゃられていましたね」

「工事が始まる前にエミィ達の家だけじゃなく、俺らの家も用意してくれと言えば良かったよ。まあその時は、向こうに戻るつもりだったから仕方ないんだけど」

「はい・・・」


この街の領主であるヘレンの夫の貴族の屋敷に向かう途中、どうしたものかとふたりで話し合いをしたが答えは出ない。

今日はデートではないので、サンはメイド服で口調も真面目。


商店街がある通りに出てあちこちの物件を見ながら少し歩いていると、ドモンの目の前を雪玉がひとつ通過した。

ひょいと顔をずらして避けると、今度は足元へ雪玉が着弾。

ドモンがなんだ?と思うのと同時くらいに、サンの「キャッ!!」という叫び声が聞こえた。


「大丈夫か?!」

「え、えぇ・・・お尻になにか当たったみたいです。痛くはありません」


周りを見れば、歩道の前後と脇道に数人ずつ子供が立っていて、ドモン達に向かって一斉に雪玉を投げていたのだ。


「やったなこいつら!サン!反撃だ!」

「はい!」


すぐに道に積もった雪をかき集め、雪玉を作ったドモンとサン。

雪国育ちのドモンは、雪合戦ならお手の物。


「スナイパーと呼ばれた俺の実力を見せてやる。サン、たくさん雪玉を作れ」「はい!」

「やっつけろ!」「死んじゃえ!」


周りの大人達がポカーンとした表情で見守る中、ドモンらと子供達との戦いが突如始まった。

「こんなところで雪を投げるんじゃねぇ!」と怒っている人もいたが、始めたのは子供らの方なのでドモンは知らん顔。サンはニコニコ。


「くらいやがれ!これが俺のスカイラブ投ほ・・・あ、ちょっと待て肩外れた肩外れた!」「きゃ」真上に1メートルほど投げられた雪玉が、サンの頭の上に落ちた。

「よし今だ!!みんなやっちゃえ!!」「おお!!」「大っ嫌い」「死ね!!」「街から出ていけ!」


小さな子供達と行うほのぼのとした雪合戦とは思えないほどの暴言が飛び交う。

よく見れば子供らは皆涙ぐんでいて、それを止めていた親らしき者達は、全員冷たい目でドモンを睨んでいた。


「イチチ・・・ん?なんだか様子がおかしいな」

「はい・・・それよりも御主人様大丈夫ですか??」

「大丈夫じゃないけどとりあえず逃げるぞ!」

「はい!」


右腕をブランブランさせながらその場から離れ、ちょうどやってきた乗合馬車にサンが手を挙げ、ふたりで乗り込んだ。

馬車に乗るなり「んなろーちくしょー!」と叫び声を上げながら右肩を自力でハメて、乗客達を驚かせたドモン。

40歳を過ぎた辺りからよくあったことだったので、自力で対処ができるのだ。ただし痛いものは痛い。


「なんだったんだ、あれは。俺またなんかやっちゃったかな?」

「私にはわかりません・・・」首を横に振るサン。

「ねえ、なんか俺の悪い噂とか知ってる?」とドモンが乗客達に聞いても「いやぁさっぱりわからんね」「あんた誰だい?」と首を傾げられた。


参考がてら物件を見るため、わざわざ馬車に乗らずに歩いていこうとしたのに、結局馬車に乗ってしまったふたり。

訳もわからないまま、乗合馬車は貴族の屋敷の裏側の方にある住宅街に到着。

乗った馬車は残念ながら、貴族の屋敷経由ではなかった。


「こっちの方は来たことがなかったけど、家がびっしりだ」

「屋敷が近いこともあって、治安が良くて人気があるそうです」

「護衛の騎士がウロウロしてるし、わざわざこんなところで悪いことしようなんて思わないだろうしな」

「はい」


屋敷の表門の方まで歩きながら、住宅街を見て回る。

ドモン達がいる商店街の方とは違い、店が少ないので非常に静か。


「よくもまあここまでの住宅密集地帯に、こんな大きな屋敷を建てたもんだ」

「ウフフ御主人様、住宅街に屋敷を建てたのではなく、屋敷の周りに皆さんお家を建てたんですよ?さっきも・・・」

「わ、わかってて言ったんだよ。確認のために」

「わざとじゃなく、珍しく本当に間違ったのですねウフフフ」

「違うってばもう!悪い子にはこうだ!コチョコチョコチョ・・・」

「キャハハニャヒヒヒ!おやめください御主人様!替えの下着ないですからぁ!イヒヒヒ!」


話している最中に、自分でも同じようなことを言ってるなとドモンも気がついたが、サンに見事にツッコまれ大赤面。

誤魔化すためにサンにくすぐり地獄をしながら、屋敷の表門に到着。


「ハァハァハァ・・・でも御主人様がここらに屋敷を建てたいと言うなら、きっとすぐに建てられると思いますよ?」

「え?」


驚いたドモンがサンの方を向いた瞬間、騎士により表門が開かれた。




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