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第468話

「汝、新郎ドモンは、この女シンシアを、健やかなる時も、病める時もなんたらかんたら・・・」

「はい誓います」


昨日もやったおなじみの誓いの言葉。

ドモンはすっかり慣れてしまったが、シンシアの両親は大号泣。


「こんなに泣くものだとは思ってはおらなかったのだが・・・うぅ」「えぇグス」

「お父様、お母様・・・ワタクシ、幸せになりますわ」

「うむ・・・ぐはぁ・・・」


その様子にナナもサンも貰い泣き。

周りも涙ぐむ中、ドモンだけがプルプルと笑いを堪えて震えていた。


ドモンは結婚式や葬式、下手をすれば友人や誰か大切な人が亡くなる時ですら、いわゆる『絶対に笑ってはいけない場面』で何故か笑ってしまうことがある。

そういったことでも悪魔だと言われていたが、今となっては本当にその影響があるのかもしれないと考えた。



指輪の交換。ドモンはいつものようにこの場のみ。

三つもつけていられないし、そもそも金属アレルギーなので無理。

シンシアにはサンと全く同じ物。掘ったイニシャルまで一緒で、シンシアは大喜び。


大喜びはいいのだけれど、深夜に王族からの命令で叩き起こされた道具屋はたまったものではない。

突如数名の騎士と馬車がやってきて、訳も分からず色街の宿舎まで運ばれ、シンシアの指輪の注文をされたのだ。


震える手でシンシアの指のサイズを測ったあと、大慌てで自宅の工房まで運んでもらい、朝までに指輪を作ることとなった。

イニシャル彫りなどは直ぐに出来たが、万が一がないように慎重な研磨作業を朝まで行い、最終的にはサンの物とは同じ材質とは思えないほど光り輝くシルバーのリングが出来た。


ドモンから形式的に銀貨10枚が支払われたが、裏では双方の王家からとんでもない金額が支払われた上に、王家御用達の店となり、ただの道具屋から突然世界的有名な装飾品の店へと変貌を遂げることになった。



指輪の交換をした時にはシンシアもいよいよ実感が湧いたのか、もう涙を堪えきれない様子。

誓いのキスをするためにベールを捲ると、大粒の嬉し涙がポロポロとこぼれ出した。


「グス・・・さ、さあドモン様!ナナやサンが羨むくらい思いっきりしてくださいまし!」


照れ隠しなのか、右手の人差し指で涙を拭いながら、いつものように振る舞うシンシア。

その様子にナナとサンも涙を拭って微笑み返していた。


「許さない!次は私よ!エヘヘ」

「じゃあ最後はサンですグスン」

「ほ、本日の主役はワタクシですのよ?!あなた達はお下がりなさい!さあドモン様・・・」

「あ、ああ」


拍手に包まれながら誓いのキスを済ませ、結婚式は無事終了。

その瞬間ドモンの目が一瞬だけ赤く光り、勇者が剣の柄に手をかけかけたが、結局何事もなく勇者は胸を撫で下ろした。



「ところでドモンさん、これを機に引っ越しとかは考えないのですか?王都に屋敷くらいはすぐに用意しますよ?良ければ王宮の方に住んでいただいても構いませんが。それとも新たな領地に居を構えますか?」とトッポ。

「いやいいよ、今の宿舎で。それに年明けて雪が解けたら、魔王のとこ行ったあとはもう元の街に帰るつもりだったしな」

「え?」「え?!」「え!」「え?!」「えぇ??」


ドモンはすぐにそう答えたが、全員が予想外の反応を見せたのでドモンも困惑。


「元の街って・・・シンシアも一緒に私の家に住もうと思ってたの??」とナナに言われ、ようやくそれがマズいということに気がついた。

ナナやサンも、もうあの家には戻れないという覚悟を持ってシンシアを受け入れていたのだ。ドモンは何も考えていなかった。


「も、もしかして、もうあの家に帰れないのかな??」

「帰れはするけど、今までのように暮らすのは無理よ」ナナはヤレヤレ。

「御主人様、流石にシンシア様のご両親様もご心配なさりますし、それに一国の王女を娶ったともなれば、きちんとした屋敷などを構えませんと・・・護衛の方々も必要ですし」サンがわかり易く説明。


トッポを含む王族達は当然のこと、ナナやサンもそう考えていたし、シンシアの両親に至ってはどちらかの領地、もしくはどちらの領地にも城を建てるつもりでいたくらい。


詐欺にあって実家を失ってからは、アパートや団地、そして女の家などに転がり込んで暮らしてきたドモンにはまるで想像もしていなかったことで、ただただ呆然としていた。


「今住んでる宿舎は、そのままラブホにするんだったっけ・・・」

「ラブホってのがなにか知らないけれど、自分でそう言ってたじゃないのよ。スケベするために泊まれるようにして、街の人に部屋を貸し出すって」小声でドモンに答えたナナ。


色街では最後に残っていた建物の完成の目処が立ち、そこが終わり次第宿舎の改造を進める予定である。

地元の大工達を残して、手伝いに来ていたオーガ達ももうそろそろ戻る。


「い、家かぁ・・・いきなりそんな事になるとは」


王都やドモンが今住んでいるような王都近隣の街などには集合住宅もあるのだけれども、もちろんシンシアをそんなところに住まわせる訳にはいかない。

今までいた宿舎も集合住宅のようなものだったが、護衛代わりにオーガ達がいたからこそ成り立っていたようなもの。

オーガ達のお陰で、色街はこれ以上ないというくらいに治安が良くなったものの、それでも色街の敷地内から自由に出ることも出来なかったくらいのお姫様なのだ。


そして家と言っても、最低でも大きな屋敷、出来るならば侵入者が簡単にドモン達の元へ辿り着けないほどの城が必要。


ドモンのイメージでは、元の世界での皇室から一般家庭へと嫁いで、一般人として暮らすという感覚でいたが、この世界ではそんなことはなかった。

そもそもそういった方が一般人として暮らすと言っても、絶対にアパートや団地なんかではないだろうけれども。


「今から手にしっかりとした職をつけるために、遠くの国で資格でも取ってこようかな・・・弁護士とか」

「???」「???」「???」


腕を組んでブツブツと何かを言ったドモンに、首を傾げるナナとサンとシンシア。

明日からドモンの家探しが始まるが、ドモンの全財産は金貨1枚と銀貨が38枚だけであった。





昨日、酒も飲まずに部屋にこもって書いていたけど、普通に間に合わず断念。

結婚式と話の転換部分で頭を捻ってる内に、丸一日経っていた・・・。

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