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第464話

なぜ結婚を急いていたのかを皆に説明したドモン。


「シンシアの父さんと母さん、あとみんなにも悪いけど、そういう訳なんだ」

「なるほど悪魔が・・・」「なんてことだ」「そんな事が本当に?!」

「全ては俺のエゴ・・・、要するに俺のワガママでもあるんだけど、今のこの繋がりを切りたくないというのが本音だ。ナナやサンと同じくらい、今はシンシアのことは大事なんだ。正直なところ」


病院で何があったのか、勇者パーティーに救われたこと、そしてサンとどうして結婚に至ったのかを順に説明していく。


「これは俺の直感でしかないんだけれど、恐らくその悪魔が俺の孤立させようと画策していると睨んでる。だから・・・」

「その前に、私達との結びつきを強くしようと思ったのね?」

「そういうことだ。勝手な判断でナナには悪いと思うけど」


ドモンの言葉に口を挟んだナナも、ようやくすべてが腑に落ちた。

もちろん嫉妬もするけれど、今ここでサンやシンシアと別れることは、ナナにとってもあり得ないことだからだ。


「だからって奴隷契約書とはなんですの?もう!ご冗談が過ぎますわ!」

「それは本当に冗談だよ。でもお前も嫌いじゃないだろそういうの」

「し、知りませんわ!」


みんながいなければ、シンシアもドモンに飛びつくほど本当は嬉しかった。

立場的にそう出来ないのが悔しい。


「じゃあサンが名前を書きます御主人様」

「だ、駄目よサン!ワタクシのなんだから!ペンを!誰かすぐにペンをお持ちになってくださいまし!」


サンがクスクスと笑う中、大慌てで名前を書いたシンシア。

それを受け取ったドモンがそのままトッポに手渡した。


「そういった理由ならば認めなければなりませんね。そちらもそれで宜しいですか?」向かい側に座ったシンシアの両親に訪ねたトッポ。

「それはもちろんですわ」「これを機に両国にとってなんちゃらかんちゃら・・・」


難しい話をしながら、シンシアの両親もトッポとガッチリと握手。

ドモンは王族ではないが、アンゴルモア王国所属の重要人物であるというのは今回のサミットでも認められている。


ドモンと他国の王族とが結ばれるというならば、ドモンが思うほどもう簡単な話ではないのだ。


「こんなので同盟がどうのって決まっちゃうの?てか、今回の連合国家みたいなやつとはまた別なのか??」政治にはやっぱり疎いドモン。

「それよりも強固な関係になりますね。ただ今回の場合立場上の話だけのことですが、こちらの国の方に権限が偏ってはいますけども」「それは当然の話でありますぞ」「構いませんことよホホホ」


トッポやシンシアの両親の話を聞いてもさっぱり分からず、義父に詳しく説明を受けてもピンとこない。

植民地支配などや、従属国と属国や保護国といった関係でもないけれど、やや発言権がアンゴルモア王国寄りにあるとのこと。


「五分の盃というより、五厘下りの兄弟盃みたいなものかな?」

「???」「???」「???」「???」

「この喩えはまずいか。じゃあ歳違いの兄弟じゃなく、双子の兄弟を一応兄と弟に分けるみたいなもんかな?」

「うむ、まあそのようなものだ。そうすることで意見がぶつからずに済むこともあるということだな」と頷く義父。


ようやくお互いに意味が通じ合ったが、とにかくドモンはそんな事は知ったことじゃないと全員に丸投げ。

そんなところで、全員の前にラーメンが行き渡った。



「さあ今回は味噌ラーメンを食べてもらうぞ」とドモン。

「豚の骨から出汁と呼ばれる物を抽出したものです!独特な香りはしますが、是非ご賞味なさってください!」


早く説明をしたくてウズウズしていたラーメン屋。

ドモンから煮込み時間が足りず、本格的なとんこつラーメンではないと説明されたが、豚の骨と背脂をドモンの持つ圧力鍋で強引に煮て出汁を取ったそのスープは、ラーメン屋にとって奇跡のような味であった。


そこに味噌やら唐辛子やらにんにくや生姜、ゴマ油や他の調味料などを加えていったものを味見した瞬間、ラーメン屋は文字通り腰を抜かし立てなくなった。


鶏塩ラーメンも毎日研究を繰り返し、改良を加え、以前よりも随分と美味しくなったと自負できるくらいになり、今では何人かの従業員を雇わなければならないくらいの繁盛店にもなった。

これひとつで、もうやっていける・・・そういった自信もあった。


それをドモンが三時間半ほどで、あっさりと越えてしまったのだ。


「色々料理はあるけど、特にラーメンに限っては可能性は無限だよ。ネギを油で焼いてからその油を最後に入れたりしても変わってくるし、スープを作る時の玉ねぎの量を変えてみても味が変わる。もちろん煮込み時間によっても変わるし、具によっても変わるんだ」


ドモンにそう言われてゾッとしたと共に、心の奥底からマグマのように湧き上がる自分のやる気が止められない。

早くドモンが作ったこのラーメンを食べる皆の顔が見たい。

そのラーメンを超えるラーメンを、自分のこの手で作りたい!


その気持ちがラーメン屋の気を逸らせていた。


「んうう・・・んはーっ!すーはぁ~・・・スンスンスン・・・ハァ・・・」ナナの鼻の穴は全開。

「奥様ヨダレヨダレ」「もうナナったら!皆様ナナの方を見ないでくださいまし」サンとシンシアもナナの両隣へ着席。


目の前にはネギしか具が乗っていない豚骨味噌ラーメン。

代わりにと言ってはなんだけれど、ザルで濾した大量の背脂がどっさりと乗っかっていた。


「いやナナに注目してていいよ。知らない人もいるだろうし、これからナナが食べ方を教えるから」

「い、いいの?!じゃじゃじゃあ教えるわね!」


ドモンにそう言われて、自分専用の箸を取り出したナナ。

左腕でヨダレをひと拭き。


「いーい?あんた達。まず常識を一度捨てなさい。器を手に持つのは行儀が悪いとか、音を立てるのはマナー違反だとか、そんなものはどうでもいいのよ!大切なのはただひとつ!!」

「な、なんですか?」ナナの迫力ある説明に、思わずトッポも声が出た。


「熱い内に口に放り込んで、美味しく食べること!!それがこの食事とそれを作ってくれた人への敬意ってものよ!!音が出ようがなにしようが、とにかく早く口にぶち込むのよ!!」

「ダッハッハ!最高だぜナナ!その通りだ!!」


ドモンの笑い声が聞こえたと同時に、ナナが一番にラーメンを食べ始めた。

天国への第一歩である。





第一回目の夏休み、堪能させてもらいました。

その間、話のストックを増やしたわけでもなく、普通に飲み歩いてケーコに温泉に連れて行ってもらってゴロゴロ。

いよいよ真面目にやれ!という声も飛んできそうな気配があるけれど、遊び人なんてこんなもんだ(笑)


ビヤガーデンが始まったらまた休み休みになるかも?

北海道は夏が短いので、そのくらいは勘弁して。




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