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第458話

数百から数千の絶頂の末、生還したミレイ。

もしこれが男、もしくは体力や耐性のない女性だった場合、死に至っていた可能性もある。

以前までのミレイならば耐えきれなかったが、あの時例のキノコ入りの水を飲んで一度経験をしていたおかげで、戻ってくることが出来た。


最後に残ったのは、尋常ではない量の幸福感。脳内麻薬が全身を駆け巡る。


「ああ~ドモン様ぁ~、もう一回メチャメチャにしてぇ~ウヒヒヒ」ヨダレを垂らしドモンの姿を探すミレイ。

「ミレイしっかりして!ほら服を着て!」とソフィアが下着と服を渡した。

「んふぅ~」「キャッ!」


ソフィアを抱き寄せたミレイがソフィアの服を脱がしはじめ、大慌てでアーサーがふたりを引き離す。

怪我を治したのはドモンであるのは間違いなかったが、やはりそこは悪魔に関する力が働いているのか、どうしても何かしらの悪い影響を体に残してしまっていた。


悪魔は苦しみだけではなく、快楽でも人間の自我が崩壊することを知っている。

むしろそれが人間にとって一番の恐怖。抜け出すのが困難だからだ。


ミレイがそばにいた大魔法使いをベッドに引きずり込んで何かをしている間に、アーサーとソフィアがのびているドモンを隣の病室へとこっそり戻した。

こうしなければきっと収まりはつかない。


こうして大魔法使いは、この歳にして何かを経験し、普通の魔法使いとなった。

しばらく魔法使いの一人称が『俺』になった以外は支障はない。その記憶がないミレイも、そっとしておく事にした。



「いよいよ本当の敵が見えてきたわね、アーサー」

「ああ。何の目的があるのか、それによりどんな支障があるのかもわからないけれど、ミレイを攻撃した時点で敵であると認識していいと思う」


ドモンを病室に送り届けた後の廊下で語り合うソフィアとアーサー。

魔王を敵として表に出し、裏でこの悪魔が何かをしているのだろうと推測した。

そして自分を含む各国の勇者達は、その魔王の強さを引き立たせるための駒のようなものにも思えた。



この翌々日、まだ完治とまでは言えないがミレイが退院。

傷跡はまだ残るが、痛みはもうない。布などが傷口に触れると声が漏れるほどの快感が体に走るが、あの時よりはずっとマシ。

あと数日もすれば元に戻るだろう。完治するまで王宮でこっそりと、ひとりで楽しむつもりなのは秘密である。


ドモンが退院したのは更にその翌日。

本来であれば数ヶ月は病院で様子見するところだけれども、ドモン本人たっての希望で、無理やり退院することになった。


この日トッポ達も戻ってくる予定なのだけれども、ドモンが倒れたことを知って王族達がこぞって見舞いに来ようとしていたため、大慌てで退院を決めたのだ。

そんな事をされれば、病院が大混乱になることは間違いない。


あまりに急に退院が決まったため、ナナは都合がつかず、サンだけがドモンを迎えに来た。

馬車を借りることも出来ず、病院までは乗合馬車と徒歩。なのでシンシアも留守番。


「退院おめでとうございます御主人様!」余程嬉しいのか、猫耳リボンを頭につけて病室に飛び込んできたサン。

「うん、ありがとう。あれ?サンだけ?」

「奥様はメイド喫茶の方でご指名の予約がたくさん入っていまして、すでに店の方に向かったあとだったのです。迎えに行くだけならと私に頼まれまして。シンシア様は馬車が借りられませんでしたので・・・」

「ああ、それなら仕方ないな。まあ荷物もさほどないし、ふたりで王都をゆっくり散歩しながら帰ろうか」

「は、は、はい!!」


もう二度と来たくなくなるような入院費を支払い、ふたりは病院の外へ。

王都でも早く健康保険を導入して欲しいところ。


真っ赤な顔をしながらドモンの袖をつまみ、サンがついて歩く。

夢にまで見た王都でドモンとふたりきりのデート。

周囲の人々は、おじさんが小さなメイドの子を連れ回している様子に、少し怪訝な顔。


「サン、寒いからもう少しくっついてよ」と左肘を出したドモン。

「だ、だめです!奥様に怒られてしまいますぅ!」

「本当に寒くなると胸が苦しくなっちゃうんだよ。喘息の発作も起きやすくなるし」

「・・・は、はい・・・」


恐る恐るサンは腕を絡めたが、心の中ではスキップで42.195kmを一時間で走破出来そうなくらい飛び跳ねていた。

しかしメイドが腕を絡めていると周囲の視線はますます集まり、流石のドモンも少し気になった。


「サン、この先の店で服を買おうか。例の仕立て屋ならきっと安く譲ってくれると思うから。新しい店についての話もついでにするし」

「え?!は、はい!!え??あの・・・宜しいのでしょうか私なんかが・・・」

「宜しいとかどうとかよりもほら、なんかみんな見てるから・・・」サンの耳元で小声で語りかけたドモン。

「ハァン」サンは普通に返事をしたつもり。おかげでまた視線を集めてしまった。


思っていたよりも少し歩いて、例の店へと到着。

以前と違い、今度は護衛もすぐにドモンに気がついた。

護衛が頭を下げるなり店に飛び込むと、入れ替わるように例の仕立て屋の親方が店から飛び出してきた。


「ようこそいらっしゃいました!さあどうぞどうぞ中の方へ!」

「しばらくぶりになっちゃったな。例の店の話と・・・サンの服が欲しいんだ。安いのでもいいと言うか、あまりお金が無いから安いのがいいと言うか・・・とにかくこの服でふたりで歩くと目立っちゃってね」


「さようでございましたか。服はもちろんお好きなものをどうぞ。代金なんていただけませんよ」

「流石にそれは悪いよ・・・」


「いえ!サン様に着ていただけるだけで店の宣伝になるのでございますよ!本当にご遠慮なさらずに。おーい誰か、サン様のご試着を・・・」「サンでいいです・・・」

「じゃあ本当にお言葉に甘えちゃっていいかな?実は病院代で随分かかっちゃって」


会うなり話は尽きない。

サンは数名の店員に連れられ試着へ、ドモンは奥の豪華な部屋へ。


ドモンの方からノーブランドの新しい店の話をする前に、仕立て屋の方から「もうすでに問い合わせが殺到しておりますよ!それにこの店も見ての通り」と語りだした。


製品にブランド名を入れる戦略は大成功で、今も店内は以前の三倍くらいの客で賑わっている。

メイド喫茶での服をこの店が手掛けていると知った客も大勢やってきている様子。


「あらら、そりゃ本当に早いとこ店を開店しなくちゃならないな」

「えぇ。まあ、ほぼ準備は出来てますが」

「じゃあとりあえず一店舗だけ開店して、なにか改善点があるかどうかを確かめてみたらどうだろう?こればかりは客の反応を見ないと改善点はわからないし」

「ふむふむ!確かに前例がないことなので、そうした方が良さそうですね。なるほど!」


流石のドモンも、この世界の人々の好みと合致するかどうかや、価格設定が適切かどうかもわからないため、やってみなくちゃわからないことだらけである。

コスプレ専門店とロゴなしアウトレット商品専門店、そしてその両方を売る店の三店舗が用意されていたが、両方を売る店だけを先にオープンすることに決まった。


そんな話を終えた頃、「ドモン様、サン様がお呼びでございます」と店員のひとりがやってきた。

ドモンが売り場に近づくと、カーテンがシャッと開く音と、大勢の歓声が耳に入った。


「素敵!」「可愛い・・・」「ねえママ、あれってお人形さんなの??」「こちらもお似合いでございますね!」

「あのあの・・・」

「次はどういたしましょう?こちらのドレスなんかもきっとお似合いでしょうけれど、普段着としてならばやはりこちらで」「いいえ!サン様は絶対にこちらがお似合いです!次はこちらで!」「こっちよ!」

「あのそのあの・・・あ、御主人様!」


大勢の人の輪の中で、着せ替え人形状態になっているサンを発見。

ショートパンツで少しボーイッシュな服装は、何処かのクイズ番組で見た探検家の人形のよう。

でもサンがそれを着ていると、可愛いどころの話ではない。


「御主人様、一体サンはどうすれば・・・」

「サンが気に入ったのにすればいいよ」

「わかんないですぅ!御主人様が選んでください!」ブンブンと首を横に振る姿も可愛く、また歓声が上がった。

「うーん、じゃあすぐに脱がしやすそうなこれで」


どよめく店内。

ドモンが選んだのは、サンが最後まで試着を拒んでいた前開きの水色のミニスカワンピース。

というより、少し大きめのワイシャツのようなものであった。

「あの、本当に・・?」

「駄目かな?」

「い、いえ・・・ではこれにします・・・」


サンはついにこの日がきたかと、謎の覚悟を決めていた。




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