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第455話

夢の中、赤い目をしたドモンとそっくりな者が、ドモンの目の前に立つ。


「ハッハッハ!随分と弱っているようだな」

「・・・誰だお前は」

「毎度毎度同じ質問しやがって。まあ毎回記憶を消してるんだから当然か」

「どういう事だ・・・」


夢の中で受けたダメージは、夢の中ではまだ回復していない。

体中に激しい痛みを残したまま、ドモンは『それ』と対峙していた。


「ようやく役に立ったな。作ってやってから50年も経っちまったけど」

「???」

「ま、お前はもう用済みだ。何もかも奪っといてやるから、苦しんで死んで俺の餌になれ」

「だから何の話なんだよ!」

「知る必要はない。今日から俺がお前として生きといてやるよ。巨乳にロリっ子とお姫様、俺とお前の合作は、俺がそっくりそのままいただくぜハッハッハ!」


赤い目をしたドモンがそう言うと、傷だらけのドモンに馬乗りになり、その首を絞めるように鋭い爪を立て始めた。

これまで感じた事もないような激しい痛みがドモンを襲ったその瞬間、病室に飛び込んできたのは勇者アーサーとそのパーティー。


「ドモンさん!今助けるぞ!ミレイ!!」とアーサーがミレイに目で合図。

「何をやってるんだドモン様!自分の首を絞めるなんて!!」大慌てでドモンを羽交い締めにするミレイだったが、抵抗するドモンに体を切り刻まれ、あちこちから血が流れ出した。

「アーサーの言う通りね、これは!悪魔の仕業のようです!」と大賢者のソフィアが何かの呪文を唱え始めた。

「絶対に逃さぬぞ!」大魔法使いも両手を前に出し、魔法でドモンを縛り付ける。


勇者パーティー全員に取り押さえられた赤い目をしたドモン。

流石にこの人数相手では分が悪いと思ったのか、いきなり優しい表情のドモンへと戻った。


「悪かったなミレイ。愛しているから放してくれるかい?このままじゃミレイを抱きしめ返すことも出来ないよ」

「ドモン様・・・」ドモンの言葉に力を緩めたミレイ。

「ミレイ!そいつは偽物だ!」「本物のドモンさんはそんなこと言わないわ!」アーサーとソフィアの言葉に、ミレイはハッとした顔をして力を入れ直す。


「チッ・・・」ドモンはまた赤い目に戻った。

「全ての闇を照らす光を纏えエクスカリバーよ!そして我を導き給え!」聖剣を抜いた勇者アーサー。

「待て!」「(待ってくれ・・・)」アーサーだけに聞こえる二重になったドモンの声。


「俺が死ねばこいつも死ぬぞ」「(こいつが死ねば俺も死ぬ・・・)」

「く・・・」


言葉は違えど同じ意味。

悪魔を退治すれば、恐らくドモンの命もそれまで。


ニヤニヤとした顔でアーサーをにらみつける赤い目のドモン。

アーサーは剣を構えたまま、歯ぎしりを立てた。その瞬間である。


病室のドアが開き、ナナが飛び込んできたと思ったら、ドモンに向かっていきなり平手打ち。


「イッ!?!」

「いーかげんにしなさいよこの悪魔!!危うく騙されるところだったわ!!」ナナ大激怒。

「奥様ダメですダメです!」「ナナ!ドモン様が病気で倒れたのは本当の事ですのよ!」後から入ってきたサンとシンシア。


「どうもおかしいと思ったのよ!私がおかわりしないで寝るなんて!」

「???」「???」「???」


ナナの言葉にサンとシンシア以外の全員がキョトンとした顔。


「あんたが悪魔ね!よくも私がドモンに騙されているのを勝手に解いてくれたわね!」

「へ?」「も~奥様!!」驚くドモンと焦るサン。


「いい?よく聞きなさい。女はね、好きな男に騙されてあげるのも愛なのよ!わかってんのよそんな事は最初から。ドモンがスケベおじさんで、私達を騙してスケベなことしようとしてたことなんて」

「!!!」「(!!!)」驚く赤い目をしたドモンとドモン。


「あんたが何者か知らないけど、あんたがいようがいまいがドモンはドモン!私にとっては何も変わらないわ!」もう一度引っ叩いたナナ。

「イテェ!」「(イテェ!)」

「たとえドモンが馬のフンに変身させられたって、私は口づけしてみせるわ」

「サンもです」「当然ですわ」


ナナの意見に頷くサンとシンシア。

ナナは涙を浮かべてドモンを抱きしめ、口づけをした。


ドモンの目の色が元に戻る。それと同時にドモンは意識を失った。ドモンはまた夢の中。



「おい、なんなんだよあいつは・・・」

「ナナ。俺の嫁だよ。いい女だろ」

「あんな風に作った覚えはねぇのに」

「不条理なことがあるから世の中は面白い。思い通りにならないことがあるから楽しいんだ」


そう答えたドモン。

それをフンと鼻で笑った、赤い目をしたドモン。


「ま、しばらくはまた大人しくしといてやるよ。あいつに免じてな。だが覚えておけ。いつかお前には手痛いしっぺ返しを食らわせてやる。バカ息子が」

「お前の息子になった記憶なんかねぇよ」

「そりゃそうだろ。子育て面倒だから逃げたしな。さあ今回も記憶を消しとくぞ」

「・・・ん?ちょっと待て!おい!!」



目が覚めると、ドモンはすべてを忘れていた。

勇者達とのやり取りも、ナナ達とのやり取りも、そして赤い目をしたドモンとのやり取りも。


「もう何十回目だろう?『知らない天井』を見るのは」

「何よそれ」

「九死に一生を得た時に、大抵知らない天井を見ながら目覚めるもんなんだ。普通はこんな巨乳の女の子は隣に寝てないけどな」

「よくわかんない」


そう言ってナナはドモンに抱きついた。




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