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第453話

雪降る中で煌々と光るオレンジの看板。見覚えのある鳥のようなマーク。

いくつもある大きな窓から見える明るい店内は、まさしくドモンが求めていたそれ。


中を覗くと『料理長の温かい料理』と書かれた小さな看板と、塩唐揚げやとんかつなど、ドモンが教えたいくつかの料理が並んでいた。店内調理で、いつも出来たてなのが自慢。

料理を食べるイートインスペースもしっかり作られており、北海道民御用達のコンビニそっくりである。流石に売っている物はまるで違うけれども。


その販売している物のほとんどは、街にある各店から大量買いによって安く仕入れた物である。

自社工場などはまだないため今はこうするしかないのだけれども、商品の値札に店の名前も入っているため、店の宣伝にもなると皆喜んで協力してくれたらしい。


新規開店まであと数十分と迫り、店員達が「押さないでください!こちらにお並びください!」と客を誘導していて忙しそう。

そしてその店の前に並ぶ客達の視線を集めているのが、どうやらガラス戸で出来た冷蔵庫のようであった。


もちろんドモンはそんな事になるとは思わず、何の気なしに以前来た時に皆に説明をしただけ。

「商品が戸の外からもよく分かるように、冷蔵庫の扉が大きなガラスになってるんだ」と。

その言葉に、その場にいた者達が驚いていた。


冷蔵庫の中が外から見られるなんてことは、まったく想像もしていなかった様子。

言われてみれば、家ではそんな冷蔵庫は使わない。

スーパーやコンビニがない状況であれば、もしかするとドモンも驚いていたかもしれない。


「やあドモンさん!来てくださったんだね!」

「ようオーナー、随分頑張ったみたいだな?凄いよ」

「寒いでしょう、とにかく中へどうぞ。お客様、あともう少しだけお待ち下さい!大変申し訳ございません!」


並ぶ客達にペコペコと頭を下げながら、ドモンを誘導するオーナー。

ペコペコと頭を下げてはいるものの、その顔は自信に満ち溢れ、満面の笑みを浮かべている。


「どうでしょう?」

「どうでしょうも何も・・・完璧だよ。もちろん置いてる商品が違うのは仕方ないけれど、きっとこれなら繁盛するはずだ」

「そうでしょうそうでしょう!ハッハッハ!」


ほぼドモンが説明していたとおりに仕上げられた店。

ドモンも懐かしくて、つい店の奥にあるトイレで小便をした。


天井を見上げればオレンジ色の照明。

プルプルと何かを振ってから下着の中にしまい、鍵を開けドアを開けると、そこには小さな手洗い場。

もしかしたら元の世界に戻ったのか?と、勘違いをしてしまいそうな再現度である。


缶ジュースやペットボトルの飲み物はないけれど、瓶のジュースや酒があった。

今回のサミットの開催により、珍しい他国の果実も輸入されることとなるため、その内商品の種類も増えるだろう。


なんと今はもうシンシアの国からエビが輸入され流通しはじめていて、すでに店頭に並んでいた。

ただ調理方法がまだあまり知られていないので、ドモンがエビマヨやエビフライ、海老の天ぷらなどの作り方を教え、この店で売ることから、エビ自体を世間に広めていこうということになった。


会計をするカウンターの後ろには、たくさんの種類のタバコが置かれている。

これもドモンの要望で、自国の物だけではなく各国から仕入れたものが並んでいた。

「後ろの壁に飾る必要があるのですか?」とオーナーに問われたが、そういうものだとドモンが強引にそうさせた。

こうした方が雰囲気が出るし、ドモンも久々に「27番ください」みたいなことを言いたくなっていたのだ。


最後にドモンは『料理長の温かい料理』の唐揚げとフライドポテトをひとつまみ。


「よっしゃ完璧だ。開店しようぜ」

「では今日は20名ずつの入れ替え制ということで宜しいですかな?」

「まあこれだけ客がいたらそうした方が良さそうだな。家族連れとかは多少融通利かせろよ?20人が21人になったってわかりゃしねぇだろうし」

「それはもちろん」


店員達がその説明を並ぶ客にしてからドアを開けると、客達がワッとなだれ込むように入店。

すごいすごい!と店内中を駆け回る様子は、なんだかコンビニのゲームの客を見ているようだとドモンは思っていた。


「ハァハァ・・・この飲み物とこのお菓子とこの道具をください。あとこの唐揚げというのも」

「はいありがとうございます。カゴに入れた商品は説明しなくても大丈夫ですよ」

「フゥフゥ・・・そうなんですね。なにせ初めてなもので・・・」


基本的に普段から「〇〇と〇〇をくださいな」「はいよ」といったやり取りで買い物していたので、かごに入れた物をまとめて会計するといった方式にまだ慣れていない様子。

ついかごに入れた物を全て説明してしまう客達に、店員達が優しく説明していく。


「に、に、20番ってやつ・・・貰えるか?」

「はいありがとうございます。こちらは銅貨22枚になります。店内でお吸いになられる場合、食事場所の奥に喫煙室をご用意しておりますので、そちらをご利用ください。なお本日は混雑しておりますので・・・」

「ああ、それはわかってるよ。流石に今日は長居はしないさ。ありがとな」

「いえいえ。これからも宜しくお願い致します」


異国の珍しいタバコを手に入れ、ほくほく顔の男性。

買ったパンと飲み物を一緒に持ち早速喫煙所に向かうと、椅子に座り、満足気な表情でタバコの煙を燻らせている人物と鉢合わせた。




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