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第451話

「ハァ・・・最高だ。もう何も考える気がせん」

「お城では考えられませんわね。お風呂なんて、体を洗うためのものとしか考えておりませんでしたわ」

「あれならば毎日どころか、この食事を終えた後、もう一度楽しみたいくらいじゃな」

「僕は本当に行くつもりですよ?」


大広間に到着し、順番に席に着いていく。

本来ならば席位置がどうとか、入室する順番がどうとかの面倒な決め事があるけれど、この日この時ばかりはそんな事お構いなし。

気がつけば女ボスが無理やり上座に座らされ、この会議の議長のよう。


「はぁ?ふざけるんじゃないわよ!まったくどいつもこいつも!」と本人は怒ってはいたが、気も利いて面倒見も良く、器量も気風もいいので、全員がそれに文句はなし。

混浴での騒動があった後、女風呂へと入った時の女ボスの行動で、女性達の心もすっかり鷲掴み。


「あなた左脚の膝悪くしてるわよね?そこ段差あるから気をつけて。それとみんな長湯しすぎてのぼせてるわ。あんた達、この人らに水持っといで!はしゃぎ過ぎなのよ、みんな。仕方ない人達ね」


いつも通りの女ボス。

だがそこに、ドモンと同じような頼もしさを感じていた。


気がつけばサウナの中で女ボス相手に悩み相談が始まり、女ボスはそれもいつものように親身になって話を聞きながら、自分の考えを持って励ます。

チィやミィもまるでドモンのようだと感心した。


その結果、今後のサミットでは本当にこの女ボスが議長として長く君臨することになったのだ。

公平に、そして常に庶民目線で、厳しくも優しく。

世界に与えたその影響力は、ドモンと遜色がないほどである。



そんな皆の元へ、食事が届けられた。

すでにエールを飲み良い気分だったお偉い様達も、思わずその料理に見入る。


「新鮮エビフライと、特上牛肉とリンゴジャムのミルフィーユカツでございます。エビフライは特製タルタルソースを、カツの方はとんかつソースの方でお召し上がりください」とコック長。


「なんと食欲をそそる見た目なのじゃ!」

「これはこの国の牛肉とそなたの国のリンゴであるな?」

「このエビは我が領土にて獲れたものだ。婿殿も唸るほどの食材ですぞ」

「まあ美味しそう!」「見てよこれ!おソースが絵画のように!」


食べる前からすでに大騒ぎ。

逆に食べている最中は皆言葉をなくし、徐々に静かになっていった。


「こんなお肉が・・・もう何もかもが・・・信じられませんわ・・・」

「これは卵を使ったソースなのか・・・」

「我が国のエビですよ皆さん。明日からの会議でも恐らく話に出るかとは思うが」

「この肉の調理法も非凡だが、やはりこのソースが・・・我が国で同じ物を生産できるとは思えぬ故、やはり輸入に頼るべきであろう」


料理を味わい、くつろぎ楽しみながらも、結局は真面目に国のことを考えてしまうお偉い様方。

女ボスの従業員達が、ドモンとの約束通りスケベな格好をしてお酌をして回るも、もう目にも入っていない様子。


そんな様子を見た料理人達は鼻高々。

この世界最高峰の料理を作り上げた満足感に酔いしれていた。


「うーん美味しいですねぇ。素晴らしい。素晴らしいです・・・けど」とトッポ。

「恐れ入ります!・・・って、何か気になる点がございましたでしょうか?」


陛下のお褒めの言葉に胸を張ったコック長だったが、ニコニコとしながらも何か妙な感じの言葉に思わず固まった。

その場にいた他の料理人達も思わず足を止める。


「ああ、いえ。ええと、ドモンさんからお手紙を貰ったんですよ。凄い食べ物が出来たって。読んでみます?ほら」

「え・・?」


ラーメンに関する手紙をトッポに見せてもらった料理人達は言葉を失った。

ドモンはもうとっくに先へと進んでいたのだ。


高くした鼻をいきなりドモンに折られた料理人達。

これは負けられないと心に火がつき、気合を入れ直した。


その結果、料理人達のサミットも正式に毎年行われることが決定し、この冬を境に、爆発的に料理の種類を増やすこととなる。

翌年、ドモンが魔王の元へと旅立つ頃には、ドモンも驚くほどの食生活の変化がこの世界に起きていた。



翌日からは本格的な会議。

もちろん風呂も楽しみながらではあったが、お互いの国にとって、とても有意義な話をした。


サミット参加国の通貨も共通のものとなり、国家間の移動も自由となった。

それはまさに革命と言えるもの。産業革命に技術革命、それに食の革命も。


中でも、新型馬車と同じくらい世界を驚かせた革命が『ドライヤー』の存在である。


サミット参加国以外の遠方の国からも買い付けにやってくるほど、ドライヤーは世界中の女性が熱望していたものだったのだ。

その結果道具屋のギドは、人生を百回繰り返しても使い切れないほどの金を手に入れることとなった。

が、結局その金も新製品の開発にほとんど回されることに。お金を使っている暇が無いのが一番の理由。



こうして世界を変えるほどの会議を終え、カールの爵位が伯爵へと格上げされた頃、ドモンのいる王都近隣の街では、この世界初の24時間営業の店が開業へ。

それと共にこの世界でのドモンの役目は、ゆっくりと終わりを告げようとしていた。




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