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第449話

「なんとも心が落ち着きますなぁ」

「うむ。この後蒸気の方のサウナへと向かうつもりだが、ご一緒にいかがですかな?」

「そうですな。それと向こうの寝風呂も気になるところだ。随分と気持ちよさげでハッハッハ」


体を洗った後、それぞれが気になる風呂へと散っていった。

寝風呂ではトッポがだらしのない顔をしながら、目を瞑り堪能している。

体もまだ温まっていないというのに露天風呂へと一直線に向かった義父は、外の寒さに震えながら慌てて風呂に飛び込んでいた。


「これはドモン殿のあの銭湯とかいうものにあったサウナよりも、かなり高温ではないか?」

「フゥフゥ・・・」

「どうやら返事もままならぬようだなフハハ」


「それも仕方ありますまい。私はこれが初めてのサウナですが、これはなんとも・・・」

「無理は禁物だ。だが限界からあと三分踏ん張ってから飛び込む水風呂が格別じゃぞ?」


サウナではまた我慢比べが始まった。

どうにもこうにも、張り合うことに生きがいを感じてしまうお偉い様方。

スチームサウナの方でも似たような状態になりながら、以前ドモンがどうやって我慢比べに勝ったのか?の話をし、笑い合っている。


そんな中、時折女湯の方から響く女性達の嬌声。

壁はあるが、天井の方は繋がっているので声は男湯まで届く。

大風呂でゆっくり浸かっていたシンシアの父親も「まったく若い者と一緒にはしゃぎおってフフフ」と妻の声を聞きながら呆れていた。


「オーガと言っても体型はあまり変わらないのね。筋肉質ではあるけれど」と何処かの国の奥さん。

「男だけなのよ。女は肌の色も男ほど濃くはないし」とチィ。

「チィちゃんは少し肌が赤みがかっていて、ミィちゃんは少し青みがかっているのかしら??日焼けしたワタクシの方が赤いくらいだわ」

「ミィでいいです。私は顔色が悪く思われてしまうのが悩みです。はい」青みがかったせいで、ミィはサンよりも色白に見える。


男達と違って、ほぼ全員で移動しながら同じお風呂に入る女性陣。

侍女達は流石に遠慮していたが、「気にしないで。ドモン様が言うには、裸のお付き合いと言うそうよ?ね?」と諭され、一緒に入る者もいた。


「ちょっとお胸触らせて?」「いやですわ奥様ったらホホホ」

「奥様、毛の処理はなさらないの?」「まさかワタクシだけだなんて思いも寄りませんでしたわ。考えなくてはなりませんね」

「ねぇオーガもアレは一緒なの?ミィ見せてもらえる?」「え?え?ダメですぅ!!」「お願いよ!ね?いいでしょう?脚を開いてほら」「ああ・・・」

「よくもやってくれたわね!仕返しよ!!」「おほほアハハ!チィ許してアハハ!!漏らしてしまいますわ!!ああほらアハハハハ!!」「ヤダ奥様!オホホホ!!」


聞こえてくる声に顔を赤くする男達と、寝風呂からもう出られる気がしない何かが元気なトッポ。

なのに女性達の暴走はまだ止まらない。


同じような立場の女性同士が大勢集まるのも珍しければ、そもそもこの風呂自体が珍しい。

その上、確実に関係者しかいない状況ともなれば、ついはしゃいでしまうのも仕方ない。


「ねぇ皆さんも見せっこいたしましょうよ!手やタオルで隠すのは無しで」

「ワタクシはよろしくてよ」「もう奥様ったらホホホホ!」

「じゃあミィ、まずはあなたからそこの縁に座ってね。脚を開いて手は後ろにするのよ?」

「ど、どうしてまた私が!もうお許しください!うぅ~」

「ん~ではまずはあなたからよ」

「わわわ私でございますか?!ああ奥様お許しを・・・」


ひとりの侍女の悲痛な声が聞こえ「何をしておるのだ!やめなさい!」と思わず叫んだのは、暴走気味の妻の夫。

すぐに「オホホホ!あなたも見たいのでございますか?でもいけませんわ!ホホホホホ!!」と声が返ってきた。

王と王妃の会話とはとても思えない。


結局キャアキャアと何かの大会が女湯で行われ、男も女も全員ムズムズ。

皆が皆、もういい加減混浴で合流してしまおうかと考えていた矢先、カラカラと浴場の戸が開いた。


「失礼いたします!あのバ・・・じゃなくて、ドモン様の依頼により、垢すりに参りました!」

「え?!ボスさん???」


突然の女ボスの登場に、驚きの声を上げたトッポ。

女ボスを含む女性従業員達は、裸にタオルを一枚巻いた格好。

もちろんドモンの手紙の説明不足のせいである。


「女性客の皆様!そちらの方にも私共の男性従業員が参ります!お体を見られたくない方は、一度退室願います!すぐに垢すり場の方まで移動させますので!」と、女ボスは大きな声で女風呂の方に向かって説明をした。

「えぇ?!」「きゃあ!」「本当ですの??」「恥ずかしいわ!!」


「元々私達の用心棒と言いますか護衛ですので、裸も見慣れております!体は大きいですが、優しい性格の者達だけを雇ったつもりです!決して皆様に危害を加えることはないと約束いたします!」

「そうなのですか?」「ドモン様のご紹介なのですね?!」「信頼できるのですかそれは!」


「大丈夫です!ドモン様の公認です!証拠のお手紙もございますから、お持ちいたしましょうか?!」

「い、いえ!それならば構いませんわ、ワタクシは」「ワ、ワタクシも・・・」「ねえトッポ!いいのー?!」


女ボスと女性達が、壁越しのやり取りで大騒ぎ。

徐々にその状況が見えてきた。


「えー、あのバカの・・・ドモン様から伝言がありますので、皆様にこの場でお伝えいたします!『ボスに垢すりを頼んでおいてやったので、それで身も心もスッキリして会議に臨んでくれ。ただし大人のお店ではないからお触りは厳禁だ。まあ俺からの贈り物として、こいつらには例のキノコを食べさせてあるので、元気になってたり体をクネクネしてるのを見て楽しんでくれワハハ』だそうです・・・こ~~んの~バカバカバカ!!」


半泣きの涙目でそう叫んだ女ボス。最後は心の声が漏れてしまった。

その挨拶を終えた頃、腰にバスタオルを巻いた屈強な男達が女風呂へとやってきて、悲鳴、そして嬌声が上がった。


「し、失礼いたします!ああ見ないでください!!」「すみません皆様!見てはおりませんので!!」「違うんです・・・」

「まっ!いやですわ!オホホホホ!!」「なんてお元気なのかしら!ウフフフ」「逞しいですわぁ・・・」「これは想像していたよりもずっと」「立派なお体ですこと!我が国の戦士も顔負けですわ!」


タオルの一部分を大きく膨らました男達が、申し訳無さそうに並んで女性達の目の前を横切り、奥の垢すり場のカーテンの向こう側へと消えた。

それを見るなり、ぶり返す謎のムズムズ感。

恥ずかしいだの、興味はあるだの、あなたはどうするだの、中であのタオルは取るのかだの、夫に悪いだの、夫もやるはずだのと大騒ぎ。結局のところ興味津々。


「施術を受けたい方は、垢すり場の前にある紙に名を記しておいてください。おひとり様二十分ずつ順番に施術いたしますので」女性従業員と男性従業員が、ほぼ同時に同じ説明。

「ねぇトッポってば!私どうし・・・」

「ボスさん!僕からお願いします!」「わ、わかったからあんたはもう・・・まず名前を書きなさいと言ったでしょ!」「は、はいすぐに!」

「・・・・」「・・・・」


チィの言葉を遮るように、女ボスに垢すりのお願いをしたトッポ。

チィとミィが額に青筋を浮かべながら、予約の名前を書きに行った。

するとそれを見ていた奥様方も、我先にと湯船から飛び出し、垢すり場の前へ。


「ワ、ワタクシが先ですことよ?!」「ワタクシが先ですわ!」

「あなたが先では、男達の元気を抜かれてしまうのでは?!」「そんな事はありませんわ!」

「あなたは侍女でしょ!遠慮なさって!」「そ、そんな奥様、今更酷い・・・」


壁の向こう側でも男達が同じようなやり取り。

その内に1番と書かれた札がかかったカーテンの向こう側から、トッポとチィの「気持ちいい・・・」という声が聞こえはじめ、更に予約争いが苛烈に。


「きゃっタオルが!!見るな!見たら引っ叩くから!!」

「そんなこと言ったって僕はどうしたらエヘヘ」

「このスケベ国王!これじゃあの人と一緒じゃないのよ!」

「ドモンさんならとっくにもう、ボスさんは襲われている気がします」

「・・・ま、まあ確かにそうね」


せっせと動けば、体に巻いたバスタオルが落ち、その度に巻き直していては埒が明かず、最後はすっかり諦めムード。

カーテンで仕切られているならば、店のようなものだと開き直った。


「ちょっとあんた!いつまでここ元気にしてんのよっ!」と仰向けで寝そべるチィ。

「も、もうしわけありません!!例のキノコのせいではありますが、もしキノコがなくてもお客様は魅力的すぎて、きっと我慢できなかったかも・・・」

「な、なによもう本当に・・・仕方ないわね。じゃあ胸の下側もお願い。手でグイッと持ち上げていいわよ」

「ああもう・・・あっ!タオルを返してください!!」

「エヘヘ、私だけ見られてずるいじゃない」


お触りが駄目ならじっくり見てやろうと考えた一同。

更には悪知恵を働かせ、素手でナニかの垢すりをさせる男達、そして女達。

結局全員終わる頃には、スッキリのツヤツヤピッカピカである。



「本当にあんたとシンシアみたいなスケベなことになんか、なっていないでしょうね?!」

「なるわけ無いだろ!いくらなんだってそんな奴はいないよ」

「他はわかりませんが、ワタクシのお父様とお母様だけは、そういった事になるはずがありませんわ」

「御主人様~奥様~!もうサンの体しゅりしゅりしちゃダメェ~!!また飛んでっじゃうぅぅ!!ぉほおおんっ!!」


ドモンとナナの間に寝転がって悶絶するサンをシンシアが湯船から眺めながら、呑気にそんな会話をしていた。




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