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第435話

各国の代表達が新型馬車に揺られ、一路カルロス領へ。


途中予定通りにオーガの村に寄り、素晴らしい温泉と肉料理を堪能。

宿は急ピッチで作られた簡易的なものではあったが、何より温泉自体が素晴らしく、全員が大満足。


「いやぁこれは素晴らしい湯だ。我が領土にもこのようなものはあるのだろうか?」

「私達も一度調べねばなるまい。それよりもなによりもだ・・・」

「魔物・・・いやオーガの者達とこうして語り合うことが出来るなど、夢にも思わずにおったわ」


王族達の裸の付き合い。

流石に話す内容のスケールは大きい。

王家などがない国の首相、つまりは大統領と呼ばれる者達が気を使うという異常な状況。


「それはドモンさんがいなければ僕達も同じです」とトッポ。

「うむ。奴が居らぬ状況ならば、温泉を楽しむなんてことは生涯考えもしなかったであろうな」義父も頷く。

「それは私達だって同じ気持ちです。ドモン様が居てこそ、ようやくこうして人間の皆様と・・・うぅぅ・・・」涙を浮かべたオーガの長老。


ギリギリにやってきた後発組の国の代表達は、まず挨拶に訪れた王宮で腰を抜かした。

チィとミィのオーガ達が城の中に居たためだ。


まずオーガだということに震え慄き、その強さと美しさと愛らしさに驚き、そして人間と変わらない考えを持っていることに言葉を失った。

魔物は討伐対象ではなかったと、ここで初めて知ったのだ。


「人々から簡単に差別の意識を取り除くのは難しいことであろうが、その努力はしていくと約束しよう」

「うむ。我が国も時間はかかるであろうが、喧伝していこうではないか」

「ただ、まだ私達にも分からぬことが多すぎる。言葉の通じぬ魔物達も居るのもまた事実じゃ」

「それも議題として合同会議で取り合いましょう!」


参加者が参加者だけに、どうしてもすぐに始まってしまうミニサミット。

それには女性達も不満顔。


「いつまでそこでお話をしているのですか?ワタクシ達も待っているのですわよ?」

「そうですわ!」

「それともご一緒に混浴とやらを楽しみますか?お仲間になってホホホホ」「オホホホ」「ウフフフ」


奥様達の側にいたチィとミィは、ヤレヤレのポーズで首を横に振る。

この奥様達が実は冗談でもなく、本気で一緒に入ろうとしていた会話を聞いたからだ。


「このキノコをほんの少し食べさせると・・・」

「なんですって?!」「こ、この指輪と交換してくださいまし!」


「恥ずかしいけれど、恥ずかしいのが良いのよ。男同士で見せつけ、張り合うように腰を・・・」

「まあ!」「き、興味がないと言えば嘘になりますわね・・・」


「女性が食すと、感度が何倍にもなるのですわ!ワタクシ先日それで何度気をやったことか・・・」

「ああもう我慢できませぬ」「お願いよお願い!この指輪も差し上げますわ!」


初参加となる女性達ももうすっかり『お仲間』となり、風呂から見える脱衣所内で、はらりはらりと服を脱ぎだした。


「何をしておるのじゃ!皆に見られてしまうではないか!」

「す、すぐに出る故、しばしお待ちくだされ!」

「チィもミィも皆さんを止めてください!・・・って、どうしてふたりまで脱ごうとしているのですか!!」


チィとミィも奥様達に混じって、一緒に例のキノコを食べていた。

トッポは大慌てで着替えて皆を先導し、簡易宿の方へ男達を案内。


「ワタクシの国の果実酒を冷やしておきましてよ~!どうぞ皆さん、た~っぷりとご堪能くださいな」


ひとりの奥さんが、去っていく男性陣の背中に声をかけた。

「一晩キノコを漬けたものですけれども・・・ホホホホ」「ホホホホ」「ウフフフフ」



翌日、何事もなかったような顔をしながら出発。

なぜかやけに夫婦愛が高まったのと、なぜか王族達の親密度が増していたが。


国王同士で肩を組み「おお兄弟よ」「なんだスケベオヤジめ」なんて会話をしている。

カールがそれを知れば、きっとドモンの仕業に違いないと勘違いをするであろう。


一行は、そんなカールが待つカルロス領へ到着。


「いやぁ快適な旅であった。新型馬車のおかげであろう」

「ここがこの新型馬車を開発した街であるか」


住民が増え街も発展した。

だが王都などに比べれば、正直まだまだ田舎町と言える。

石畳の舗装もない土の道路で、建物も木造のものが多い。


今のところ、各国の首脳が集まり合同会議を行うとはとても思えない雰囲気。


街に入るなり大勢の騎士達と、カールを含む貴族達がお出迎え。

住民達は物珍しそうに沿道に集まり、遠目から大行列を眺めていた。


「よ、ようこそおいでくださいました」


挨拶をしたカールは、もうガッチガチに緊張していた。

義父は王族とは言え、まだ『自分の義父』であるから話もできる。

しかし相手が国王ともなればそうはいかない。


更に他国の国王らをも迎え入れるともなれば、ひとつのミスが命取りとなる。

平気で接しているドモンやナナがおかしいのだ。


「会議を行う宿の方まで私が先導をいたしますので、しばらくお付き合いお願い致します」

「うむ」「頼んだぞ」「お願い致しますわ」


大きな声で説明をしたカール。

あちらこちらから聞こえた威厳が感じられる返事に、心臓は縮まる一方。

こんな事を提案したドモンを今すぐ引っ叩きたい気持ち。


「えー・・出発の前に一応お伝えいたしますが、すぐその先の左手にあるバーが、あのドモンやナナの住む家であります。店ではドモン直伝のチキンカツや鶏塩鍋といったやや珍しい食べ物などが・・・」

「なんだと?!」「それは本当か!」「ドモン殿の!!」「ナナちゃんの?ということは噂のエリーさんが居りますの?!」


あとからドモンの家はどこなのだ?などと尋ねられ、実はとっくに通り過ぎていましたなんてことがないように一応カールが説明をしたが、皆想像以上の食いつきにカール達はオロオロ。


「よ、寄りましょう!ご挨拶もしていきたいですし。皆さん、少し予定が変わってしまいますがいかがですか?」とトッポ。

「もちろんだ!」「当然ですわ!」「すぐに参ろうぞ」

「え・・・?」


カール大困惑。当然そんな予定は組んではいない。

チラリと左前方の沿道を見ると、見知った禿頭とメリハリボディーの女性が、こちらを見てニコニコしている様子が小さく見えた。

その様子が義父からも見え、思わずカールと目を合わせる。


「エリーには、あとでたっぷりと愚痴をこぼされるであろうな」

「お、恐らくは・・・」


頭を抱えた義父とカールに「俺から伝えてきます・・・」とグラが声をかけてから、馬を走らせた。




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