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第429話

「妻はすっかりやつれてしまって・・・今の姿からは想像も出来ないとは思うが・・・」

「言っちゃ悪いがまあ確かにな。おお、随分といい酒だ」


以前義父から貰って広場でアップルパイを作った時のような、かなり上質な酒。

そこにドモンは最大限のもてなしの心を感じた。


「息子はそんな妻に面と向かい『気持ち悪い』と笑い、蔑み、そして出ていったのだ。それから妻はすっかり塞ぎ込んで、部屋に籠もりがちになってな・・・」

「それで今度は運動不足もたたって太ってしまったと」

「うむ・・・心労で肌も荒れ、妻はますます外に出ることもなくなり、それにより・・・」

「もっと肉をつけてしまったか」


ヘレンの夫は口をつぐんだ。

正直なところそれだけではない。

その気持ちはあっても妻を抱くことが出来なくなり、それが更にヘレンを傷つけてしまうことになってしまったのだ。


「あとは悪循環だ。息子はそんな妻をまた罵倒し、妻はそれまで以上に部屋から出ることが無くなり、食事をしては眠り・・・・それからはもう、ただ死ぬのを待っているようにしか思えんのだ」

「・・・・」


ドモンはもう言葉もない。

ほんの少しのきっかけひとつで、全てが崩壊していく。

これまでもそんな家族を幾度となく見てきた。


一度夫から抱かれるのを拒んだために、全てを失った奥さんがいた。

数秒妻への返事が遅れたために、家庭が崩壊した旦那さんもいた。

他人から見ればたったそれだけで?と思われるかもしれないけれど、人と人の結びつきなど案外脆い。


話を聞けば、今回の場合もほんの些細なこと。

五年ほど前に家族揃ってピクニックに出かけ、なんの気なしにヘレンが「私達のこと好き?」と機嫌よくにっこり笑いながら息子に聞いたところ、「別に」と息子に言われた。初めはただそれだけだった。


自分が養子だということも知り、ひねくれていたのか素直になれなかったのか?それとも照れくさかっただけなのか?

ヘレンが泣き出し、夫は息子を叱責。それから息子の反抗が始まった。



「ドモン殿!ドモン殿の知恵でどうにかならぬか?うぅ・・・」

「そんなこと言ったって、俺だって家族ってもんがよくわかってないというのに」

「頼む!もう!もう頼れる者は他におらんのだ!!」

「う~ん・・・」


ドモンが知る限り、子供というものはとにかく頑固だ。

親は『自分の理想としている親でなければならない』と思いこんでいるからだ。


親は聖人であり、スケベもしなけりゃ悪いこともしない、その上子供に満足な食事を常に与え続けるものだと勘違いをしている。


自分の事は棚に上げ、最終的には自分が悪くても親の育て方のせいにする。

可愛がってもらって当たり前。愛してもらって当たり前。そんな勘違いをする生き物。

子供とはそういうものだと、今までの経験でドモンはそう認識している。


子供がなぜ『餓鬼ガキ』と呼ばれるか?

常に食べ物と愛と正義に飢えているからだ。


その愛は殆どの場合、理不尽なほど一方通行であり、子供から親に歩み寄ることはまずない。

子供が自分自身、これらのことに気がつくまでは。



「子供ってのは、親が完璧じゃないといけないと思ってるもんなんだよ。だからまず、あの奥さんが変わらなけりゃならないと思うんだよな」

「そんな事を言っても・・・これ以上妻に何を求めろというのだ。これ以上辛い思いをさせたくはないのだ」

「何も辛い思いをしろだなんて言ってないよ。とにかく一度奥さんと話をしていいか?そしてこの件をすべて俺に任せると約束してくれ」

「それは構わないが・・・」

「ただあんたの奥さんの裸を俺が見ることになるぞ?ズッポシスケベをするわけではないけどな。その覚悟はあるか?」

「な、なんだと?!」


訳の分からぬドモンの提案に、思わず立ち上がったヘレンの夫。

だが、それ以外救いの方法がないというドモンの意見に少し思案した後、首を縦に振った。振らざる得なかった。


一度街へと出向きすぐに戻ってきたドモンは、一直線にヘレンのいる部屋へと飛び込み、内側から鍵をかけた。



「な、何をなさる気なのですか?!」部屋の隅に追い詰められたヘレン。

「いいから黙って裸になれ。お前の旦那からも許可は得てるんだ」

「そんな・・・うぅぅ・・・」

「5・・4・・3・・2・・」

「わかりましたっ!脱ぎますからっ!!それをやめてくださいまし!!」


ドモンと二人きりの部屋の中。ヘレンはドモンによって裸にされた。

ドアの前で聞き耳を立てる侍女達と、たまたま帰宅していた例の息子。


「随分とだらしない体になったもんだな」うつ伏せになったヘレンの大きなお尻をバシンと叩いたドモン。

「ヒィィッ!!ごめんなさい!!!」

「これからお前の身体を綺麗にする施術をしてやるよ。ついでに、お前のその・・・」もう一度お尻を強く叩く。

「痛いっ!!!」

「だらしない心も!!」更に更に強く叩く。

「ああああああああああ!!!!」あまりの痛みに、ヘレンは股の間から老廃物を漏らした。


「・・・元通りにしてやるよ。イヒヒヒヒヒ!!!」


ベッドにうつ伏せになったまま、涙を流すヘレン。

鍵がかけられた密室の中、ヘレンを変身させるためのドモンによる施術が始まる。




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