第426話
活動報告でも書いたけど、右手首の腱鞘炎大爆発により、短くなってしまったというか一話を半分に分けた。
もう二度と「何だよ今週の一歩、6ページしかないじゃん!」とか「また休載かよ」とか言わないと誓う。言うけど。
静かになった食堂。
まだぐっすりと眠っていた大臣や騎士達も叩き起こされた様子で、目を擦りながら馬車に乗り込んでいたのを見た。
この朝食にもありつけなかったのは、もう気の毒としか言いようがない。
「それにしてもサンもシンシアも、どうして起こしてくれなかったのよ。ング」もぐもぐナナ、二回目のおかわり。つまり三杯目。
「そ、それはですね・・・」「忘れていたのですわ」
上手い具合に誤魔化そうとしていたサンを、シンシアが思いっきり邪魔してしまった。
お姫様だけあって、結構辛辣なところがあるのがシンシアの欠点。
「そうやっていつも私を除け者にして!酷いじゃない!うぅ・・ング」
「ごめんなさい奥様・・・私、少し気が動転していたのです。お叱りいただくのは当然です・・・」
サンは常々『ドモンのそばにいるのは奥様だ』と思っていたのに、それを忘れてしまったことを悔いた。
それに寝ている時にひとりぼっちになる寂しさも、サンはゴブリンの村で経験しているので知っている。
この格好を見ても、きっと本当に焦っていたのだと想像が容易に出来、心底申し訳ない気持ちでいっぱい。
「サンはドモンと一緒にいたんだし仕方ないのはわかるわよ。でも・・・うぅぅ」
「もう泣かないのナナ!ワタクシが悪いの。ワタクシもサンの悲鳴を聞いて気が動転していたのですわ。無事救うことが出来て、すぐにドモン様のところへサンを連れて行ってあげようとしましたのよ・・・」
「シンシアなんて大っ嫌い!フン!ん?ングググ・・・」米が喉に詰まったナナ。ちょっぴり鼻水も出た。
「もうわからずや!本当に手のかかる子ですわ・・・ほらお水を飲みなさい」「奥様、お鼻・・・」
シンシアにとってナナはライバルでもあるけれど、やはり歳の近い妹のような感覚。
憎たらしく、でも可愛く。
これからドモンの第一夫人として表舞台へと立つことになるのだから、淑女としての嗜みや振る舞いを覚えていかなければならないというのに、いつまで経ってもこの調子で、いつもシンシアの頭を悩ませる。
「ナナもそんなに怒るなよ。元はと言えば俺が悪い・・・いや、俺を誘ったジジイが悪いんだ。俺は何度も断ったんだけど、どうしてもと言われて断りきれなくてさ。それが原因でナナが寝不足になったようなもんだし」
「もう!また人のせいにして!」ドモンの言い訳も今のナナには通用しない。
「お詫びと言っちゃなんだけど、この後みんなで新しく出来たエステティックサロンに行ってみようよ。オリーブオイルを使ったオイルマッサージってのをやってもらう店なんだ。お妃様達を案内する予定だったんだけど帰っちゃったし」
「なによそれ??」
当然エステなど知らぬ一同。
ドモンからお金を出して綺麗になれる店だと説明を受け、ようやく納得。
「そういうことなら行ってみようかな?」とナナ。
「ワタクシは少し眠りたいので、また今度の機会にお願い致しますわ」サッと髪をかきあげたシンシア。
「私はスマートボール場の方へ行かなければなりませんので」サンはペコリと頭を下げた。
結局ナナひとりが行くことになり、また下手くそな鼻歌を歌いつつ、ドモンの腕に絡みつきながらふたりで外へ出た。
「ふたりとも来れば良かったのに」
「・・・気を使ったんだよ。お前に」
「え?!」
「お前が一番背も高いし、身体もすごいから勘違いしそうになっちゃうけど、結局はシンシアやサンから見れば、一番年下の可愛い妹みたいなもんなんだよ。やっぱり悪いと思ったんだろうな本当に」
「そんな・・・」
怒りに任せて文句を言ってしまった事を反省したナナ。
ただ実際はそういった意味合いもあったが、別の意味もある。
シンシアとサンは、オイルエステで行われる内容をナナが来る前に聞いていたからだ。
ドモンが説明したそれは、元の世界のエステティシャンが聞けば、恐らく激怒するような内容。
ふたり仲良く手を繋ぎながら、奥の新しい建物の二階へと向かう。まだ上の階は工事中だけれども、二階までは完成していた。
中に入ると白を貴重とした清潔感あふれるキレイな部屋に、いくつかのオレンジの照明が暖かな雰囲気を醸し出している。
ドモンのイメージ通りに、大工達が仕上げてくれたのだ。
「いらっしゃいませ!」と美人受付嬢。ここに通えばこうなれるという印象を持たせるため、ドモンが街を駆けずり回って探してきた美女。
「ごめんね、予定が変わっちゃって。代わりにナナを連れてきたよ」
「ええ、もちろん構いませんよ。それで例の話は・・・」
「ああ、問題ないよ」
キョロキョロとしているナナをほったらかしで、何やら話を進めたドモン。
奥の部屋に行くと、今度は茶色を基調としたやや薄暗い落ち着いた雰囲気の部屋だった。
「ねえ、ここで何をするの??」
「とりあえずここで服を脱いで裸になって、このタオルを巻いてくれ」
「は、裸ってまさか・・・私にここでスッポンポンになれっていうの?!」
「そういうもんなんだよ」
紙パンツなんてものがないのだから仕方ない。
そもそもそれがあったところで、どうせ誰も知らないのだから教える気もなかったし、使用する気もなかった。
「ぬ、脱いだわよ」
「じゃあそこにうつ伏せになって。穴が空いているところに顔を入れるといいよ」
「変なベッドね・・・まあ楽といえば楽だけど」
「よし、じゃあみんな入ってきてくれ」
「え?!ちょちょちょっと待ってよ!!!」
タオルを身体に巻いているとはいえ、裸は裸である。
ゾロゾロという足音にナナは大慌て。顔が穴にハマっているので、ナナからはその様子がわからない。
「やだやだドモンってば!ドモンがするんじゃなかったの?!」
「フフフそれはどうかな?イッヒッヒ」
「ねえ駄目よ!やだ!どうして脚を開くのよ!!見えちゃう見えちゃう!!」
「見せてんだからいいんだよ。いいから言う事を聞け!」
大きなお尻をペチンと叩き、ドモンはオリーブオイルの入った瓶を手に取った。




