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第424話

「あら?案外みんな来るの早いな。大臣達や騎士達よりも早いじゃねぇか」

「ドモンよ、その者達は恐らくまだしばらく来ぬぞ?例の店に今朝7時まで居ったようだ」

「あいつら・・・俺が言ってた時間ギリギリまで遊んでやがったのか・・・まったく」

「仕方なかろう。あれ程の店は初めてのことだ。私も今朝もう一度行ったくらいだ」

「え?!」


午前二時にドモンと別れ、二時間ほど就寝した後こっそりひとりで様子を見に行き、まだ営業しているのを見て、義父はもう一度入店していた。

後に役所代わりとなる青オーガの屋敷や、憲兵の詰め所なども建てる予定だけれども、ついでに義父もここに別荘を建てるかどうかを真剣に考えたほど。あの店はそれほど魅力的で楽しかった。


「何の話ですかな?」とシンシアの父。

「いやまあこっちの話だ。それよりもまだ料理が・・・」ソースの美味さに、ドモンはつい普通に朝食を食べてしまった。

「これは何を食べていらしているのかしら?普通に卵を割って焼いただけのように見えますが・・・」とシンシアの母。

「これは目玉焼きです。確かに普通に卵を焼いただけのものですが、お米と相性もよくとても美味しいのです」とサンが説明。


「これは試作品のとんかつソースの味見用に作っただけだよ。きちんとした料理はまた別に作るから」と言いながら、シンシアとサンの分の目玉焼きを焼いたドモン。

王族達がじっと見守る中、シンシアとサンの二人も着席し食べ始めた。


「な?!なーんですの、このお味は!ドモン様!ワタクシしばらくここに一緒に居りますが、食したこと有りませんでしたわよ???このおソースでカツと呼ばれるものは食しておりますが」「はい!」

「あれ?そうだったっけ?」


シンシアもサンも目玉焼きは食べたことは何度かあるが、ソースで食べるのは初めて。

醤油で食べるものだと思っていた。そしてシンシアは断然ソース派であった。


「ん・・・ん・・・とても美味しいですわ~ドモン様!卵とこんなにも相性が良いだなんて」

「お肉以外のものでも合うのですね!御主人様!」


すっかりみんなが見ていることも忘れ、ハムハムホムホムと頬張るふたり。

それを見ていたトッポが「僕の分をもうひとつ・・・」とおかわりを希望し、「ならば私も頼む」と義父が便乗。


それだけでもう説明はいらなかった。

目の前にあるこれはとても美味しいものなのだと理解し、王族達はお互いにウンウンと小さく頷く。


「ドモン殿、我らも同じ物を用意してくれぬか?」

「え?目玉焼き??こんなのでいいのか?もっと良いものを・・・」

「いや、目の前にあるそれで良いのだ」「皆と同じ物を食し、同じ様に判断をしたい」「で、あるな」


トッポと義父のおかわり分とチィとミィの分を焼いていたのだけれども、結局これらは王族行きとなり、チィとミィはまた食べられず。

チィはさっきいらないと言ったことを深く後悔。


「ただ焼けばいいのよね?」とエミィがポンポンと熱したフライパンに卵を割っていき、ミィが手際よく出来上がったものをお皿の上へ。

それにチィが順番にソースをかけているが、やはりナナと同じくらい雑なので、ソースをテーブルに機嫌よく撒き散らしている。


「何か言いたそうねドモン様」

「いや別に」


チィとドモンの会話を聞き、クスクスと笑うトッポ。

和やかな雰囲気の中で、ソースがかけられた目玉焼きが皆に配られていった。

まるで高級料理を味わうかの如く、上品にフォークとナイフで目玉焼きを切る王族達。


「お?おぉ?!こ、こここれは一体?!」

「素晴らしいですわ!!これが卵を焼いただけなんて信じられませんわ!!」

「ドモン殿これは一体???」

「これは異世界の魔法のおソースなのねシンシア!」


ドモンの料理を食べ慣れている上、ソースの味を知っている義父ですら驚いたのだから、一同が驚くのも当然の話。

これがトンカツなどの料理ならばまだわかる。


だが今食べたのは、目の前で簡単に卵を焼いただけのもの。

それにより、よりこのソースの重要性に気がついた。


「これは異世界のソースを元に、王宮の料理人達が作ったものだよ。俺が異世界から持ってきたものよりも美味いのは保証する。俺もびっくりだ」と言いながら、ドモンもまた食べる。

「うわっ!!おいしっ!!」「はい!」ようやくチィとミィもありつけた。


「アンゴルモア国王!なぜこのようなものがあると教えてくださらなかったのですか!!」

「え?いやあの僕もその・・・」

「これもワタクシ達の国に譲っていただけるのでしょうね??プリンセスローズの他にもこのような特産品をお隠しになられていただなんて、意地悪が過ぎますわ!オホホホ」

「意地悪してたわけじゃないんですよ・・・」

「我が国のシェフにこのソースを作れと命じても、簡単には行きますまい・・・」

「ど、どうしたらいいのですか?ドモンさん!」


質問攻めに合うトッポ。

ドモンは面倒なので素知らぬ顔をしながら、豚肉を焼いている。


「まあ欲しいっていうなら交易品として輸出でもしたら良いんじゃないの?ただ独占はしないようにしてくれよな?作り方は秘密でも、原材料くらいは教えてあげてやってよ」

「やはりそうですか」

「お互いに競争して美味しいものを作り合っていれば、もっと美味しいものが出来るかもしれないからな。ジジイにも前に言ったけど」

「うむ」


義父は以前あったすすきの祭りでドモンが言ったことを皆に説明。

それには全員が納得の表情。


「私の国にはその桃がありますぞ!この土地で育つかどうかは分からぬが、桃の苗木と栽培している農家の者達をこの国へ送ろうではないか!」

「私の国は海に面しておるので、豊富な水産資源があるのだ。新型馬車で輸送できるというのであれば・・・」

「ワタクシ達の音楽隊が使用する楽器は・・・」


結局また始まってしまったミニサミット。

ただ今度は自国の利益だけではなく、皆夢を語っていた。

こうしたらあなたの国はもっと良くなるのではないか?では私達はこれを協力するから、それを手助けしてくれないだろうか?


各国の王族達は夢を見た。


ドモンがいるこの色街にやってきて、楽しい未来を夢見た。

もっともっと、今よりももっと素晴らしいものを作り上げることが出来るという可能性を見せつけられ、やる気が溢れ出てきたのだ。


「そんなのどうでもいいから豚肉食べようよ。このソースはやっぱり豚肉に合うんだ・・・って誰も聞いちゃいねーな」

「聞いているわよグギギギギギ・・・・」


ドモンが振り向くと、裸に浴衣一枚羽織ったナナが食堂の出入り口に立っていた。




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