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第422話

「これが小説なら読者も怒っているだろうな・・・最低の引きというか引っ張りというか・・・」

「なにがなにが!ねぇ御主人様!!」


パカッとドモンが手を開くと、サンの目にも驚きの様子が飛び込んできた。


あちらこちらで開けっ放しになっているドア。廊下に脱ぎ捨てられた服や下着。

そして裸の男性達と女性達が、一糸纏わぬ格好のまま、そこら中でスケベなことをしていたのだ。

ハプニングバーも真っ青。元の世界なら摘発待ったなし。


例のキノコを食べすぎたのか食べさせすぎたのか、それとも初めてのことに体と心が慣れていなかったためか、本当に誰にも見せられないほどの乱れよう。

ドモンが『スケベの無法地帯だ』などと言ったのも原因のひとつだろう。


「サン、三階の階段のところに『朝7時までドモンの許可なく上がることを禁ず!』と看板が立っていたところあるだろ?そこにロープも張って、俺が来るまで見張っていてくれ。これらのことは絶対に見られちゃ駄目だ」

「か、かしこまりましたぁ!」

「とにかくこっちは俺がなんとかするから」

「はいっ!」


ドモンにはオーバードーズ、つまり薬の過剰摂取による心神喪失や異常興奮だとわかっていたが、サンにはまるで悪魔に取り憑かれてしまったかのようにしか思えなかった。


「ふ、夫婦交換なんてやってなきゃいいけど・・・まあそういう趣味があったなら仕方ないかぁ」

「ああもうすごいすごいの!」「あなた素敵よー!!」

「ハァ・・・俺も水魔法でも使えりゃ良かったなぁ。頭から水をぶっかけるのが一番手っ取り早いのに」


一組一組順番にドモンが声をかけ正気に戻し、全員を風呂場の方に移動させていく。

夫婦で腕を組んで廊下を堂々と歩く姿は、まさに王族といった威厳が見えるが、みんな丸裸である。

男達はまだ元気なままで、お互いにそれを見せつけるように歩き、奥様達はそれをどうだとばかりに自慢しあっている様子。


「ぬあっはっは!!見よドモン殿!我の勇姿を!このような気分になったのはいつぶりのことか」「素敵よあなた!」

「ハイハイ。なんかあのジジイもこんな感じだったな最初・・・」


元気な何かを見せつけられドモンはヤレヤレ。王族は露出狂ばかり。


「ドモン殿も早く脱いで一緒に入ろうではないか」

「俺はそれでも別にいいけど、あんたらの奥さん達の裸も俺に見られてるってこと忘れてるんじゃねぇのか?」

「ホホホホ」「今更ですわ!」「ドモン様なら問題ございませんわ」「お仲間ですものねぇ」


すっかりハプニングバーの店長と客達のような関係になってしまった一同。

お湯が温まるまで裸のまま湯船の淵に座り、「今度おふたりでワタクシの国の王宮にいらして」だの「また皆で集まらぬか?」だのと語りながら、あちらこちらで乳繰り合っている。

ゴブリンやオーガの温泉の話にも興味津々で、サミットに向かう際に、みんなでオーガの温泉の混浴に入る気満々。


それよりもなによりも、全員が徹夜をしたというのに、皆生気に満ち溢れた顔をしている。

この国に負けないくらいの街や国を作り上げる!と、息巻いていた。


「その為にはどうしてもドモン殿の力添えが必要なのだ!」


国王のひとりがそう叫ぶと、ドモンは満足そうな顔をしながら「まあ気が向いたらな。そろそろ朝食の準備するから先に行ってるぞ」と言い残し、その場を後にした。


徐々にこの世界のすすきの化が進んでいく。

ドモン達が住み慣れたあの街へと・・・。



ドモンが階段を降りると、サンが困った顔で待っていた。

「ごめんなさい御主人様・・・今はダメですといったのですけれど・・・」


チラッとサンが視線を向けた先では、トッポとチィとミィが怒られながらしょんぼりとしていた。

怒っていたのは義父とエミィ。


「全くこのようなことにうつつを抜かすなどクドクドクドクド・・・」

「はい・・・確かに・・・ええ・・・」


義父は自分の事は棚に上げ、国王としての振る舞いについて説教をしている。


「もう~あなた達!どうするつもりなのよぅ!壁に穴まで開けてしまって!」

「だってトッポが」「ご、ごめんなさい・・・私が防ぐべきでした・・・」

「だってじゃないでしょう!それにふたりともあんなに声を出して!向こうの廊下の奥まで声が響いていたんだから!」

「・・・・」「・・・・」


エミィが二人を叱っているが、なんとなく身に覚えがあるドモンとサン。

三階の廊下の奥の部屋にいたのは、ドモン達である。


「ま、まあふたりともそんなに怒らないでやってくれ。昨日はめでたいということもあって俺が促しちゃったんだ。それにジジイだって昨日は楽しんだんだから許してやれよ」とドモン。

「むぅ・・・」

「何をして楽しんでいらっしゃったのですか??」

「い、いや・・・」


もちろん全て知っていて聞いたサン。

ドモンを助けるために、輝くような満面の笑みと精一杯のかわいい声で義父の顔を覗き込む。

一番可愛がっている孫に、風俗店行きがバレそうになっている祖父のような心境である。効果は抜群のようだ。


「にしても、壁に穴ってなんだ?大工に頼んで塞いでもらうけど」ドモンが部屋の中を覗くと、拳大の穴がひとつ見えた。

「そ、それはチィが・・・」「この人が悪いのよ!私まだ敏感だから触っちゃ駄目って言ったのに、追いかけてきてお尻掴んでいきなり後ろからズッポ・・・むぐぐ」

「シーーッ!!ダメェ!!」大慌てでチィの口を塞いだミィ。


大体の想像がつき、呆れたドモンとサン。

「まあよくあることだけど、我慢しなくちゃ駄目よ?」というエミィの言葉にドモン達は少し驚いた。オーガはやはり規格外。

そのままエミィの説教がトッポに飛び火しそうな雰囲気になりはじめ、慌てて話を逸らした。


「そ、そういえばドモンさん!昨日色々あってすっかり忘れていたんですが、サンさんから渡されたレシピにあった『とんかつソース』というものが出来たので、味を確かめて欲しいと料理人達が言ってたんですよ」「サンでいいです・・・って、え?!」

「え?!とんかつソースが出来たって?!お前、なんでそんな重要なこと黙ってたんだよ!!てか、ソースって醤油とかなしで再現できたのか・・・」


トッポの言葉に飛び跳ねたサンとドモン。

ものすごい快挙だというのに温度差がすごい。


だがそれもそのはず。

トッポは街で食べたチキンカツも、城で食べたミルフィーユカツも、とんかつソースでは食べてはいないのだから。


サンがレシピを渡していたものの、料理人達がとんかつソースを初めて味見をしたのが、チャリティーコンサートの差し入れを作った時のたった一度のみ。

その料理人達もとんかつソースでカツを食べることはなかった。ソースだけを小指につけて舐めただけ。

そしてその舐めた液体を、伝えられたレシピを参考にただ純粋に再現しただけだ。これが何かもよく分からぬままに。


王宮の料理人、そしてトッポにとっては、ミルフィーユカツはチーズで味わうもの、チキンカツはマヨネーズで食すものだと思いこんでいたのだ。


ドモンはドモンで、この世界の今ある食材や調味料だけでは、とんかつソースを作れないものだと思いこんでいた。

醤油を使用して作るのが一番楽に出来るのだけれども、果実や野菜、香辛料やビネガーなどがあれば再現できる。

ドモンはそれをすっかり忘れていたのだった。サンはソースに書いてある原材料を書き写しただけ。


「ソースは今回持ってきてるんだよな?」

「ええ、馬車に積んでありますよ」

「む?!ソースとはもしやカルロスの屋敷で食したあれのことか!」


まだそこまで重要なことだとは思っていないトッポと、ようやくドモンが言っているソースが、ソースカツ丼に使われていたソースだということに気がついた義父。

料理人達も重要だと思っていなかったために報告もせず、王宮でそんなものを作っていたことすら義父は知らなかった。


「エミィ、チィ、ミィ、料理するから手伝え。忙しくなる。サン、四階の王様達を食堂に案内してくれ」

「ええ!」「わかったわ」「はい!」「はい!」


みんなを引き連れ食堂へと向かったドモン。

その三十秒後、四階から「きゃああああ!!」とサンが叫び声を上げることになった。




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