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第420話

「さあ続いてはステージ上に寝転がり、踊る女の子のスカートの中を下から覗いてしまいましょう~!先着五名様・・と言いたいところですが、今回はオークション方式で、女の子達へのチップの金額上位五名が体験できますよ~!さあ銀貨一枚から!手を挙げて!」

「こ、こっちは銀貨二枚だ!」「三枚!三枚払うぞ!!」「四枚出そうではないか」


すすきのの本物とは少し違うけれど、折角だから女の子達にも少しだけ良い思いをしてもらいたいというドモンの親心。

普通の仕事であれば、一時間に銀貨一枚稼げればいいくらいなのだから、チラッと見せただけでこんなに稼げるなんて夢のような話。


そもそもが、男性をスッキリさせるのが銀貨八枚で、その内の半分が店の利益なのだ。

一時間に銀貨四枚もなかなかの収入だけれども。


「チップは女の子達だけで分ける予定だから、多く出せばきっと顔の上で張り切って踊っちゃいますよ~!」煽るドモン。

「銀貨五枚出すぞ!」「金貨を出そう」

「え?」「え?」「え?」「え?」「え?」


テーブルの上に金貨一枚出した義父。

全員がギョッとした顔になるのも当然。銀貨百枚分であるのだから。


「いやいやジジイ、そりゃ女の子も喜ぶだろうけどさ・・・手と口だけでとはいえ銀貨八枚でスッキリ出来るし、ついでにそこで裸も見ら・・・」

「うるさい!貴様は黙っておれ!」

「あぶく銭は身を滅・・・」

「うるさいと言っておろうが!」


もちろん女性達にも、ドモンから注意をしている。

たくさん稼いだとしても、金銭感覚を狂わせないように気をつけろと。


それこそすすきののこの店で働いていた女の子が、それでえらい目にあったためだ。

彼氏と連絡を取るために携帯電話を手に入れたと言っていたが、当時の携帯電話の月々の基本料金はなんと7万円。

あれも買い、これも買い、あっちの会員費も払い、彼氏に小遣いも上げてと、気がつけば月に数十万単位での散財。


だけどそれでも貯金は増えていき、更に金銭感覚が狂い・・・戻れなくなったのだ。普通の生活に。


夢は自分の小さな店を持つこと。

それを今の彼と一緒に、少しずつ大きくしていくのが夢だと言っていた。


「月に50万円ほど売り上げたら、利益が20万円くらいかなぁ?」

「100万円も売り上げちゃったらどうしよう?でもなかなかそうは上手く行かないよね?」


店が終わった後の喫茶店でも、そんな話をドモンはよく聞かされた。


最低で月に80万円、最高は月に300万円を稼ぎ、資金が十分に貯まったところで開業したが、すぐに店を閉めて戻ってきた。

働いても働いても貯金が増えない。それが怖くなったそうだ。

そしてそのままもっと稼げる店に行きたいとソープ嬢となり、その結果彼氏も失った。


手っ取り早く稼ぎたいのもわかるが、散財を繰り返すとこういった事もあるから気をつけてくれよと、ドモンはみんなに話をしていた。


「嬉しいけど金貨はやりすぎよぅ」「ねえ?」「うん・・・」

「この私が良いと言っておろう!」頑として譲らない義父。

「まったく・・・どうしてもさっきのが悔しかったんだな?仕方ないジジイだ。じゃあ今回だけはジジイからの開店祝いだと思って受け取っておくよ。あとで責任持って女の子達に分けるから」

「うむ!」


女性達もドモンもヤレヤレのポーズ。

結局義父を含む大臣達五人がステージへ。

横に五人並ぶように寝転がり、女性達が頭の上に跨るように立つ。

照明が薄暗いためスカートの中がよく見えず、皆目を細めていた。


「はーい、じゃあ女の子達が踊りながら腰を顔の上へと下ろしていきますが、決して触ったり舌を出して舐めたりしないようにお願いします。クンクンするくらいなら良いけどもアッハッハ」


ドモンの説明で五人は鼻息を荒くした。

ショーを見守る人達も、酒を煽りながら羨望の眼差し。


「じゃあ行くよ!ソレッ!ソレッ!ソソレソレソレッ!」

「うおっ!!」「あぁすごい・・・」「スンスンスン・・・石鹸と・・・のニオイがここまで」


下からの照明に照らされ、スカートの中身が見えたと思った瞬間、目の前にとんでもないものが迫ってきて皆大興奮。

特に義父は、ドモンももう見ちゃいられないというくらいのはしゃぎよう。


「ハイ!それそれ!ああ、ごめんなさい!お顔にお股くっつけちゃった!!」

「ヌハハ!!よいよい!!ヌハハハ!!たまわんわ!!!」

「じゃあ金貨もくれたし、お詫びにもっと脚を開いてソレソレ!」

「よいぞよいぞ!!そなたを指名しようではないか!!」

「まあ嬉しい!ありがとうございま~す!指名入りましたぁ~」


すすきのの当時の店では、最後に楽しんだ男達のズボンと下着をステージ上で女の子達がイタズラに下ろし、酒を飲んでいるみんなに股間を見せるというのが恒例なんだけれども、あまりにも義父が元気になりすぎていたのでドモンが中止した。

これ以上たんこぶは作りたくない。


午後11時15分。ショーも終わり、店は最初の雰囲気に戻る。

義父は銀貨八枚を店長に支払い、先程の少しふくよかな女性とどこかの個室へと消えた。



「ドモン殿・・・」

「んーと砂漠の国の大臣?」

「いえ私は〇〇国の・・・」

「無理無理!俺には覚えられないよ。とにかくどっかの大臣ね?」

「それでも宜しいですよハッハッハ」


ドモンがいる、拡声器を置いてある事務所的な小さな部屋にやってきた何処かの国の大臣。


「これで二時間銀貨三枚というのは本当のことなのですかな?」

「まあ本当は夜はもう少し高くして、銀貨四枚くらいは貰おうかなって思ってるけど」

「それで商売は成り立つのでしょうか?そして働き手に関して・・・」

「ああ」


ドモンはニヤリと笑う。

自国にも作りたいというのが明白だったからだ。

コンサルティングのこともあるし、各国各地に色街を作り楽しみたいというのもある。ただ一番大切なのは・・・


人々を欲望の沼へ。「俺がいなければ耐えられなくなるくらいまで・・・」


ドモンは自分の存在意義を示すため。もしくはもっと格好の悪い言い方をするならば、他人からまだまだ認められたい、自分が必要であって欲しいといった類の承認欲求、自己顕示欲である。


『さっさとどこへでも行けばいい』『あんたなんかもう必要ない』

またそう言われることへの焦りと恐怖。


自身の欲望を満たすには、他人も欲望の沼へと引きずり込めばいいという、ドモンの歪んだ心。

自分が気持ち良くなるには、まず相手を気持ち良くさせりゃいい。ドモンがギャンブルやスケベから学んだこと。


それらの理由により、ドモンは無意識のうちにすすきのを再現しようとしていたのだ。あの欲望の街を。


どこかの悪魔は、この世界がまたひとつ自分の望み通りとなり、きっと高笑いをしていることだろう。

そうしてドモンは最後に大きくしっぺ返しを食らうことになるのだが、その結末を知っているのは、その悪魔だけである。




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