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第414話

「頭を下げ過ぎぬよう、お気をつけくださいませ皆様」

「オホホホホー!!これは楽しいものでございますわね!きっと庶民の子供達も喜ぶことでしょう」

「ワタクシも行きますわよ!きゃああ!ホホホホ!!」

「もうお母様ったら!はしたない」


すべり台を滑り、恐らく庶民の子供らの誰よりも喜ぶ奥様方。

シンシアもすべり台は大好きだが、そのシンシアも呆れるくらいのはしゃぎよう。


男湯の方では説明だけで、流石にすべり台を滑る者はいなかったが、夜に誰も見ていなければこっそり試してみようと皆考えていた。


「こちらがサウナと呼ばれているものですわ!中はとても熱くなっているのですが、疲れを癒やし、老廃物も流れてお肌もツルツル、そしてなによりサウナから出た後が爽快ですの!」

「それは素敵なことだけれども・・・本当に大丈夫なのかしら??」「ねぇ?」「ええ」

「苦しいと感じたならば、こちらに水風呂が用意されておりますので。あとタオルを口に当てた方が中では楽になりますわ」


シンシアの説明を受けながら、恐る恐る奥様方がサウナに向かう。

サウナもドモンの助言により、厚手のタオルを席に敷くようになった。


「うっ!んん~ドアを開けただけでもう熱いですわ・・・シンシアは平気なのですか?」と母親。

「平気ですわお母様。皆様もどうぞ中へ」シンシアが先頭になって皆を案内。

「!!!」「あっつ・・・」「ワタクシは平気かも?」


砂漠の国から来た年配のお妃様は、シンシアよりも熱さに強かった。


「上の段は更に熱くなっていまして、より効果が高いそうですわ」

「ではワタクシも上の段に」


シンシアと砂漠のお妃様は上へ。

他の三人は下の段で口にタオルを当ててフゥフゥと息をしている。

ただシンシア以外、それぞれが初めての体験を楽しんでいた。



「まあサウナの効果は最初に話したとおりだけど、ここからは男の勝負だぜ?」

「なにがだ?」とドモンに問う義父。

「根性試しだよ。自慢じゃないが俺はサウナで負けたことがないんだ。俺より長く入れるやつはいねぇ」

「サウナとはそこまで苦しいものなのですかな?」「貴様に負けるわけがなかろう!根性なしのバカ息子が!」


戦々恐々としながら皆サウナの中へ。


「ぬぅ!!これほどのものであったか!!」勢いよく一番手に義父が飛び込んだが、その熱さに面を食らってしまった。

「うお!熱い!!」「負けませぬぞ!」「ホッホッホ・・・私の国では夏場はずっとこのようなものですからな」

「ありゃ?予想外の強敵が現れたか。まあジジイが一番根性なしで、最初に飛び出すだろうなイヒヒ」


ドモンの頭にゲンコツを落としたい義父であったが、今はそんな余裕がない。

立ち上がるのも動くのも熱い。


「私達は初めてなのだぞ!貴様は何度も経験があるのだろうが!フゥ~・・・」

「経験もあるし、向こうの世界で付き合ってた女の弟が、サウナの第一人者でもあるんだよ実は。エレガントなんちゃらって名前の熱波師で」

「熱波師とはなんだ??」

「見様見真似でやってやるよ俺が」


サウナ用のストーブの石にドモンが水をかけると、一気に蒸気が上がり、体感温度も上がった。

そのままおもむろに腰に巻いたタオルを外し、ニヤニヤと笑う。


「な、何をする気だ、貴様・・・また粗末なものを見せつけおって」

「言ったな?ジジイ。じゃあジジイからやってやるよ。いち、にぃ、サウナ~!」

「ぬおっ!!貴様・・・ぐはぁ!!」


義父の顔に向かってタオルでバフッと風を送ったドモン。この世界で初めてのロウリュ。

掛け声もケーコの弟の丸パクリである。


「はい、シンシアの親父さんも、いち、にぃ、サウナ~!」

「アチチチ!!酷いではないかドモン殿!!」

「ハハハ、でもこれを浴びるといい汗が出るんだ。じゃあそっちの大臣も」

「ぶはぁ!!私はもうダメです!!ああ!!」

「そこに水風呂あるから飛び込め。そして椅子で少し休んでろ」「はひぃ~!」


ドアを開けて、転がり込むように水風呂に飛び込む大臣。

「大丈夫でしたか?」と声をかけたのは、こっそりすべり台で遊んでいたトッポ。

みんながサウナに入ったのを見届けて、今のうちだとすべり台を滑っていた。根性試しと聞いて逃げたのだ。

サウナが大丈夫だと知ってから、あとから入るつもり。トッポは可愛い顔をして案外したたか。


「ひぃはぁ・・・うぅ冷たい・・・けども・・・はぁ~なんだか体に膜が張られたように・・・あ~」

「大丈夫・・・そうですね?では僕もサウナの中へ」


トッポがドアを開けると、シンシアの父親と隣国の国王と大臣らが慌てて飛び出してきた。

中にはタオルを扇ぐドモンと、鬼のような顔をした義父、ホッホッホと笑いながらも赤い顔をした砂漠の国の王様オブ王様がいた。


「うわっ!本当に熱いですねこれ!!」

「おお、ようやく来たかトッポ。ほら座れ。扇いでやるから」

「ぼ、僕はいいですよ・・・だって熱そうですもん」

「いち、にぃ、サウナ~!」

「あっつぅ!!いいって言ったのに酷い!!」


トッポは一瞬で身体がまっかっか。

そしてずっと動いていたドモンも、ついに汗だくのまっかっか。そこから十数分経過。


「ジ、ジジイ共、そろそろ限界だろう?先に出たらどうだハァハァ」

「ホッホッホ・・・」「私はちょうど慣れてきたところだ。貴様こそそろそろ限界であろう」「僕もう駄目・・・」

「ああ確かに限界だよ。あと100数えたら俺はもう出る。それ以上は悔しいけど無理だ・・・」

「・・・・」「・・・・」「・・・・」


やっと見えた勝機に目を輝かせた義父と王様。そしてなんとなくトッポも。

やはり王族のプライドは守りたいのだった。


「91、92、93・・・フゥフゥ・・・」

「早く数えんか!馬鹿者!」「ハッ・・ハッ・・」「うぅ・・・」

「97・・・98・・・きゅうじゅう・・・きゅう~・・・ひゃ~~~く!!」


この時を待っていたとばかりにドモンの顔を見た三人。


「よし!一回目の100は終わったぞ。次は二回目の100だ。い~ち、にぃ~・・・」

「だぁああ!!何だぞれは馬鹿者!!!」「ぐはぁ!!もうダメですじゃ!!」「ブハッ!!」

「何だと言われても、俺はいつも100と100回数えてから出るんだ」

「くっ!!!」


サウナを飛び出した三人を見届け、ドモンもサウナから飛び出し水風呂に飛び込んだ。


一度ゴールが見えると、人は我慢の限界が近づく。

もうすぐトイレだと思うと、一気に限界がやってくるのと一緒。ドモンはそれを利用した。

ドモンは本当にもう限界だったのだ。


「クソ!!また騙したな貴様!してやられたわ!!!」すぐにドモンの作戦だったと見破った義父。

「駆け引きだよ駆け引き。心理勝負の駆け引きで俺に勝てるわけ無いだろワハハ!!」

「私もあと少しだと思った瞬間から、一気に苦しくなってしまった。いやぁ噂には聞いていたがお見事ですな」


先に出た者達も、中で何があったかを聞き感嘆の声をあげた。

そして全員が椅子の上へ寝転がるように座る。もはや何もかも全て丸出し。


「もう何も・・・考えられなくなりますな・・・」

「それがなんとも心地よいのじゃ・・・フゥ~」

「ドモン、これがサウナの正体か。眠いようでそうでもなく、ぼんやりとしているのに五感は研ぎ澄まされていく不思議な感覚であるな」

「ハハハ。みんな、お楽しみはこれからだぜ?エールでいいか?」

「おお?!」「頂戴致す」「頼む」「は、早くくださいドモンさん!」


脱衣所の冷蔵庫から、キンキンに冷えたグラスとエールを持ってきてドモンが配ると、感謝の言葉も伝えずに皆一気飲み。

ただドモンもその気持ちは十分わかっているので、その様子を見て笑っていた。


「くぅぅぅ・・・!!!」

「がっはあああああああ!!!」

「ブハァ!!う、美味い!!今まで飲んだ酒の中で一番美味いではないか!!ドモンよ、どうなっておるのだ?!」

「ングングング・・・ハァハァハァ・・・ホ、ホントだ・・・」


十分後、またサウナに飛び込む男達。

もうすっかりサウナの虜であり、サウナの中で高級宿のサウナの話をしながら盛り上がっていた。



当然女風呂でも同様のことが行われる。

ただしこちらの飲み物は、ドモンが作ったリンゴのスムージー。本来はナナとサンとシンシアのために作っていたもの。


「心なしかお肌に艶が戻りましたわ!」

「まあ!こんなお飲み物まで!なんて素晴らしいお方なのかしら!」

「シンシア、しっかりとあの方をつかまえなければなりませんよ?もっと美貌を磨きなさい!それに夜は必ずやドモン様のお側で、しっかりとご奉仕するのよ?いい?宜しくて?」

「お、お母様おやめください!皆様の前ではしたないことを・・・」


相手を何度も褒めろだの、大袈裟に声を上げろだの、下着はなんだの胸は押し付けろだのと、男同士のスケベ話なんて可愛いくらいのスケベ話を、うんざりするくらい聞かされたシンシアは苦笑い。

政略結婚ではなかったシンシアの母親やお妃様は、本当に重要なことなのよと力説。


「頂戴した子種をこぼさぬようにこうして脚を上げて・・・」

「お母様!!!もう!!!」

「ホホホホ」「オホホホ」「ウフフフ・・・フゥ・・・」


みんなすっかり妙な気分になったまま、大広間で男女が合流した。





テレビなんかでもたまに見る作中の某熱波師がケーコの弟というのも、なにげに実話である。

「100を100回」も、子供の頃に実際にドモンさんがサウナで行った実話。

こっちチラチラ見て、ぜんぜん出ていかないおじさんがいたから・・・(笑)



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