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第410話

「俺にも一杯エールちょうだい」

「はい」


従業員から受け取り、酔っぱらい達の隣へと腰掛けたドモン。


「これは遊びだけど、上手くなれば儲かるんだぜ?なんて言ったって俺、こういった遊びで稼いで暮らしてたんだからな」

「えぇ?!そうなのか??」「遊んで金が貰えるだって?」

「今回だけ特別に儲かるコツを教えてやるから、ちょっとやってみてよ。ものは試しでさ」

「ああそうだな」「どれ、やってみようか」


思わずグラスを割ってしまったというのに、穏便に済ませてくれたドモンへのお礼のつもり。


「球の弾き方から釘の見方まで全部教えるよ。ほら、この台なんかはこの釘が・・・」

「ほうほう」「フムフム。じゃあこっちの台の方が良さげだな」

「うん、そっちは列が揃いやすいだろうな。まあ駄目なら違う台に移ればいいさ」

「俺はこの台だ」「じゃあほら、銅貨10枚」


すっかり和やかな雰囲気になり、皆ホッと一安心。

だがドモンがこのふたりを連れて行った先は天国ではなく、沼だ。

必ずこの世界に引きずり込んでみせる。


「これは・・・この端の穴に入れば良いってことか?」

「そうだな。少し強めに狙うといいよ。強すぎると跳ね返ってしまうけど」

「よし行け!そら・・・来た!入ったぞ!これで良いのか??」

「ああ、おめでとう。これで景品ひとつか、銅貨25枚が貰えるぞ。それに残りふたつの球でここにも入れば、二列揃って倍貰えるぜ?」

「おお!本当に儲けちまった!」「お前すげぇじゃねぇかよ!」


酒を一口飲んじゃあっちとおしゃべり、一口飲んじゃこっちとおしゃべり。たまにボールを一球飛ばすの繰り返し。

が、徐々に酒を飲むペースが少なくなり始め、口数も少なくなってきた。


「おいおい、俺もう銀貨五枚分くらい稼いでるぞ」「俺も三枚分は儲かってるぜ!」

「まいったなぁ、上手くなりすぎだよふたりともアハハ。今日の閉店は八時だから、それまでにジャンジャン稼ぐといいよ」

「こ、こうしちゃいられねぇ!もっと稼がねぇと!」「お、俺、姉貴達呼んでくるわ!」

「いってらっしゃ~い。是非お友達もお誘いくださいませ」


時間は午後六時過ぎ。

日も落ち辺りも暗くなる中、煌々と闇夜に光を放つスマートボール場。


「ちょっと!ちょっとドモン!こっち来て!!」

「どうした?ナナ」

「大赤字じゃないのよ!どうすんの!」

「いいんだよ今日は赤字で。今日赤字になった分、この先その何倍も儲かるんだから」


出資したのは実はこの街の貴族。

なのでドモンは痛くも痒くもない。

これも例のコンサルティングの仕事で、売上の2%を貰う約束をしている。

ただし一般の人達との契約とは違い、半年や一年契約などではなく、店が続く限り契約は続くことになっていた。


話を終えたドモンとナナが店内へ戻ると、客が十名ほどに増えていて、先程帰った親子連れも入店したところだった。

嬉しそうにサンが子供用のスマートボールに案内をし、遊び方の説明。

すぐにキャッキャと子供の嬌声が聞こえてきた。


「この子ったらさっき駄々をこねて大変だったの。どうしてもやりたいって」

「ウフフそうだったのですか。僕、楽しい?」

「うん!すっごく楽しいよ!!」


サンはそのまま子供用のスマートボールの案内係に。


「そ、揃ったよお姉ちゃん!」

「おめでとうございま~す!ではこちらの景品の中から、お好きなものをお一つお選びくださいませ」

「まあ!本当になんでもいいの?!このお野菜も??こっちのクッキーもいいのかしら?!」

「ちょっとママ!僕が選ぶんだから!!」

「何でもよろしいですよ~。僕、あと三球残ってるので、これであとここの穴に入ったら二列になってもう一個貰えますよ?」


サンはまた泣いていたが、今度は嬉し涙だ。

結局親子は銅貨40枚ほど使い、景品をふたつ持って帰った。金額的に考えるならば、少し得して帰った計算。

それよりなにより、ただただ楽しかった。


『食べてドキドキ、ハズレは地獄行き!ロシアンカステラは〇〇で!子供用も販売中~』

『♪たーぬーきこ~じぃ~はぁ~ぽんぽこシャンゼリゼ~』


軍艦マーチや歌の合間に宣伝が流れ、謎の商店街ソングも流れる。

こういった店は何かこうして音を流していないと、バネとボールのガシャンガシャンという音だけになり、工場の中のような雰囲気になってしまうのだ。

もうこの際なんでもいいやと、ドモンが知っている商店街ソングも適当に入れた。


結局この日やってきた客は、子供も含め二十名。

金貨二枚ほどの赤字。日本円にして20万円。

一人頭銀貨十枚ほど勝った計算で、皆ホクホク顔。


明日は午後三時オープン、閉店は午後九時となっている。


「本当の本当に大丈夫なんでしょうね?!」とナナ。貴族の人が怒って乗り込んでくるのではないかと心配。

「明日もきっと店は大赤字だぜイッヒッヒ」ドモンの用意する沼は浅くはない。深みへと引きずり込んでいく。



翌日、ナナやサン、オーガや女性従業員が目を疑うほどの光景。

開店まであと二時間もあるというのに、スマートボール場の前には大行列が出来上がっていた。


スマートボールの台は百台以上用意してあるが、どう見ても二百人以上が並んでいる。

よってすすきの祭の時のように、二時間入れ替え制とした。これで三百人は遊べる計算。


釘の調整はしていないので、昨日の調子なら金貨約2~30枚の赤字となる。日本円にして2~300万円。

ただし待ち時間の間でもお酒は買えるようにしたので、多少は取り戻せるかもしれない。


「今日は忙しくなるから頑張ってくれよな。給金も弾むからさ」

「任せといてよ!」「はい!」「あたし達も頑張るよ」


この日は出資者の貴族だけではなく、トッポもお忍びで様子を見に来る予定。

チィとミィも久々にやってくるので、エミィが張り切って料理をしていた。

スマートボール場だけではなくサウナ付きの大浴場も視察予定で、ドモンとシンシアが案内する手筈となっている。


「トッポもチィもミィも色々驚くだろうな。ここの変わりように」行列を見ながらドモンは相変わらず咥えタバコ。

「ワタクシですら驚いておりますもの。当然ですわ!」とシンシア。


だがドモンも想像していなかった事となり、逆にドモンとシンシアが驚かせられることになった。




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