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第404話

「ド、ドモン様!!何処へ行かれていたのですか!!」

「いやちょっとな。それよりもコソッと門を通してくれる?はい通行証」

「今はもうそれいいですからっ!」


王都への入口の門に車を近づけると、門番の方からぞろぞろと走ってやってきた。

まるで犯人が自首しに来た時の警察のように。


ギドの作った自動車は、電気自動車のようなものなので非常に静か。

おかげでほとんど住民達に気が付かれることはなく、ここまで来ることが出来た。


「とにかく早く!早くお城に行ってください!」

「皆様首を長くしてお待ちです!」

「寄り道はしないでください!本当にお願いしますから・・・」


車の中を確認した門番のひとりが、ナナとサン、そして本当にシンシアがいることを確認し、深い溜め息をついた。

本当のことも知っているが、これでは妙な噂が立つのも仕方ないだろうと。


「スケベなバーに寄ってからじゃ駄目かな?」

「ダメです!」「もう本当にお願いしますドモン様」「駄目よ!」「ウーッ!」

「冗談だってば、みんな」


このやり取りで、ドモンはもう嫌な予感がプンプン。

人通りの少ない道をノロノロと車を走らせる。


「ここでやっぱり逃げようかな?と俺が言って、ナナが駄目よ!なんて言うやり取りをして、最後は結局渋々城に行くと思うだろ?」

「ねぇ駄目よ!あんたちょっと!」ドモンの考えてることはすでにナナにはお見通し。先に釘を刺す。


「でもそこで本当に逃げちゃうのが俺なんだなイヒヒヒ」

「だめぇ!」

「ん・・・?グラ??」


急ハンドルを切り、元ぼったくりバーのある方への道に曲がった瞬間、グラと数名の騎士が待ち構えていた。

全ては義父の指示。ドモンの考えなど義父もすでにお見通しである。逆側には勇者達や別の騎士も配備。


「諦めろドモン。俺も一緒に叱られてやるから」とグラ。

「やっぱり怒られるんじゃねぇかよ!な~んかそんな気がしたんだよ!」

「仕方あるまい。戦争を終結させたのはお手柄だが、その他のことで城は大騒ぎだ。ドモンから詳しく説明もした方がいい」

「・・・・」


グラに車の運転を任せ、ようやくドモン達が王宮に帰還。

王宮の入り口には見覚えのある顔がズラリ。勇者達もひと足早く戻ってきていた。


こうなればもう先手必勝。白旗を上げるのは大得意。

車から降りるなり一直線にみんなのところに向かい、ドモンは草むらに土下座をした。

脚の障害で正座が出来ないので、相変わらず前転の失敗みたいな土下座だけれども。


「ごめんなさい!そんなつもりじゃなかったんだ!」

「ドモンよ・・・」最初に言葉を発したのは義父。

「ワタクシからも謝罪いたします。全てはワタクシやお父様が・・・それにワタクシ、ドモン様に拐われた訳ではございません!」「そうなのよ!」「はい!」ドモンのそばに寄り添う三人。

「???」「???」「???」「???」


そもそもドモン達は義父や他のみんなが、何に対して怒っているのかの真相を知らない。


「まったく何を言っておるのだ貴様らは・・・ハァ・・・」

「あ、なんかジジイも体調良くなったみたいで良かったね。シンシアを押し倒したのは確かに悪かったけど・・・でもまあ許」「最後は結婚も認めて頂けましたし」ドモンの言葉を遮り、余計な一言を足すシンシア。


「バカモン!!しかも結婚とはどういう事だ!!」

「イッテェェ!!!」


義父の大ゲンコツ炸裂。当然と言えば当然の結果。

様々なことを勝手に決めたことに対して確かに怒りはあったが、恐らくそれはきっとこの世界をより良くするのに必要だったのだと理解も示していて、とにかく一旦詳しい話を聞こうと思っていた。

それよりも一先ず、戦争を終結させたドモンに対し「大儀であった」と声をかけようとしていたのだ。


が、蓋を開けてみれば見当違いの言い訳を始めた挙げ句、よりによって隣国の姫と結婚まで決めてきたという・・・ドモンが決めたわけではないけれども。


王族達からするとあまりにもあり得ないこと。

ドモンにどんな地位を与えるかで相談をしていたくらいなのに、隣国にまんまと掻っ攫われた気分。

トッポ、そして特にローズは大ショック。


「こ、こうなれば、やはり明日にでもローズをドモン様に嫁がせるしかないのでは?」「ええ」とローズの父と母。

「私も異論はないわ!お父様お母様」と前向きなローズ。現在7歳。


「ダメダメダメ!サンですら憲兵さんこっちです!になりそうというか、実際、鞭打ちの刑食らってんだから」

「ではやはり私と養子縁組をするしかないようだな」と義父。

「嫌だって言ってんだろずっと。そんな事しなくてもこの国にいるよ。ただ向こうにもちょいちょい顔は出すことになるだろうけども・・・ギルやミユもいるし、立派な音楽隊も出来たし、何より」

「エビや魚の天ぷらね!あれは確かに最高だったわ」「お野菜の天ぷらもとても美味しいです」ドモンの言葉に続けたナナとサン。

「天ぷらって一体??」「な、何なのだそれは?エビや魚だと?!」


そこでドモンは向こうで何があったのかを詳しく説明した。

送った手紙には食べた物の話などは、一切書かれていなかったのだ。


「なるほど、それを流通させようと画策しておったのだな?それが例の会議につながると」

「そういう事だ。俺らからはギドが作ったこの車とか、あとオーガ達が育てているおいしい肉とかもあるだろ?」

「美味しいわよ~」「たくさんあります!」少し自慢気なチィとミィ。


「この自動車で冬も移動可能になったし、冷蔵庫もあるから、傷みやすい食材も運べるようになった。他の国にはもっと珍しい食材があるかもしれない。それを提供しあえる関係を作ろうというのが、その会議の狙いだよ」

「そういうことだったんですか!それは素晴らしい!納得がいきました」

「うむ。これはまた忙しくなりそうだ。大臣達を集めて会議をせねばならんな」


ドモンの説明に納得し、城に引き上げていくトッポや義父、そしてその他の一同。

タバコに火をつけ後ろを歩くドモン。


「ふぅ・・・どうやらなんとかウヤムヤにすることに成功したな・・・」

「はい・・・」


ドモンがシンシアの国の時とほぼ同じようなやり口で、誤魔化しきったことを悟ったサン。


これがドモンのやり方であり、自分ももしかしたらそんなドモンに騙されているのかもしれないとは思うけれども、それでもサンはドモンのことが好きで、何があってもそばにいようと思っている。

たとえいつかドモンが手痛いしっぺ返しを食らうことになったとしても・・・。




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