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第402話

数日後、ドモンは帰国の途についた。

エビや魚をしばらく堪能しようかと思っていたが、数名の侍女達とドモンが何度もスケベなことになりそうになり、ナナとシンシアが激怒。

このままでは危ないと、早めの帰国を決めさせられたのだ。


「なぜサンがドモン様の横ですの!」「そうよ!」

「お前らのどっちかを隣に座らせたら、座れなかった方がずっと文句を言うからだよ」

「ぐ・・・」「だって」


後部座席でブーブーと文句を垂れるナナとシンシア。


「ごめんなさい奥様、シンシア様・・・」助手席のサンはしょんぼりしたフリ。

「サンが悪いわけじゃないの。この泥棒猫が悪いのよ。どうしてまたあんたが乗ってるのよ」

「サン、『奥様とシンシア様』ではなく、『奥様とナナ様』ですわ」

「どうしてあんたが奥様になってんのよ!!」

「サン、ナナに『様』は不必要でした。訂正します」

「キィィィ!!」「フン!!」

「やめろやめろ!!いつまで喧嘩してんだよ!!」


アンゴルモア王国までの道中、ずっとやかましい後部座席。

帰り道は行きとは違い、戦争も終わったことでたくさんの旅人がいて、ドモン得意のお仕置きも、裸になって暖めあう仲直りの謎の儀式も出来ない。

おかげでサン以外全員ストレスは溜まる一方。


サンは、咥えタバコで車を運転するドモンの横顔を見て、何度もうっとり。

「ずっと着かなきゃいいのに」とボソッと呟いて、それとなくドモンにアピールをしたが「ずっと着かなかったらどんどん身体が臭くなるぞ」と身も蓋もない事を言われ、サンもへの字口。


旅をはじめて二日目の夜には、道を外れた森の中に車を停め、ギシギシと車を揺らしていた。

竜騎士のドラゴンに見守られながら。



本当にドラゴンはいたのだ。

ただ普段は山の奥深くで暮らしているらしく、人前に姿を見せることはない。

大きさも恐竜のような大きさではなく、象とキリンの間くらい。

翼を広げると流石に大きく見えるため、人の記憶の中ではドラゴンがものすごく大きいと錯覚されていたのかもしれない。


高い知能があるけれど、小説やゲームにあるように人の言葉を話すようなことはなく、普通の動物と一緒。

騎士が馬に乗るのと同じ様に、ただそれがドラゴンに変わっただけだ。


ただし馬のように簡単に乗ることは出来ない。

仲良くなるまでには、様々な行程と段階があるということだった。


そして色々な情報の中で、ドモンが一番驚いたのが『人を乗せて飛べない』ということだ。


余程軽い子供くらいなら運ぶことも可能だが、それ以上となるとバランスを崩す可能性が高いそうで、乗っている方に危険が及んでしまう。

なので移動はもっぱら徒歩。たまに翼を広げ大きくジャンプする程度。人を乗せると馬よりも少し遅い。単独ならば空を飛べるが、実はそれほど長距離は飛べない。


それでもドラゴンはドラゴン、戦えば滅法強いらしい。


なぜ『らしい』なのかは、前回出番があったのは百年近く前で、実際に戦っているのを見ていないからだ。

シンシアも初めて見たと言っていた。

力が強いのはわかる。火も吐く。皮膚も厚い。あとは誰かと戦い証明するのみである。



「御主人様も奥様も撫でてみてあげてくださ~い。ほら可愛いですよ~」


草むらで仰向けになり、急所であるという逆鱗をサンに触らせるドラゴン。

それに対し驚きを隠せない竜騎士。

竜騎士はドラゴンと一緒に護衛という名目でついてきた。実際はドモンが見たかっただけだが、気を使ってくれたのだ。


「そこまでの関係になるまで7~8年、幹部候補と呼ばれる特待生で早くて5年はかかるというのに・・・」

「サンは『おいで~』って言っただけみたいだけど・・・」咥えタバコでその様子を見るドモン。

「特に逆鱗を触れさせるだなんて、我々でも数年にひとり可能かどうかの話でして。絶対服従と命を捧げる覚悟を示しているのです」

「わ、私は怖くて近づけないわ。ドモンやってみてよ」ドモンの背中に隠れるナナ。冒険者なだけあって、怖い噂をたくさん知っていた。


ちなみに7~8年と言っても、余程の強さがなければ、初めの時点でドラゴンに拒否をされて終わりである。

一般の騎士、十数人相手でも勝てるくらいの強さがなければ、竜騎士候補にもなれないのだ。

その一般の騎士自体が、憲兵達が束になっても敵わないほど強いというのに。


それ故に、普段からドラゴンを必要とせずともその役割をしっかりとこなし、そのあまりの強さから、竜騎士自体が竜人なのではないか?と噂が立っていたのだ。


そんな竜騎士達が手懐けるのに7~8年かかるドラゴン。

その時点で全てが異常であり、サンがおいでの一言で服従させたのもまた異常なのだ。


「どれどれ、よしよし。ん?あれ?」

「ど、どうしたの?この子??」

「お、怯えているようですが・・・」


ドモンが近づくと大慌てで元の体勢に戻り、ドラゴンが頭を地面にめり込むほど下げ始めた。


「頭を撫ででくれってことかな?なんかガブッときそうで怖いな」

「だ、大丈夫だと思います御主人様。ね?ドラゴンさん?」


サンが手本に頭を撫でたので、ドモンも真似をするように頭を撫でてみた。

ナナはまだまだ警戒中で、いきなりガブリや火を吹かれたら怖いので、ドラゴンの遥か後ろの方に陣取った。シンシアも一緒。

そんなナナとシンシアがなにやら騒がしい。


「ヤダもうこの子ったら!!おもらしした!!」

「ドモン様、この竜が粗相をしてしまいましたわ・・・」

「えぇ?!そんな馬鹿な!!」驚く竜騎士。


竜騎士は大慌てで桶を用意し、ドラゴンの尿を採取し、そして頭を抱えた。


「ちょっと!そんなもの集めてどうするのよ!汚いわね!」逃げ回るナナ。

「・・・竜は滅多に排泄をしないというのもありますが、そもそも人前ですることはないのです」


「ドモンが怖かったのよきっと。かわいそうに」「うるせぇ」

「そ、それよりも、竜の尿はハイポーションの材料となるのですよ。それはそれは貴重どころの話ではないのでございます」


それも詳しく聞いたところ、尿数滴から金貨数枚で売られるハイポーション一本を作成可能だということだった。

もちろんその入手の難しさから、滅多に出回る品ではなく、各国の勇者パーティー同士での争奪戦となることもあるほど。


「コップ一杯の尿を採取出来たなら、十数年は遊んで暮らせるかと・・・」


桶に満杯のドラゴンの尿を抱えた竜騎士。

何なら地面にはその数倍の水たまりができている。


「だとしても、俺らはいらないから持って帰れよ。だっておしっこだもん」

「よ、よろしいのですか?!これだけあれば、一生遊んで暮らせますよ?!」

「じゃあ尚更いらねぇよ。瓶詰めにでもして早く持って帰んな。ここまで来たら俺らももう安全だし、俺もドラゴン見られて満足したしな」

「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!!」


こうしちゃいられないと道行く旅人達から容器をたくさん譲ってもらい、何十本もの容器に詰め替えたあと、ほくほく顔で城へと戻っていった。


瀕死の状態からも回復ができるハイポーション。

これにより数千人の命が救われることになるとは、ドモンも想像していなかった。

今回の戦争で怪我を負った者達へ、ドモンの名の下に無償で配られ、その結果奇跡的に死傷者を出すこと無く、戦争は終結したのだった。



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