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第394話

各楽器のリーダーと副リーダーがそれぞれ楽譜を持ち帰り、倉庫や教会、締め切った店の中で仲間と共に練習を繰り返す。

計画を知られ、演奏決行日前に止められる訳にはいかないので、分散しながら隠れて練習となるのは仕方ない。


本番はリハーサル無しでの、一発勝負での合奏となる。


「マーチ・・・行進曲だけに、王宮まで行進しながら演奏するのか?」

「そうなのですが、この曲は最後に取っておこうと思っています。なにせ出だしから衝撃的なものですから、陛下がこちらに注目してから演奏を開始しようかと」

「最後ってことは、それまでは別の曲を演奏するの?まあその辺は全部お任せだけど」

「ええ、この国に伝わる伝統的な行進曲を演奏して、油断させ興味を惹こうと考えているのです」


音楽に関しては、ギルはプロでドモンは素人。

口出しすることはない。


そもそもここまで来ても、ドモンはまだ半信半疑。

演奏の最中に弓やら石やらが飛んできて終わる未来しか想像できないが、答えは明日の本番で出る。



「あの者達は一体何をしているのだ」

「はっ!街外れにて馬車を停め、そこで待機している模様でございます!」

「何が目的なのだ・・・全ての人々を洗脳し、戦う準備をしておるのか?」

「そのような動きは見受けられませんが・・・」


約一週間、シンシアの父は心労で、トッポよりもゲッソリと痩せ落ちた。

いっそのこと、もう楽にして欲しいと願うことも。


そしてそれは兵士や騎士達も同じこと。

ドモン達と接触した刺客達からの情報により、部隊は内部分裂を起こし、大混乱に陥っていたのだ。


「陛下を裏切れと?!」

「陛下に従えば、姫は処刑されるのだぞ!」

「敵を信じろというのか」

「だからあの方は敵ではない!そして陛下も我々の敵ではない!なので戦う必要すらないんだ!」


そこら中でこのようなやり取りが繰り返され、もう何を信じればいいのやら。

統制が取れないとなれば、もう部隊としてはおしまいである。


とてつもなく大きな規模の学級崩壊。

勢いはもう完全にない。



「ねぇドモン、明日ギルさんは音楽隊の指揮を執るのでしょう?なんか自動車の屋根の上に立つって言ってた。で、私達はどうするの?」とナナ。

「その自動車の運転ではないですか?」と首を傾げたサン。

「いや、一応こうなったのは俺の責任だからな。運転は誰かに任せて先頭を歩くつもりだよ。そのための準備も済ませたし」


とある店の店主から受け取った木箱と木の棒をポンポンと叩いたドモン。

外に出るのは危険だと、ずっと留守番をさせられていたナナとサンにはさっぱり。


「まあとにかく私達はドモンと一緒よ。ね?サン」

「はい!逝く時は一緒です!」

「・・・・」「・・・・」

「???」


真剣な目をしたサンだったが、ドモンとナナは気まずい顔。

まだそれがよくわからないサンには、自分が何を言ってしまったのかを理解できず。

この日の夜、サンはふたりにたっぷりと体験・・・教育をしてもらい、自分の言った言葉の意味を理解することになった。大人への階段をまたひとつ。大人だけれども。



計画の決行日の朝。

ドモン達も慌ただしく準備を進めていたが、噂を聞きつけた王宮の方でも慌ただしく準備が進められていた。


シンシアの父は数十年ぶりに軍服を着て、自ら指揮を取り、ドモン達を迎え撃つ覚悟。


「奴らは正面から突破を図るつもりなのか?」

「恐らくは・・・」

「そんな馬鹿な!」

「しかし一斉攻撃にも耐えうる乗り物が・・・」

「兵の八割を正面に、残りを後方に配置して陛下を守れ!」


宣戦布告はしたが、まさか戦場がこの場所になるとは想像もしていなかったシンシアの父。

大臣らや騎士団長が王宮内を走り回る。

同盟国に援軍も求めたが、なぜか各国とも大勢の魔物達への対処に追われているらしく、どの国の兵も来ることはなかった。



「トッポ・・・アンゴルモア国王に手紙は届けたんだよな?」

「それは間違いなく」とドモンに答えたこの国の郵便屋。すでに篭絡済み。


「援軍を呼んだの?勇者パーティーやチィやミィも来てくれると心強いね」

「いやぁ逆だよ。絶対に誰も来るなって書いといた」

「えぇ?!ど、どうしてよ??」

「戦うつもりはないからな。勝つつもりもないし」


ナナにそう言ったドモンは、久々に自分の服に着替えた。

この世界に来た時に着ていたあの黒い服。


左の襟は、若者達から暴行を受けた時の血が滲んだまま。

サンと出会った時にタバコの火を高々と弾いたが、その火の粉が襟にくっついてしまい、少しだけ穴も開いている。

ドモンが「サンと出会った時の思い出みたいなものだから気にしてないよ」と言いつつ、リビングで夜な夜な補修していたのをサンは知っていた。

もし今日も何かがあったならば、きっとそれもまたこの服に刻まれるのだろうとサンは思う。


「御主人様、そろそろ行くのですか?サンも横に並んで一緒にイキます」

「サン、あなたわざとでしょう?今夜もまた私達に教えて欲しいの?」サンの言葉にヤレヤレとしたナナ。

「はい!今夜もサンをたっぷりとイジメてください!辱めてください!うぅぅ・・・」

「・・・ああ、そうだな」「・・・ええ、そうね」


サンをギュッと抱きしめたナナ。ドモンはサンの頭をポンポンと撫でた。

そんなサンだったが、今回は命にかえてもドモンを守ろうと決意していた。

あの時のドモンは、本当に命と引き換えに守ったのだから。ドモンはきっと平気だとは言っていたけれども。


「じゃあそろそろ行こうか」


昼食後、いよいよ出発。

全員に反対をされたがドモンが先頭。その左にはナナ、右にサン。後ろには護衛代わりの屈強な男が二名。


更にその後ろをギルの友人の冒険者が運転する自動車が走り、その屋根の上には指揮棒を持ったギル、助手席にはミユ。

自動車の後ろには十数名の音楽隊を買って出た住人達が、楽器を持ったままついて歩く。


タラタタタ、タラタタタ・・・と小気味好い太鼓の音を響かせて、ドモン達の行進が始まった。







ちょっとした理由で腱鞘炎になり、文章が短めになったり更新が遅れるかもしれません。

なんか変な前書き見た人は必ず忘れるように。



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