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第384話

「ちょっとあんた達なにやってんのよ!!」

「それにどうして私達のあの時の音がドモン様の道具に入ってんの!!」


来るなり怒り出したナナとチィであったが、怒るのも無理はない。

結局このふたりも、五千人にあの時の下品な音を聞かれてしまったのだから。


たまたま役には立ったが、そもそも録音するのがおかしい。

自身もそれで吐いていたのにだ。そうさせたのはドモンではない『何か』だが、実際に行動を起こしたのはドモン。自身の中で行われた変態紳士達による謎の紳士協定が結ばれた結果。


「イタズラで誰かに聞かせようと思って・・・」

「誰かってみんなに聞かれたじゃない!!」「そうよ!!」

「ちゃんとさっきのシンシアのも録ってあるよ」

「だからあれは私達の音なんでしょ??・・・え?どういうことなの???」


シンシアがまた真っ赤な顔になってドモンに抱きつき、ナナに引っ剥がされた。

そしてサンとミィもここに駆けつけたあと、舞台上で何があったのかをすべて説明。


「そ、それは気の毒に・・・このバカのせいで」

「イタッ!!」


スパーンと良い音でナナに頭を叩かれたドモン。

シンシアはドモンの横にくっついて並び、ドモンの顔を見つめて「もう別に良いのですのよ」とニコニコ。

録音されていたことにもまるで動じておらず、「ドモン様ったら・・・」と顔を赤く染めるのみ。


「御主人様に無理やり・・・」「お客様方の目の前で本当に・・・」

「えぇ、とても恥ずかしかったのですわフフ」


「酷い辱めを」「受けただなんて・・・」

「ワタクシ、ドモン様がいなければ死んでしまおうと思っていたのよ。あなた達にはわからないでしょう?死を覚悟するほどの屈辱と羞恥を。ねぇドモン様?」

「ウーッ!!」「ウーッ!!」


衝撃を受けたサンとミィに、何故か上から目線で自慢をしたシンシア。

舞台上でどんな会話をしていたのかとシンシアはしつこく迫られ、「もし本当に聴けるのであれば、聴かせてあげてはくれませんか?」とドモンに願い、片耳ずつイヤホンをつけたサンとミィがその時の音声データを聴くことになった。


「こ、こんなことが・・・」「嘘ですぅ!!」


涙目でドモンにイヤホンを返し、シンシアを睨みつけたふたり。

「ワタクシ、今ここでしろとドモン様に命令されたら、もう逆らえませんの・・・ホホホ」と、やはりシンシアは自慢げな表情でふたりを見てから、またドモンの腕に絡みついた。今度はチィがそれを引き剥がす。


なにかとんでもないことになり始めたと、ドモンはちょっぴり後悔しながら遠い目。


「と・に・か・くっ!!ドモンもあなたもちょっと来てもらうわよ!」とナナ。

「ワタクシはまだ汚れておりますから・・・ドモン様、汚れを落としてもよろしいでしょうか?このままの方が良ければそういたしますが・・・ああ、なんて惨めなのワタクシったら」伏し目がちな上目遣いで、甘えるようにうっとりとドモンを見つめたシンシア。

「馬鹿!洗ってこい洗ってこい!」暗示が全く解けていないことに焦るドモンと、地団駄を踏むサンとミィ。


しかしこれは暗示でも洗脳でもなく、衝撃体験でのトラウマが、シンシアの元々持っていた被虐願望を引き出してしまっただけであった。


つまりはサンと同じ。

サンは両親がいなかったことによる『躾をされたい願望』が、ドモンの尻叩きのイタズラによって引き出され、いつしかそれが被虐願望へと変わった。

サンのコピーのような存在であるミィも同じ。


難しく書いたが、要するにみんなドモンに好き勝手されて『イヤイヤ』と『ごめんなさい』をして喜びたいだけ。

粗相をして主人に叱られた子犬が、叱られている最中だというのに尻尾を振って喜んでしまうのと似ている。


シンシアはドモンに洗って欲しいと懇願したが、全員が即座に却下し、サンとミィが水浴びさせに連れていった。



「フゥ・・・ところで他のみんなは?」ドモンはため息交じり。

「貴賓室のそばの大きな部屋で待機しているわよ。ねぇそういえば斬られた背中って大丈夫なの?見せてみて」

「背中だから俺も見えないんだけど・・・」


その場でドモンが上着を脱ぐと、ナナとチィは絶句した。

身体が斜めに真っ二つにされたのではないかと言うほどの傷跡が残っていたからだ。

スケベなことや冗談を言っている場合ではない。


血は止まり、真っ黒なかさぶたとなって傷口を塞いでいたが、そのかさぶた自体の幅が1~2センチほど。

それが右肩から背中を通り、左の腰付近まであった。


「ドモン・・・またこんな怪我をしちゃって・・・」ナナもチィも卒倒しそうなところを必死に堪えた。

「き、傷跡はデカいのか?やっぱり??」自分で擦ってみたドモン。


「大きいなんてものじゃないわよドモン様・・・ハァ・・・」怪我のしにくい丈夫なオーガには到底信じられないほどの大きさの傷。

「火傷の時くらいドモンがボロボロになっちゃった・・・うびぃぃぃ」ナナは堪えきれなかった。


「いやそれが、なんかちょっと今回の傷は違うんだよ。まあ痛いには痛いんだけど、斬られる前から平気だとわかったというか、すぐに治る引っかき傷程度にしか思えなかったというか・・・」

「・・・・」「・・・・」

「だから多分すぐに治ると思うから安心してくれ」

「え、えぇ」「そ、そうね」


様子がおかしいナナとチィの顔を交互に見たドモン。

「なにか知ってるのか?」と問いただすも、うまい具合にはぐらかされ、ドモンは首を傾げる。



しばらくするとシンシアがサンとミィを後ろに引き連れ戻ってきた。

シンシアは黒のエレガントなドレスに着替え、また当然のようにドモンの真横へ。


「ご、御主人様!シンシア様はとても汚れていました!身体もドレスも!」と何故か涙目のサン。

「そそ、そうです!本当にひどい臭いでしたので、完全にニオイは取れていないと思います!!」ミィも何故か涙目。


このふたりにしては珍しく失礼な物言いだけれども、シンシアはどこ吹く風でニコっと笑っていて、ドモンも「まあこいつはいいんだよ」と気にも留めず。

勝ち誇った顔のシンシアと、悔しげな表情を見せたサンとミィ。どうやら何かの賭けをしていたらしいが、ドモンにはさっぱり。


頬を膨らませたサンとミィの頭を撫で、ドモン達は皆が待つ大部屋へと到着したが、部屋の中は異常なほど緊張感が漂っており、重苦しい空気の中、全員うつむき加減で黙ったまま椅子に座っていた。




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