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第383話

閲覧注意。人が死んだりはしないけれども。

『何か』のせいで、特に今回のドモンは酷い。



お互いにカステラを食べ合いながら、残りは二個となった。

なので最後はふたり同時にカステラを食べ、ドモンが「ウゲェェ!!」と吐き出し勝負はついた。


シンシアの勝ちだが、当然ドモンはカラシ入りのものなど食べてはいない。


はじめからハズレは、薬草入りのひとつのみである。入っていたのは薬草だけではないが。

十個のうちのセーフの五個を、ドモンが自分の袖に入れておき、袋から取り出すふりをしながら食べていただけだ。

カラシ入りのハズレを引いたと吐き出していたのは、全て演技。


つまり、シンシアが必ずハズレを引くようにドモンによって仕組まれていたのだ。

シンシアがハズレを引いたあとは、残りを袖から袋へとこっそり戻していた。


ドモンの合図で客席の照明が消え、舞台上のシンシアひとりに照明が向けられる。

「勝者!シンシア姫!」とドモンが宣言し、皆から拍手を送られたシンシアだったが、その額には大量の汗が滲んでいた。



「ドモン様・・・あの早く幕を・・・く・・・」

「いやいやシンシア、勝者の宣言をしないと。みんな待ってるぜ?それに最後の挨拶も」

「お願い・・・お腹がもう・・・うぅぅ」

「ありゃ?薬草が効いたかな?ちょっと三倍入れただけなんだけどな」


効いたのは薬草ではない。下剤である。


異世界の人々に、激しく効果のある下剤。

ナナは「トイレで飲まないと間に合わないわよ、とてもじゃないけど」と言っていた。それほどの効き目。


「ねぇお願いドモン様!お手洗いに・・・」

「舞台が終わるまで鍵をかけろと言ったから無理だよ。最初に言っただろ?逃げられないし助けも呼べないって」

「で、出てしまいます!ねぇ!お願いいたします!!ねぇドモン様!!あ・・・」


ブッ!という音を拡声器が拾う。

五千人の耳に届いた、シンシアのオナラの音。もちろん本人にも聞こえている。


授業中のクラスや満員電車、エレベーターの中でオナラを漏らしたどころの話ではない。

舞台上でスポットライトを浴び、五千人が見つめる中で、拡声器を向けられた状態でオナラを漏らしたのだ。地獄の生き恥。


あまりの羞恥に失神して白目を剥きそうになったが、力を抜けば全て出てしまうほどの便意に、意識を強引に戻された。


「おや?オナラが漏れてしまったのか?お姫様」

「ちちち違いますわ!!」


そうだと認めてしまえばまだ楽だったような気もしたけれど、もうシンシアにはよくわからない。

とにかくこれ以上は漏らせない・・・はずだった。


ブッ!プゥ~・・!!


「あ!あ!あ!ねえお願い!!もう出てしまうの!!鍵を!鍵を開けてちょうだい!あ!あ!」下着が無事だったのかどうか、確認しなければわからない。

「そんな事を言われてもねぇ・・・」のんびりとドアの方をドモンが確認しに行く。


もうオナラはバレてしまっても構わない。

舞台上で大きい方を漏らし、撒き散らすよりはずっとマシ。

お尻とお腹を押さえながら、足踏みするように跳ねて堪えるシンシア。


きっとトイレはもう間に合わない。ならば客達からせめて見えないところへ・・・。

だけどドモンは「あーやっぱり駄目だ」とヤレヤレのポーズ。何が駄目なのか。


「ねえ!出る出る出ちゃう!漏らしてしまうわ!!あーもうダメよ!無理無理!!」

「じゃあほら、このバケツはトイレ代わりに使っていいものだから・・・いや、やはりお姫様には使わせられないか。やめておこう」

「それでいいわ!!お願いもう無理なの!!!」


バケツをドモンの手からひったくるように奪い、下着を下ろしてその上にしゃがみ込んだシンシア。すでに歩く余裕はない。

幸いドレスの長いスカートで、バケツが直接見えていないのだけが救いであったが、ドモンはしっかりと拡声器をお尻に向けて、音量を最大にしていた。


舞台のど真ん中でスポットライトを浴びながら、耳を塞ぎたくなるような音を出し続けたシンシア。

人間終了。人としての尊厳はもう・・・ない。



客達の怒号とキャーという叫び声。

あっという間の出来事に、呆気に取られた王族達。

恍惚とした表情で舞台を見つめるサンとミィ。


シンシアは舞台の中央でしゃがんだまま「アハハハ」と笑い泣いた。

もう我慢するのは止めて、全てスッキリしてしまおうと下腹部に力を込め、更に大きく下品な音を響かせる。


「すごい臭いだなシンシア・・・ようこそ地獄へ」シンシアの耳元でそっと囁いたドモン。

「もう終わりよ・・・私・・・ん!ああ、こっちも出てしまいましたわフフフ」バケツがジョロジョロと音を鳴らす。


夢であって欲しいと願ったが、ドモンが耳元で囁いたことで、シンシアは現実に引き戻された。

客席の照明がつき、シンシアから皆の驚いた顔が見える。

全員の視線が自分に集まっていたことで、シンシアはまた、地獄の底まで突き落とされた。


ここでドモンは拡声器のスイッチを一度切った。


「フフフ・・・どうやって死んだらいいのかしら?」

「救ってほしいか?」

「この状況から?どうやって?異世界の魔法か道具で、全員の記憶でも消せるとでもいうの?アハハハ!!はじめからこうするつもりだったのね。それなのに私、あなたのこと・・・うぅぅぅ」


「気の強い女はこれ以上いらねぇんだけど、俺のものになるなら助けてやるよ。そうじゃなければお前は死ぬまで愛称が『うんこ姫』になる」

「・・・た、助けてください・・・ドモン様・・・グス」

「じゃあ、合図をしたら立ち上がって思いっきり明るく振る舞え。いいな?バケツの中身は見せるなよ?全てが嘘になる異世界の魔法の言葉を唱えてやるから」


少しのやり取りをした後、もう一度拡声器のスイッチを入れ、テーブルの後ろから最初に用意していた板を上に大きく掲げて、その魔法の言葉をドモンが叫んだ。



「♪テッテレー」



ドッキリと書かれた板を持ちながら、ドモンはそう叫んだが、残念ながらまるで通じなかった。

これはもう詳しく説明する他ない。


「はい!お静かにお静かに!!これらは俺とシンシアとで仕組んだイタズラだったんだ」

「そ、そうよ!!」

「・・・・」「・・・・」「・・・・」「・・・・」


皆、あれだけの音を出しておいて、そんな訳はないだろうという顔。


「俺が異世界からやってきたと知ってる人も多いと思うけど、これは異世界のスマホという道具だ。で、みんなに聴かせたのは、実はこの道具から出ていた音だったんだ」

「えー!!」「そんなことが?!」「それにしても汚えよ・・・」


ドモンが説明するも、もっともな意見も頂戴してしまった。

拡声器の前でドモンがスマホの再生ボタンをちょんと押すと、ゲップ混じりの下品な音が場内に響き渡り、「わかったからもう止めてくれぇ~!」という悲痛な叫び声が起きる。


下品な音の最後には「ナナ出たぁ?」「チィもすっごい出てたわね」という会話が薄っすらと入っていたので、慌てて消すドモン。

音の途中から色々と身に覚えがあったナナとチィだけがそれに気がつき、真っ赤な顔をしながら大激怒して、ふたりで貴賓室を飛び出していった。


「俺の世界では『ドッキリ』というショーがあったんだ。こうやってイタズラをする演出で、みんなの心臓をドッキリさせるものだよ。ドッキリしたかい?アッハッハ」「ウフフフ!」ドモンの横で笑うシンシア。


「勘弁してくれよー!」「本当かと思ってしまったわ!」「心臓に悪いわぃ!!」

「それではおまけのショーも終わりで、今日の演目はこれにて全て終了です!最後にこんな恥ずかしい役を引き受け、協力してくれたシンシア姫に盛大なる拍手を!」


最後は結局これらのことも喜ばれ、ワァァァァ!と大歓声が起こる中、幕は下りた。安心してその場に崩れ落ちるシンシア。

汚物の入ったバケツをドッキリの看板で蓋をし、シンシアを抱えあげて、ドモンは舞台袖へとはけた。


「助けるのは一回こっきり。次はねぇぞシンシア」

「はい・・・」

「ま、その内お前の父親にも挨拶に行かねぇとな。しっかりと伝えておけよ?くれぐれも宜しくとドモンが言っていたと・・・」

「だ、大歓迎いたしますわ!!」


ドモンは自分の命を狙ったその国の国王、つまりシンシアの父親を牽制したつもりだったが、シンシアはなにかを盛大に勘違い。

飛びつくようにドモンの首に腕を回し、これ以上はないというくらい熱い口づけを交わした。


ドモンがバケツを置いて抱きしめ返そうとした時、後ろから聞き覚えのある「グギギギギ・・・」という歯ぎしりが聞こえたので、そーっとドモンは手を戻して、直立不動の体勢となった。




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