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第377話

歌い終わるとやはりここでも万雷の拍手。

想像していたよりもずっと客達に受け入れられ、いつまで経っても拍手は鳴り止まない。

王族のひとりであるローズの父親が舞台上に姿を現したことで、ようやく拍手は収まった。


客達に自分が登壇した理由を少し述べたあと「まずはナナとサンから、それぞれ自己紹介を頼む」と振り向いたローズの父。


「ナナです、宜しくね!」

「あ、あ、あの・・・サ、サンです・・・」


拡声器を使って自己紹介。

すぐに「ナナ様ー!」「サンちゃ~ん!!」と声が飛んで、まるでアイドルのコンサートのよう。


続いてチィとミィも自己紹介。

ただしこちらはオーガだということも説明したため、ナナ達の時と同じような気軽な声援ではなく、ざわざわとした様子。

エミィ達は関係者席である最前列でソワソワ。


そんな関係者席からひとり、勇者が舞台上へ飛び乗った。


「あーあー。聞こえているかな?アーサーだ。拡声器を使うのは初めてなので、不慣れなことは許して欲しい」

「勇者様?!」「本物なの???」


突然のサプライズに観客達からは驚きの声。

ローズの父親から「任せてよいか?」と小声で語りかけられ、アーサーは親指を立ててみせた。


「もう知っている人、まだ知らない人もいると思うけど、オーガが我々の頼もしい仲間となった。うーん、それもなにか違うな・・・」

「・・・・」「・・・・」「・・・・」勇者の話を真剣に聞く観客達。やはり王と同じくらいカリスマ性がある。


「友達というのもなにか違う。まあこのチィとミィはもう友達なんだけど、まだ友達になっていないオーガだっているからなぁ・・・うーん」


場内がまたざわつき始めた。

当然のように『チィとミィは友達』と勇者が宣言したことに皆驚いている。


勇者はうまく言葉をまとめておくべきだったと少し後悔。


「同じ言葉を話すし、同じように暮らしている。力は人間よりも強いけれど、あとは俺達と何ら変わらないんだ。見ての通り、こうやって一緒に楽しく歌を歌ったり、それに感動して拍手を送ったりもして」

「・・・・」「・・・・」「・・・・」


また静かになった。

エミィはもう泣いている。


「オーガでも優しい者もいれば、もしかしたら酒癖の悪い者もいるかもしれない。あの力で暴れるのは勘弁してほしいけどね。ミレイもだぞ」

「アハハ」「俺らだって一緒だよ」「あんたもよ!あんたも!」「耳が痛いよ・・・」


客達はもう和やかなムード。勇者が言わんとしていることくらい、すでにわかっている。

突然引き合いに出されたミレイが立ち上がって「あとで覚えてな!もう!」と勇者を指差し、ゲラゲラと笑われた。


「人間と変わらないというより同じ人間だ。生まれた場所や種族、皮膚の色が少し違うだけで」勇者は少し語気に力を込めた。

「うぅ・・・」「うぅぅぅ」


今度はチィとミィが顔を両手で覆い泣き出し、ナナとサンが「大丈夫よ」「大丈夫です」と慰めている。

ひとりふたりと立ち上がる客。そして勇者へ、チィやミィへと拍手を送る。


「一番に戦ってきた俺が言うことではないのだけれども、俺もある人にそれを教えられたんだ」

「・・・・」貴賓席だというのにタバコに火をつけ、ドモンは義父に大いに怒られた。使用人が慌てて灰皿を用意。


「もう魔物だなんだと差別するのはやめよう。共に歩み、共に未来を作ろう。俺達は変われるはずだ。そしてこの国を変えよう!この世界を変えよう!」


勇者の言葉に全員が立ち上がる。シンシアと宰相と竜騎士達を除いて。


「その証として、このふたり、チィとミィが国王陛下の身辺を護るロイヤルガーディアンズとして任命された。今回の舞台はそれを知らせる意図もあったんだ。さあチィとミィ、あらためて自己紹介を」

「あのあのあの・・・この度大役を仰せつかりましたミィです。皆様、よろしくお願いいたします!頑張りますので!」


右へ左へとぺこぺこ頭を下げるミィ。

その度にバニーちゃんの耳がペコペコと一緒にお辞儀をし、とても可愛い。

サンと抱き合いながら「きちんと出来たね!」「うん!」という声が拡声器に拾われ、皆優しい笑顔で拍手を送った。


「さっきも言ったけど私はチィよ。私も一緒にあの人を護ることになったの。言っとくけど私とっても強いんだから!トッポ・・王様に意地悪したり、私達にスケベなことしようとしたら思いっきり引っ叩くからね!」


「そんな乱暴なこと言っちゃ駄目よ」とナナ。

「ナナにだけは言われたくはないわよ。聞いたわよ貴族の頭叩いたって」「うるさいわね!あんたなんて王様を呼び捨てにしてるじゃないのよ!」

「ナナは王様に説教したって聞いたわ!」「あんたは護衛の事より食べ物の心配してたって聞いたわよ!」

「何よスケベおっぱいのくせに!!さっきだってドモン様とスケベして!!」「はぁ?スケベはあんたでしょ?!温泉でドモンにひぃひぃ言わされて喜んでたくせに!!」

「キィィィィ!!」「キィィィィ!!」


拡声器の前でとんでもない言い争いを始めたナナとチィ。

軽く巻き込まれ事故にあったトッポと、正面衝突の大事故を起こされたドモン。


「ヤメなさいふたりとも!もうぅ!」と舞台の下からエミィがプンプンと怒り、ようやく収拾がついた。

巻き込まれずに済み、ホッとしたサンとミィ、そしてミユとギル。


結局エミィと兄の青オーガまで舞台に何故か上がることになり、ナナとチィを超えるメリハリボディーに皆の目は釘付け。

歌も何も歌っていないというのに、全ての視線をかっさらっていった。おっぱいは世界を救う。



「本当に下品で気持ち悪い。民の考えもあの格好も。魔物に媚び売って気持ち悪いったらないですわね」

「茶番ですな。何もかもが」


そんなシンシアと宰相の会話を、ドモンが招待した夫婦が少しイライラとしながら聞いていた。

まあまあとドモンが落ち着かせながら着席させたが、真紅のドレスを着たミユがギルに連れられ現れたことで、すぐにまた立ち上がることになった。




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