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第356話

「さあ女ども!俺の前に跪け!優秀なる俺の子種を・・・ん?」

「あれ?よく見たら随分と女の人が多いわね・・・」


外でキャーキャーと騒いでいる人々の大半は女性であり、ドモンがここぞとばかりに前に出たが誰も見向きもせず。

ナナもこれはなにか違うとすぐに引っ込んだ。


「ギルバート様ぁ!!」「きゃあああ!!!」「こっち向いてぇぇぇ!!」


その叫び声を聞き、ドモンとナナが目を見合わせた。と同時にギルの方へと振り向くと、ギルは困った顔をしながら頭をポリポリと掻いている。


「どいておじさん!うわ!こっちを見ないでよバッチイ」

「色仕掛けするのは反則よ!変態痴女!!なんなのあのおっぱい」

「なによあの子!!眠ったフリをしてギルバート様に寄り掛かるなんて!」


ギルは困った顔のまま「やはりこうなってしまいましたか」と呟いた。


「皆さん静かにしてください。今は師匠との貴重な時間を・・・」

「きゃあああ!!」「ギルバート様がしゃべったぁぁぁ!!」「結婚してぇぇ!!」


ギルが何を言ってももうメチャクチャ。

その騒ぎに更に人が集まってしまう始末。

どこかの男前しかいない芸能事務所のタレントが、変装もしないで竹下通りを散歩したかのよう。


店のおかみさんや他の客達が何を言っても聞く耳を持たず、当然ドモンの言う事など聞こえてはいない。

ただただ嬌声をあげ続けるのみ。


「おーよぉく分かった!クソが!ほらギルこれを食え!」

「んっ!んぐっ!し、師匠何をするのですか?!ペッペッペ・・・」


座った目をしているドモンが、例のキノコをギルの口の中へ。


「ほらギル!手を出しなさい!ほぉら、大きくて柔らかいおっぱい」

「え?ちょ!ちょっとナナさん!!あぁなんて触り心地・・・」


座った目のナナがドモンの悪巧みを理解し、すぐさま助太刀。

ギルは頭がぼーっとして、妙な気分に。


「フゥ・・・御主人様の十倍くらいの大きさしかないです」

「ああサンさん!!そんなところを掴んではいけません!!」


サンも助太刀に参戦しつつ、激しくドモンを傷つけた。

「せ、せいぜい三倍くらいよ・・・」とナナがドモンを慰めたが、ただの追い打ちにすぎない。


そしてギルの子ギルが十分に元気になったところで、女性達がいる前に無理やり立たせ、ドモンがギルのズボンと下着をスポンと脱がせた。


「ぎ、ぎゃあああ!!」

「あああああ!!」「す、すてき・・・」「抱いてぇぇぇ!!」「ご立派よ!」


叫んでその場にしゃがみ込んだギルだったが、女性達の反応がまるで変わらないことにドモンは不満顔。

「もうあったまきた!」とドモンまでも脱ぎはじめ、下半身丸出しで女達の前に仁王立ち。

するとすぐにサンが、ドモンの子ドモンを借りてきたお盆で隠した。


嫌ァ!という叫び声と、クスクスという笑い声が混じり合う中、サンが「はいっ!」とお盆をひっくり返し、見事にお盆芸成功。

それが予想以上に面白かったらしく、パチパチと小さな拍手が起き、すっかり和やかな雰囲気に変わった。


今はとにかく食事中なのでゆっくりさせて欲しいとギルがお願いし、近々みんなの前で歌うことを約束して、解散させる事に成功した。



「ギルって人気者だったんだな。さすがは吟遊詩人」

「まあそれなりに顔は知られていますので」

「否定もしないってのがなんか腹がたつけど、それが事実だから仕方ないってところか」

「ハハハ」


有名人をひと目見て満足そうに帰っていく人々を、店の外で手を振り見送るドモンとギル。

そんな人々に向かって今がチャンスだとばかりに、いらっしゃいませ!いらっしゃいませ!の声が飛ぶ。


道の反対側からもいらっしゃいませー!と女性のきれいな声が響いていた。

商魂たくましいというか、随分と頑張っている様子にドモンも目を細める。

こんな騒がしさも今は心地よい。


だがそれらの騒がしさとは別な、叫び声のようなものが遠くから聞こえ、目の前にいる人々が逃げ出しはじめた。


「ん?何が起きたんだ??」

「向こうの方が何やら騒がしいですねぇ」


道の左側のずっと奥から、キャーという叫び声やらガシャンガシャンといった破壊音がし、それが徐々に大きくなってくる。


「あれは・・・馬車じゃねぇか?」目を細めるも、目が悪いドモンにははっきりと見えない。

「む!馬が暴れてるのでは??それに御者台に人が乗っていないように見えます」呑気なギルも一気に険しい顔に。


目の悪いドモンにもその状況が見えはじめ、そして絶句した。

二頭の馬が暴れて右へ左へと蛇行しながら、何人かの人を跳ね飛ばしていたのだ。


「ドモンどうしたの?!」と、ようやく異変に気がついたナナも外に飛び出し、サンも不安そうな顔でドモンの元へ。

「ふたりとも危ないから店の中に入ってろ!」


「あ・・暴れ馬?!ドモンねえ!そこの人!!」とナナが慌てて指差した方向には、先程きれいな声で客を呼び込みしていた女性が、不安そうな顔をしながらヨロヨロと道の真ん中を歩いていた。


「おい!危ないぞ!!暴れ馬だ!!店の中に入れ!!」


ドモンが大声を出すと、その女性は目を瞑ったままキョロキョロと辺りを見回し、助けを求めるように両手を前に出している。


残り百メートルほどに馬車が迫った時、蛇行していた荷台部分が横転し、派手に木片を撒き散らした。

その音に驚いたのか、馬はますます暴れるばかり。

更には倒れた馬車から摩擦熱により煙も上がっていて、今にも炎に包まれそうな雰囲気。


「た、たすけて!!」

「目が見えてねぇのか?!おいギル!!ナナ!!サン!!」


ドモンの脚ではもう間に合わない。機転を利かせる余裕もない。

ただ誰かにどうにかして欲しく、ドモンは三人の名前を叫んだ。


「私は女性を!!」


吟遊詩人の命とも言える楽器を放り投げ、ギルが道に飛び出し女性の元へ。

すぐに女性の元へと着いたものの、ドモンが予想したとおり目が不自由で走って逃げることもままならず、そしてギルの力では抱えて逃げることも出来なかった。


ギルは目を瞑り、ギュッと女性を抱きしめる。

助けることは出来なくても、見捨てるような真似をするつもりはない。


「ひひひ、火が出たわ!!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!」


摩擦熱で燃え上がるよりも早く、露天の調理場に倒れた馬車が突っ込み、馬車は一気に火だるま状態に。

それを見たナナは腰が抜けてしまい、道に座りながら水魔法を連呼した。

しかし蛇行する荷台部分に狙いは定まらず、ナナの魔法は一発だけしか当たらなかった。


ナナの魔法により驚き少しだけ速度を緩めたものの、暴れる馬達は炎から逃げようと、また加速をはじめた。




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