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第351話

「ド、ドモンさん!!ハァハァ間に合ってよかった・・・」

「ありゃ?見送りなんて良いのに」

「見送りもするつもりですけど違うんです。今、渡したいものがあるのです!」


そう言ってトッポが小さな袋を差し出した。


「何だこりゃ?」

「い、今出来たばかりなのですけどハァハァ・・・フゥ・・・」


小さな袋をドモンが開けると、中から赤く透明な四角い石のような物が出てきた。

大きさはキャラメルが入ったサイコロのあのお菓子を二つ重ねたくらいの大きさ。


「わ!きれいな石!なんなのこれ?」「とても綺麗ですぅ!」とナナとサンが覗き込む。

「んん?!これはもしや???」とギルも思わず目を見開いた。


「え?これってまさか・・・ルビーじゃねぇのか??」

「そうですそうです!よくご存知で!さすがはドモンさ・・・」

「バカ野郎!貰えるかこんなもん!しかもなんて大きさだよ!!」


大慌てで袋に戻したドモン。

ダイヤほど高くはないが、この大きさではいくらになるかわからない。

30カラットのルビーが十数億円で取引されたなんて話も聞いたことがあるが、この大きさだとそれどころの話ではない。


「良いのです。というより、ここに置いていかれても困ります」

「なんでだよ!」

「だってこれ、ドモンさんの名前の入った紋章が彫られちゃってますもん」

「は??」


慌ててもう一度袋から出し宝石を確認すると、王家の紋章の模様の中に反転文字でドモンと彫られているのが見えた。


「これはもしかして・・・」とサンも訝しげな顔。ナナにはさっぱりわからない。

「どうして俺の印章なんて作っちまったんだよ!バカ!大バカ国王!!」流石のドモンも顔が真っ青。

「友情の証です。国宝で作ってもらっちゃいました」

「もらっちゃいましたってお前・・・おおもう、なんてことを」


トッポの言葉に天を仰ぐドモン。



このやり取りがあった数時間前。昼食会を終えてすぐのこと。

トッポは他の王族達や大臣などを連れ、宝物庫に向かっていた。


「ほ、本気なのか?!」と義父。

「もちろんです。それこそ・・・僕が本気だと証明したいのだから」涙を浮かべつつ、真剣な顔で答えるトッポ。


「・・・国宝なのですぞ??」焦る宰相。

「分かっている。それがどういう意味かも」やはりトッポは真剣な目のまま。


「僕が・・・いや、私こそが示さねばならぬ。真の覚悟があるということを。心からあの方を大切に想っているということを!」

「・・・・」「・・・・」「・・・・」「・・・・」皆それに対して異論はない。


「私があの方に差し上げるのは宝などではない。私の、そして私達国民全てからの友情の証です。それにより得られる信用は、この国宝よりも遥かに重要なもの!!今すぐ彫刻職人を呼んで下さい!!」

「ははっ!」


トッポの言葉に護衛の騎士のひとりがすっ飛んでいく。

もちろんこの騎士も異論などない。

むしろ、万が一異論が出る前に飛び出した。ドモンと国王陛下の友情を守るために。




「バカバカ!俺なんてよく物を落とすんだから!酔って忘れてきちゃったり。それにサンならまだしも、ナナなんか絶対うっかり忘れて捨てちゃうぜ?」

「なんでよ!ちょっと間違って健康保険証捨てただけじゃない!」「アハハ」


「笑い事じゃねぇってば。それとナナ、これどのくらいの価値かわかってるのか?」

「わかるわよ!き、金貨50枚はするでしょうね・・・う~んもしかしたら100枚くらいするかも??」

「俺の世界の相場だと、恐らくだけど、これの半分の半分の半分で15億くらいだったから、単純計算で行くと120億プラス付加価値で150億だとしてええと・・・」

「いくらなのよ?」


「金貨15万枚」


「え?」「へ?」「はぁ?」驚くナナとサンとギル。

「アハハ、さすがはドモンさん、なかなか鋭いですね。でも宝石はそういった単純な計算ではなく、希少価値や色合いによっても価値が違うので・・・」

「・・・更に10倍はくだらないってとこか・・・」

「あ、でももうドモンさんの名前彫っちゃいましたのでそこまででは。アハハ」


ナナでも理解が出来た。今ドモンが手にしている物が、金貨150万枚の価値があるということを。

そしてなぜこんなにも拒んでいるのかということも。


「ごごごご御主人様、サンも無理です無理でしゅ!!」しっかり者のサンでも、これを持ち歩くなんて考えられない。

「これを持って歩ける人間なんていないでしょう。師匠のような悪魔でさえも躊躇するというのにゴニョゴニョ・・・」途中から言葉を濁したギルだったが、ドモンもそれには異論がない。


「ダメだやっぱり。百歩譲って俺が貰ったとしても、城の中に置いといてよ。失くしたり盗まれたりなんかしたら目も当てられないからさ」

「気にしないでください。その時はその時ですよ」

「気にするっての!!」

「僕にとってはそんなことよりも、ドモンさんに差し上げたという事実の方が、ずっとずっと大切なことなのです」

「・・・・」


当然、トッポが言わんとしたい事は、ドモンにもしっかりと伝わっている。

この友情が本物であり本気であるのだと示すためである。

だとしても、やりすぎだというのは間違いない。


「・・・で、もし貰ったとして、このハンコの効力はどうなってんだよ?」

「それは特にありません。ドモンさんも嫌がるでしょうから。せいぜい手紙が早く届くというくらいでしょうか?なにか必要なものがあったり、連携を取らなければならない時などに利用してください。僕宛にご連絡をいただけたら、僕がなるべくなんとかします。なので、たくさんお手紙くださいね?」

「それじゃ王家の印章とまるっきり同じじゃねーかよ!少し回りくどいだけで!」

「言われてみれば確かにそうですねアハハハ」


見送りにやってきた者達の前で、押し問答をすること一時間弱。

それにより、結局ドモンの所有物として中央宮殿の宝物庫で預かるということに決まり、代わりに大理石で作られた印章を持つことに決まった。



後にドモンが生涯使い続けたこの大理石の印章は、ルビーで出来た印章の数倍から数十倍の価値へと跳ね上がることになるのだけれども、当然今のドモンには知る由もなく、無造作に上着のポケットの中へとしまわれることになった。




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