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第346話

「ブランド化と差別化・・・ですか??」


ドモンの提案を全く理解できていない仕立て屋。


「そう。今の店はそのまま高級店として残しつつ、このメイド服やリボンとかは、新たに作る庶民向けの店で販売するんだ。なんなら本店と同じ服を売ったっていい。安くな」

「そ、それでは皆、そちらの安く売る店で買うのでは?」

「そこでブランド化が大切になってくるんだ」

「はぁ・・・」


全員が全く理解できない状況。


「王室御用達の店って、お前らにとって誇りだよな?」

「それはもちろん!」

「買う方にとってもそれは誇りなんだよ。金持ちにとっては」

「まあそれは確かに」


ドモンがタバコに火をつけると、侍女が慌てて灰皿を持って走ってきた。


「でもさ、いちいち言わなくちゃなかなかわからないじゃない?『このバッグはあの店で買ったものよ』とか『この服は高いんだぞ』って。でも言えないもんだよな?普通は」

「あからさまな自慢になってしまうと嫌味になってしまいますからね」

「でもそれを教えたいって人もいるんだよ。そこで重要なのがブランドマークとしてのロゴなんだ」

「ロゴ??」


この世界ではカタカナがあまり浸透してなく、ますます困惑する仕立て屋。


「郵便屋の印ってあるだろ?あれのように、お前の店の印を作り、それを全ての商品に入れていくんだ」

「へ???」

「印は何だっていい。他と一緒じゃなければ。創業者の名前の一文字を取ったっていいし、絵だっていい。それをデカデカと店の看板に掲げ、同じ印を商品に付ければ・・・」

「わ、私の店の商品だと一目瞭然というわけですか!理解できました!!」


ようやくその意図に気がついた仕立て屋。


「本当に良い物にはそのロゴを入れて本店で売り、庶民向けの品はロゴを入れずに庶民向けの店で売る。作ったはいいけどちょっぴり出来が悪くなって、店頭に並べられないものもあるだろ?」

「ええ!!もう7割がそのような状態で、廃棄したり作り直したりしていました!!」

「オシャレを楽しみたいけど、どうしてもお金がない奴だっているからな。そんな人に向けて売ればいい。ロゴはないけど格好は一緒なんだぜ?買いたい奴はたくさんいる」

「間違いありません!!いやこれはすごい!!」


ガリガリと音を立てながら必死にメモを取る仕立て屋。


「高級店とそうではない庶民向けの店との差別化をそうやってやりつつ、今度は他の庶民向けの店同士でも差別化を図るんだけど、そこで出てくるのが最初に言った・・・」

「このメイド服やリボンですね!!」

「そういうことだ」


ドモンの説明を聞き、仕立て屋にはもう成功する未来しか見えない。


「そして店の運営方法や他のデザインのメイド服、メイド服以外の服など、俺からの助言はまだまだあるんだけど・・・」

「だけど・・?」

「ここからは有料だ。というより、実は仕立て屋に協力してほしいことがあるんだよ。これからはこういった感じで経営の助言をして、『1年間、売上の2%の報酬を貰う』というような商売をしたいんだけれども、その見本となって欲しいんだ」

「了承いたしました。お任せください。私共の成功を持って、ドモン様とその商売の噂を広めれば宜しいのですね?」


「え?いいの?そんなあっさり・・・」頭を掻くドモン。

「私としては、その五倍を支払っても、まだ足りないだろうと思う程でございますよ」


交渉はすぐに成立した。



仕立て屋は思う。

一体どれだけこの人はお人好しなのだろうと。

店をそのまま渡してもいいと言った程、ドモンから恩を受けているのだから。


感謝の気持ちが上手く伝わっていないのではないかと心配になるほど。

もう無理にでも報酬を受け取ってもらうために、役員としてドモンの名前だけでも借りて、その報酬を支払おうかとも考えていたのだ。


なので今回のことはまさに渡りに船。


「い、いいのかな?実は俺、こういった商売したことないから、上手くいくか不安だったんだ」

「必ず成功するよう、誠心誠意勤め上げさせていただきます。絶対に失敗にはさせません!」


その後もドモンと仕立て屋が会話を続けたあと、試着を終えたナナのメイド服を持ち、仕立て屋達は大満足の顔で店へと戻っていった。

後日、完成した物を色街の宿舎に届けてもらえるように手配も済ませてある。



「目の前でやり取りを見て、ようやく私も納得がいったわ。仕立て屋さんが儲かればドモンも儲かるというわけね」とナナ。

「素晴らしいです奥様!!」とパチパチ拍手をしたサンと、これだけの会話を聞いていて、ようやくそこに辿り着いたナナに呆れるドモン。


「さあボス達とホーク達を見送ったら俺らも行こう。看板を掲げたり、帳簿つけたり出来る奴雇ったりしなくちゃならないからな。忙しくなるぞ」と珍しく張り切るドモン。

「出来ます私。字を書くのも得意ですし、計算も早い方です」とギルが手を挙げる。吟遊詩人なのに。


「どこかでいい人材が見つかればいいな。ギルドとかで募集できるのかな?」ギルを無視したドモン。

「ここにいます」「ここにもいます」ギルと一緒にトッポも手を挙げた。

「・・・・」


ギルはドモンについて行く気満々。


「銀貨56枚の2%は?」

「え?え?え?」「銀貨1枚と銅貨12枚です」


トッポ失格。ギル合格。

でも性格的にはギルは不合格。


「どう思う?」とこそこそ話を始めたドモン。ギルの目の前なので丸聞こえだが。

「サンは反対です!だって御主人様のことを最初あんな風にグス」


少し離れた場所で、猫耳で涙ぐむサンを幸せそうに愛でる子供ら。その隣では、ようやく目覚めたホクサイと一緒に、エイがサンの肖像画を描き始めた。

得意気なエイを見るに、軍配はエイに上がった様子。


「私も反対。頭の回転の速い男はずる賢いのよ。たまたまそういうおじさんをひとり知ってるの。異世界から来たんだけど」とナナ。

「そりゃ初耳だ。是非一度会ってみたいものだな。さぞかし男前で街の美女もほっとかないだろうから、みんなとズッポシスケベなことをしても致し方なしってところか」と頷くドモン。


ナナに引っ叩かれ、猫耳のサンに手をガブッとかじられながら、ドモンはギルに不採用を伝えた。




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