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第337話

「おぉ・・・流石に豪華だな。向こうも豪華だったけど。ほらナナ見てよ。あれも高そうな絵だ」

「私は初めてじゃないのよ。今朝、誰かさんのせいで何度も行ったり来たりしてるから」

「ご、ごめんなさい・・・」ナナの言葉にトッポはしょんぼり。


ドモンが興味深そうにキョロキョロとあちこちを見てナナに話しかけるも、ナナの反応が薄くドモンは残念。

自分がなんだかウオンを案内した時のナナのようだと気が付き、ちょっぴりこっ恥ずかしい。

侍女達は、国王陛下が先導して「こちらです」と案内をしているのを、驚きの表情で見ていた。


「ここが僕の仕事場のひとつと言いますか、いわゆる謁見の間というところですよ」と大きい立派な門のようなドアを指差すトッポ。護衛の騎士が左右にビシッと立っている。

「お?それはちょっと見たいかも!ゲームでちょっぴりのゴールドと木の棒くれる所だろ?」とドモンはウッキウキ。


「なんですかそれ??見たいのでしたら見てみます?」

「見る見る!やあ嬉しいなぁ」

「ドモンさんがそんなに喜んでくれるなんてウフフ」


トッポが目配せをすると、騎士達がドアを開ける。

中を覗くと、ドモンが想像していたよりも100倍豪華絢爛で、思わず「おー!!!」と大きな声で叫んでしまった。

本来ならば大変失礼な行為。


王室図書館よりも更に立派で荘厳な造りとなっており、左右には高い天井まで届く立派な柱が何本も立っている。

部屋は随分と縦長の作りで、ドアから玉座まで50メートル以上あり、部屋自体はやや薄暗い。

中央には赤い絨毯が玉座まで真っ直ぐと伸び、ズラリと並んだシャンデリアのようなライトによって照らされていた。


そしてその玉座も立派どころの話ではない。

黄金と宝石を誂えた椅子が数段上った階段の上にドンと鎮座し、まだ誰も座っていないというのに物凄い威圧感を放っている。


「これは凄いわね・・・歩いていいのかしら??」

「ナナ達もここは初めてだったか」

「うん、この部屋には入ってないよ」「はい」


ドモンとナナはキョロキョロ。サンもキョロキョロしたかったけれど、ドモンの使いの者として我慢した。

女ボスは「ヤ、ヤメた方がいいよ・・・」となぜか絨毯を踏むのを躊躇し、ズカズカと中に入っていくドモンらを止めている。

勇者パーティーの面々と仕立て屋達は入ったことがあった。


「皆さん遠慮せずにどうぞどうぞ」とトッポが案内。

「謁見ごっこやろうぜ。木の棒をくれ」と張り切るドモンと、「御主人様、これは『ごっこ』ではないですよ・・・」とやんわり注意するサン。


「じゃあドモンさん座ってください」

「!!!」「!!!」「!!!」「!!!」「!!!」トッポのあり得ない発言に驚愕する騎士や使用人達。


「やだよ王様役なんか。トッポが王様役やってよ」

「王様役を王様がやったら、もう王様じゃないですかそれ」

「いいから早く!俺はその辺で跪けばいいんだろ?」

「ダ、ダメですやはり!!ドモンさんを跪かせるだなんて、僕の気持ちが持ちませんよ!!無理です無理です・・・」


一体この人達は何というやり取りをしているのか?

国王陛下と一庶民の会話とは思えず、流石のナナですらどうかしていると思った。

たった一日で、こんなにもドモンが王様と仲良くなっていたことを誇りに思いつつ。


「お前が王様役やらないんだったら、ボスにまたあのお盆のやつをやってもらうことになるぞ?玉座の前で」

「やるわけ無いでしょ!!あんたバカじゃないの?!」「サンがやります」


ドモンの冗談に真っ赤な顔で激怒した女ボス・・・・と、ぼそっと小さく何かを言った赤い顔のサンだったが、皆なにも聞かなかったことにした。やはりイヤイヤするべきだったと、サンは人知れず反省。


「もう~嫌だなぁ・・・ここに座るといかにも偉そうで嫌なんですよ」

「実際偉いんだっつうの。ほら早く」


渋々トッポが玉座に座ったものの、服が庶民の服のままだったためあまり雰囲気が出ない。

が、一応ドモンの為を思い、肘掛けに手を乗せて胸を張り、それらしい雰囲気を演出してみせた。


ドモンもそれに合わせ、トッポの前へ跪く。左右にはナナとサンも。


「うぅぅ・・・今までで一番落ち着かないですよ・・・ああもう」

「バカ!ここは『よくぞ来たドモンよ。顔を上げろ』とかなんとか言えよ」

「えぇ?!よ、よくぞいらっしゃいましたドモンさん。早く顔を上げてください・・・」

「なんか違う!」


妙な謁見となってしまい、吹き出すナナとサン。


「じゃあこう言え。『おおドモン、勇者の血を引くものよ!魔王を倒し、この地に再び平和を取り戻すのだ!』みたいな感じで頼む」

「なんなんです?それさっきから・・・。では・・・おおドモンさん、勇者の血を引くものよ!魔王を倒し、この地に再び平和を取り戻してきてください」

「ははぁ!わかりました国王陛下!じゃ行ってくるわ。さあ行くぞナナ、サン」

「え?何言ってんのよ」「へ?!」「はぁ??」


トッポとのやり取りを終え、普通に出口へと向かい出したドモンに驚く一同。


「御主人様御主人様!じょ、冗談ですよね?」とサン。

「冗談じゃないよ?だって今王様にしっかり命令されただろ。ほらミレイも賢者も魔法使いのジジイも早く準備をしろよ?魔王のとこ行くぞ」

「駄目ですぅ!」「待ってください待ってください!!違います!違いますって!!」慌てるサンとトッポ。他は皆呆然としている。


「だって早くしないと冬になっちゃうだろ」とドモンはそれが当然とばかり。

「そそそう!そうです!冬になります!皆さん、今から行っても雪とか降っちゃいますよね?魔王の城まで行ったら」とミレイの方を見たトッポ。

「あ、ああ!今からは流石にあたいもおすすめ出来ないよ・・・うん」そう言いつつドモンから目をそらすミレイ。


「新型馬車なら大丈夫じゃないか?」まだ食い下がるドモン。

「馬が!そう!馬がきっと持たないです。ね?ね?」


みんなに同意を求めたトッポ。

つられるように皆もブンブンと縦に首を振った。


「チッ!さっさと行きたいんだけどなぁ」

「いやあんた、その魔王が物分かり良ければいいけど、悪かったらどうするつもりなのよ?」とナナも渋い顔。

「その時はその時だ。なんとかする」

「それでももう少し計画立ててからにしなさい!わかった?みんな困ってるじゃない」


ナナにまで説得され、渋々折れたドモンに皆はホッとした。

いくらドモンが平気だと言っていても、皆にとっては魔王は魔王であり、それなりの準備が必要と考えていた。心も物資も。

トッポはそれに加え、まだまだドモンと話したいことがあり、もっとここにいてもらいたいというのが本音。たくさんの時間を共有したいし、もっとドモンらに楽しんでいってもらいたい。それに慌てる必要性もわからなかった。



逆にドモンは焦っていた。

ギルドで確認した通り、自身の体の衰えは顕著で、自分がいつくたばるのかもわからない。

悪魔がどうのの話も早く知っておきたいし、どうにか出来るならさっさとどうにかしたい。


そして何より魔物達のこと。そして魔王本人も。


ドモンがもたもたすれば、それだけまた悲劇が起きる可能性が増える。

あのたまたま知り合ったゴブリン達だけではなく、他にもたくさんの者達が、未だ人間に怯え隠れ暮らしているのだ。


ドモンにとってそれを先延ばしすることは、泣いている子供がいることを知ったまま放置しているような気分であった。

だから慌てているのである。



謁見の間の出口に向かう絨毯の上を、寂しそうにトボトボと歩くドモン。


「そ、そういえば仕立て屋達が凄いドレスを作ってくれることになったんだ!仕上がるのを楽しみにしてて欲しい。髪も少し伸ばしてみようかなって・・・」

「ええ!お任せください!そして大変な土産物も受け取ることが出来ました!早速使用してみたところ・・・」


ミレイと仕立て屋が、ドモンの横を歩きながら必死に話しかけたが、ドモンは寂しそうに微笑むのみ。

ナナやサンがその背中に声をかけても振り向きもせず、トッポもただただ困惑した。



「や、やってやろうじゃないのよ!!ちょっと騎士の人、その盾を借りていいかい?」


その瞬間、静かな謁見の間に威勢のいい声が響いた。

借りた盾を持って玉座の裏に行き、スカートと下着を横にぶん投げた女ボス。

それにはドモンを含む全員が振り向く。


「不敬であたしの首をハネたけりゃハネりゃいいさ!恐らく史上初だろうね!玉座の前でこんな恥知らずな事をやる奴は・・・見なさいドモン!」

「お、おお?!やるのかあれを!!女ボス100%」膝が悪くて走れないはずのドモンが玉座まで走る。


「一世一代・・・あたしの生き様、とくと見てお・・・」盾を股に当て、構える女ボス。


「おお、皆ここにおったのか」「やあみんな探したよ」義父と勇者。

「絵が!絵が完成したそうです!!」数名の男女の使用人達。

「こちらにおられましたか!もうホーク様の方にはお届けしてしまいましたが、一応大福の味をご確認していただこうと思いまして」マスターシェフ。

「ドモンここにいたのか」「こんなところでこんな時間に何をしてるんだ?」「ドモン、私の部屋に来てよ」子供達。

「ローズ様、もうご就寝のお時間ですよ?」「これローズ!寝室を抜け出して」ローズのお付きの人と母親。


更にやってきたその他大勢。


羞恥と重さに耐えきれず、女ボスの手から落ちた騎士の盾は、ガランゴロンと音を立て玉座の前の階段を転がり、女ボスは全員に裸の下半身をしっかり見せた後、ゆっくりと顔に両手をやりながらその場にしゃがみ込んだ。


「サ、サンならできます・・・」と小さく聞こえたが、皆なにも聞かなかったことにした。




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