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第334話

「た、大変だ店長!店が!店が騎士達に囲まれてる!!すごい人数だ!!」

「なんだと?!」


腰を抜かしたのか、ふかふかの絨毯の上を四つん這いになりながらやってきた従業員。

店長は貰った借用書を握りしめながら、もう完全に絶望の表情。


憲兵が何人かやってきたというなら、金を握らせるなり誤魔化すなり、その時の運もあるけれどどうにか出来る可能性は高い。

しかし騎士団となると話は別。向こうの世界で言えば、警察ではなく軍隊に取り囲まれているようなもの。


頭にちらりと『この王を人質に取れば・・・』などと思い浮かべたが、横にいるのが勇者だということを思い出し、その考えを頭から打ち消した。

つまりは、自分の人生はもう終わりということ。


「迎えは頼んではいないんですけども」とトッポ。

「まあそろそろ城に戻る頃合いなので丁度良かろう」と義父。


「俺とホクサ・・ホークは新型馬車だからな。お前らは古い馬車に乗れ」

「ほほほ」「ズルい!僕も乗りますよ!」「何を言っとるか貴様は」「俺達も護衛として乗っていこうじゃないか」

「うわ最悪!男ばっかりの馬車!!しかも爺さんがふたりも・・・それにひとりは下着を汚しまくった王様だし。もうカッピカピだろ?その下着自分で洗えよ?」

「なななな何を言ってるんですかドモンさん!!も、もうっ!!」


おしゃべりをしながら、何事もなかったかのように立ち去ろうとしたドモン達。

ポカンとその様子を見ている店長と従業員達。女の子達も不安げ。


「わ、私達は一体どのような裁きを受けるのでしょうか!?」店長は思い切って聞いた。処刑されることを覚悟しつつ。

「裁きなんてないだろ。楽しかったよご馳走さん。お金は城に取りに行ってね」とドモンが店のドアの前で振り向いた。


「ま、待ってくれ!・・・俺らだってわかっているんだ・・・無茶なことやってるという自覚はある・・・だがそうしなければ上納金が・・・」責任逃れの言い訳。罪を軽くしたいがための自白とも取れる。それでも店長は理由を聞いてほしかった。


「あー、そいつらの方はきっと裁かれるかもな。もう上納金なんて払わなくていいぞきっと。それよりも、店のやり方を少し変えれば、この店はもっと儲かるよ。女の子も綺麗どころが揃っているし」とドモン。

「どういうことだ・・・」


自分の身に何が起きているのかも理解出来ていない上に、店がどうのと助言をされても訳が分からない。

逮捕されると観念し両手を差し出したら、もっと儲かる方法があると言う。店長の混乱ここに極めけり。


「簡潔に言うなら、恐らく明日には王都のヤバい組織は壊滅する」

「多分今日中ですね。この様子ならもう動いているんじゃないですか?」とトッポがドモンの意見を訂正。


「足抜けがどうので痛めつけられることもないから安心しろ。なにせ王族どころか国王が直々に店まで来たんだぜ?もし組織の残党がいても、わざわざ危険に近付くことなんてしないよ。城に泥棒に入るようなものだ」

「もう王室御用達の店のようなものだからな」と今度は義父が補足した。


「これからは普通に銀座の高級クラブ・・・じゃなかった、王都の高級クラブとして堂々と運営すればいい。だから騙すような真似や客引きなんてせこい真似はするな。店の格が下がるだけだ」

「は、はい!」


「金持ち相手の高級店って、案外需要があるんだぜ?商売相手を接待する時とか、ここに連れてきたら『いやぁ!こんな良い店に連れてきてもらって!』と契約が成立したりするんだ」

「あ!それは素晴らしいですね!隣国の王族達をこの店に連れてくるとかしたら、すごく喜びそうです!同盟延長などすんなりと決まりそうだ」


それは良いアイデアだと、ドモンの意見にポンと手を叩くトッポ。


「各国のしゅ、首脳会議をこここ、この店で?!」裏稼業のような世界から突然表舞台へと連れて行かれ、店長の困惑は止まらない。

「今の商売よりもずっといいと思うぞ?女の子達だって後ろめたい気持ちを持たずに済む。これからは胸を張って『その国の王族を接待したのは私よ』なんて人様に言えるようになるかもな」


「私はもうこの国の国王様を接待したけどね!アハハ・・・」トッポの面倒を見ていた女性が、笑いながら涙を拭った。

駆け寄ったトッポが「またドモンさんといつか来ますから」と耳打ち。


「俺もお金が貯まったらまたこっそり・・・いや、今度は堂々と来るよ。だから王都一と呼ばれるくらい超一流の店にしておいてくれ」と勇者。

「王室御用達、勇者立ち寄り店と看板にでも書いてりゃ、悪い奴は誰も近づかないな。まあ俺みたいな貧乏人も近づけなくはなるけどさ」とドモンはヤレヤレ。やはり安酒を出す店の方が気楽。


「あんたは・・・いや、ドモン様とおっしゃられていましたか。あなたはいつでも銀貨三枚ポッキリで、一日飲み放題追加料金無しで対応させていただきますよ。もちろん他の皆様も・・・」と涙ぐむ店長。

「その時はドモン、私が奢るわよ!できれば今夜このあとも・・・」と女の子。

「今夜は城に用があるからな。また遊びに来るよ。じゃあな」とドモンは言い残し、みんなと一緒に馬車に乗り込んだ。



「うぅ本当に男臭い・・・格好つけないで、さっきの女の子連れてこりゃ良かった。城の中を案内してやるとでも言えば、一回くらいスケベな事出来ただろうに」

「お城を変なことに使わないでくださいよ!もう!」

「冗談だよ、本気にするなって。でもトッポは良いよな~。下着カピカピになるくらいスッキリして、城に帰ればあの女ボスとたっぷりスケベも出来て」

「な、何を言ってるのですか!それにスッキリなんてしてませんよ!!」


またドモンにからかわれたトッポ。

そんなドモンに注意をしたいところだが、皆いろいろと身に覚えがある為に口出しが出来ず素知らぬ顔をし、馬車の中、ホクサイだけが「ホホホ」と笑っている。


「俺はやたらと鼻がいいんだよ。すごく臭うぞトッポ。それにしても勇者はトッポと違ってギリギリで堪えたんだな」

「な?!」「当然だ」真っ赤になるトッポと平然とするさすがの勇者。


「でもまあ脚を組んでいても元気だったのはモロバレだったけどなハハハ。女の子達みんなチラチラ見てたぞ?モッコリを。城に行ったら本物の方の賢者にでもスッキリさせてもらえよ」

「それは貴様があんな物を食わせたからだろう!それにソフィアとはそういう関係ではない!!」

「え?そうなんだ。あんなキレイなのに勿体ない。じゃあ俺が押し倒しちゃおうかな」

「ぬうう!!貴様はもう許さん!!いくら陛下と仲が良かろうと、今度ばかりは成敗してくれる!!」


ついでに勇者もからかうドモン。お陰で呼び名もすっかり『貴様』に定着。

義父と大魔法使いから「やめんか!」「よさんか!」と待ったがかかり、またホクサイだけが「ホホホ」と呑気に笑っていた。


馬車が王宮への門をくぐると、護衛についていた騎士達が離れ、街の方へと戻っていった。

これから何かしらの悪い組織を壊滅させるのだろう。

これが小説であるならば、自分達の下ネタ会話よりもそっちの殲滅作戦の方を描写するべきだろうなと考えながら、ドモンは「いってらっしゃい」と窓から騎士達を見送った。


馬車が城の入口付近に到着すると、もう夜も更けているというのにものすごい数の人々がお出迎え。

騎士や使用人達はもちろん、王族や例の子供達、武器や元々着ていた服などを届けた仕立て屋達、ナナやサンやエイ、勇者パーティーの女性陣や女ボス軍団がズラリと並んでいる。


その表情を見る限り、笑っている者少数、不安げな表情の者も少数、引きつり笑いが多数、大激怒が数名。

そしてその大激怒の中にナナが含まれていることを確認し、ドモンの死亡が無事確定した。




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