第324話
「トッポはボスをトイレに連れて行って下着と服を着せてやってくれ。こっそりズッポシしちゃ駄目だぞ。トイレは特に駄目なんだ。まあトイレで軽くズッポシは、はっきり言って俺も何度かやったことあるけどさ・・・」
「し、しない・・ですよね?」「しないわよっ!!」
ちょっぴり何かの期待をしてしまったらしい酔っ払いトッポと、全力否定の女ボス。
「自分で出来るわよこの馬鹿!こ、こらクンクンするな・・・し、仕方ないわねもう」と気になる声が扉越しに聞こえるが、ドモンは御者と話を始めた。
「やあ見つかって良かったですよ。今騎士の方々がいらして、大工やオーガの方々に聞き込みをしている様子で」
「御者はどうしてたんだ?」
「私は馬繋場に馬車を預けたまま街の散策をしてまして、そろそろかと馬車を取りに行く途中、一応おふたりがもういらしてないか確かめに、待ち合わせ場所に寄ったのです」
「なるほどな。でもこりゃもう見つかるのは時間の問題というか、新型馬車に乗っていたら一発で見つかるな」
「はい・・・」
見つかればどうなってしまうのかが不安な御者。
腕を組み、うーんと考えるドモン。
「とりあえず馬車の冷蔵庫に入れているホークへのお土産だけ持ってきてくれるか?あとはこっちで何とかするから」
「は、はい」
「じゃあついでに、この女の子達を連れて城まで行ってくれ。あとトッポと一緒にトイレに居る女も」
「え?!流石にそれは無理では??」
「いや大丈夫だ。トッポに一筆書いてもらったのがあるからな。恐らく城の中にも入れるはずだ」
「わ、わかりました」
御者と女の子達には悪いとは思ったが、ここは囮になってもらうことにしたドモン。
これで騎士や城の連中から目をそらせるはず。
その混乱に乗じて変装して門を突破し、王都に再突入し一旦どこかに潜伏することに。
というより、なぜ潜伏なんてしなくちゃならないんだとドモンは憤る。
いざとなったら誰かにトッポを引き渡して、ドモンはひとりで逃げるつもり。
話を終え、御者が一旦荷物を取りに行った。
「ドモンさんの言っていた王様ゲームっていうのをやってみましょうよ。お願いです」
「城に帰って好きなだけおやんなさいな。あたし達はもう行くわ!」
「じゃあ皆さんで一緒にお城へ」
「イヤよ!あんたがずっと王様でしょって言ってるのよ!」
トッポが女ボスの腕に絡みつき、微妙に甘えながら戻ってくる。
女ボスも本気で腕を振り払おうとはしていなかった。
「ああそれなんだけど、俺とトッポは一緒にじゃないが、馬車に乗って一旦城の方に行ってくれ」
「えぇ?!嘘でしょ??あたしら逃げるために旅立とうとしてるのに・・・」
「それはさっきのトッポの書いたやつでどうとでもなるから。それよりもゴニョゴニョ・・・」
「そ、そんなぁ~・・・」「む、無理よそんなの」「嘘でしょ????」
女ボスと女の子達、そしてトッポにも説明したドモン。
「そんな嘘がまかり通るのでしょうか・・・」とトッポも酔いが覚める。
「絶対にバレて捕まるわ。ボロを出して」なぜもっと早く旅立たなかったのかを後悔する女ボス。
「ヘーキヘーキ。じゃあ早速服を破くぞ」
借りたナイフで女達の服を裂いていくドモン。
「あれ?先っぽが出ちまった」
「イヤァァ!!」すぐに手で隠し、怒る女ボス。喜ぶトッポ。
「おっとこっちは尻の割れ目が」
「わざとよ!あなた絶対にわざとよ!!」
「こっちは一番大事なところと下着をイヒヒヒ」
「駄目よ駄目!!それだけは駄目!!」
ジッと見ていたトッポが、漫画のように鼻血をたらりと垂らした。
「おおトッポでかしたぞ!初めて役に立ったな」
「な、何がですか?!」
トッポの鼻血を手ですくい、女達の顔や体に塗りつけていくドモン。
女性達が露骨に嫌がる姿を見て、ショックと共に何故か興奮を覚えるトッポ。
ドンドン性癖がおかしな方向へ向かっていってしまった。
そうして見事に『被害者』を作り上げたドモン。
あとは御者にも説明をして馬車で城に送り届けるだけだ。
「これで良しっと。遊びにいったとなれば怒られるだろうけど、お前達を救いに来たとなれば怒られなさそうだろ。我ながらいい考えだ」タバコに火をつけうなずくドモン。
「でもきっとバレますよ。だって犯人の特徴とか根掘り葉掘り彼女達が聞かれることになるかと・・・」と冷静に分析したトッポ。
「そうよ!もし一人ひとりが別々の部屋で聞かれたらどうするつもりなのよ!!」涙目の女ボス。
「まあバレてもいいんだよそこは。バレること前提だから。お前らの身の安全は俺とトッポが保証する」
「それは確かに大丈夫です」とトッポも同意し、少しホッとした女ボス。
「つまり、あたし達にほんの少しの間、囮になれってことね・・・ハァ」
「まあそういうことだ。でも上手く行けば怒られないで済むと思ったのになぁ」頭を掻くドモン。
「そんな事のために服を破かれてこんな格好・・・どうしてくれんのよあんた!」
「そ、それは後で僕が弁償しますから・・・」とトッポが女ボスを宥めた。
そこへちょうどいいタイミングでやってきた御者から大福の入った木箱をドモンが受け取り、事情を説明。
ドモン達がここを出発してしばらくした後、御者が馬繋場から馬車を取ってきて、女性達を乗せて城に向かうこととなった。
「じゃあ皆さんまた後でお城にて」と手を振るトッポ。
「・・・感謝するよ・・・トッポ」胸の先っぽを手で隠しながら女ボスは赤い顔。
ふたりは軽い変装をしてから「さあ行くぞ」と店を飛び出した。時刻は午後1時。
騎士達が行き交う表通りの様子を横目に見ながら、ドモン達は裏通りへ。
30分かけて王都入り口の門へと到着し、通行の審査の列に何食わぬ顔をしながら並んだ。
それに合わせるように女ボス達が乗った新型馬車が門に到着。
門番達はもちろん、騎士達も大勢やってきて案の定大騒ぎとなった。
並んでいた列も少し崩れ、その隙きにドモン達は門の一番端の通用口付近まで移動。
「すみませんすみません」
「ええい!今はそれどころではない!黙って待っていろ!!」
「僕です」
「うるさいと言ってる・・・だろ??」
メガネを取ってちらりと顔を見せたトッポ。
王宮が大騒ぎになっているという情報はすでにここにも届いており、それ故に新型馬車が到着した今、安否を確かめるべく馬車にみんなが集まったのだ。
だが、その当事者が目の前にいた。
口をパクパクさせている門番に向かって、両手を合わせ「お願いします!静かに!30分ほどあとにこれを誰かに渡してください。ここに置いてあったと言って」と門番に手紙を渡し、ふたりは無事門を抜け、王都に戻ることが出来た。
手紙には無事に王都に戻ったことと、女性達を責めないでほしいということ、そしてもう少しだけ寄り道をするということが書かれてある。
「なぜこんなに隠れる羽目になったのでしょうか?」ようやくトッポもその疑問に気がついた。
「教えてやろうか?この馬鹿な弟のせいだよ!!」とトッポの頭をドモンが引っ叩く。
トッポは頭を押さえ、これ以上ないほどニコニコとしながら「ごめんなさい」と兄に謝った。
某氏が問題を起こした当時「ホテル行く前とかに、ちょろっとトイレでスケベな事をすることだってみんなもあるだろ」とコメントし、万を超えるほどのBADボタンをヤフコメで食らったリアルドモンさん。
ナナと一緒にトイレに入った時も、やたらとそれを気にしていたのはこのためである(笑)
ここにはBADボタンがない代わりに、ブックマーク登録数は減りそうな予感。




