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第323話

「王室にある額縁の裏だよだって。ちょっと!また戻れっていうの?!」


もうすっかりへとへとになったナナ。騎士や使用人達もぐったり。

何度行ったり来たりを繰り返したのか?もう二時間以上経過している。


「これは恐らく・・・」義父が口に出す。口に出したくはない言葉を。

「ドモンが連れ出したのよ。きっと無理やり」ドモンにはあまりに気の毒なナナの間違った推察。

「こ、国王様はどのような方なのでしょう?」ドモンの罪を誤魔化そうとしながらそう聞いたサン。実はサンも見たことがなかった。・・・結果的に、実際にはあるのだけれども。


「来年23になる・・・」と義父。

「え?そんな若い王様だったの?!私もっと白いひげのおじいちゃんみたいな国王様を想像してた!ホッホッホって笑うような」ナナの頭の中に浮かんだのは、恐らくサンタクロースみたいな王様。

「十数年前に新しい国王様に代わられたという事は存じ上げておりましたが、お顔も詳しい素性もまるで知りませんでした。私よりも年下でしたなんて」とサン。


「いやあなたいくつなのよ」と思う侍女達と、驚愕する王族の男の子達。

二歳くらい上、もしくは同じか少し成長の早い年下の女の子と思っていた。

男の子達がマジマジとサンの顔を見て・・・結局「すごく可愛い」という言葉だけが頭に浮かんだ。



「次はドモンさんの馬車の中だって。馬車なんてもうないじゃない!乗って行っちゃったんだから」

「あ、あの・・・」何かを察したサン。

「昨日のトッポって人と三人で出かけたのかしら?まさか!!ドモンとトッポがふたりで国王様を無理やり連れ出したんじゃ!きっとそうよ!!」

「あのあの奥様!あの~~・・・」


察しの悪いナナに言い出しづらいサン。


「よく考えたらなんか悪そうな顔をしてたわ。私達よりも先にお菓子食べてたし。ねえみんな聞いて!昨日若い男の人が、私達の馬車に乗ってたのよ!」

「奥様奥様!!」焦るサン。

「ドモンは騙されたんだわ!いえ!もしかしたら王様と一緒にドモンまで拐われて。良い服着ていたけど、どうも胡散臭そうな顔をしていたもの!」

「お・く・さ・ま!!!恐らく昨日のそのトッポさん、いえ、トッポ様が国王陛下かと・・・」


ようやく伝えたサン。

頭の中の登場人物が突然一人二役になり、考え込むナナ。


「じゃあ一緒に出かけるって言ってたトッポさんが王様みたいじゃない。私達が話をしてた」

「だからそうなのです」

「おかしいわね。じゃあ王様はどこ?」

「御主人様と一緒ですぅ!!」


両手をギュッと握りしめてつま先を上げ、目をつぶりながら叫ぶサン。

その様子がただただひたすら可愛いと思う男の子達。


「サンよ、昨晩会っておったのだな?ドモンと国王が」と義父。

「はい、まず間違いはありません。言葉遣いもこのお手紙みたいな感じでした。私達がお城の中で休めるように伝えておくとおっしゃられていまして」と答えたサン。

「あ!!ではきっと間違いはございません!!護衛の騎士の方から伝え聞いただけでしたが、陛下がそうおっしゃられていると私達も聞き、ならばご宿泊も許されたのだと理解し、その準備を進めたのです」と、昨日ナナ達の迎い入れをしてくれた侍女のひとり。


「ドモンが城を出た時の門番を呼べ!」


義父が叫び、その当時門番をしていた騎士がこの場に到着したのが午前10時頃。

すでに交代を済ませ、休憩の仮眠中に叩き起こされた。


「な、中にはドモン様と、男装をさせたというサン様が乗られていると・・・店には男性しか入れないと思うから男装をさせたと聞き・・・申し訳ありません!!!」

「いや良い。貴様が悪いわけではないのだ。確認をしただけだ」


そうなればあとは王都のどこにいるか?

外の街へは門をくぐらなければならないため、恐らく王都内に留まっているはず。

・・・と考えたのが間違いであった。


王都出入り口の門番を問い詰め、トッポからの手紙を受け取ったのが午前11時過ぎ。

その手紙により大慌てで騎士達がオーガ達の宿舎に向かっていた時、ドモン達は女ボスと店で酒を飲んでいた。



「俺達はそのホーク氏がいるというバーとやらに向かいます。ただ詳しい場所が・・・」と勇者アーサー。

「わかります!その場所なら!」と手を挙げるエイ。

「ではご一緒に来ていただけますか?」と賢者。

「は、はい!」思いがけず勇者一行と共にする事になったエイ。実はこれがなかなかの庶民の夢だったりもする。


「私達は私達で王都の中を探してみるわ。ホークさんのいるお店って王都の中だったわよね?」

「そうよ」とエイ。

「じゃあ多分そろそろ戻ってくるはずだわ。で、そのバーが開くのが夕方くらいだとして・・・ふむふむ」名探偵ナナ発動。別名女の勘。


「多分だけど、夕方からお酒を飲むために今頃早めの昼食を取ってるはずよ。朝も早かったし」

「あー御主人様がお出かけになる時いつも・・・」とサンも納得。お腹をある程度膨らませてから出かけるタイプのドモンの習性をよく理解していた。


「王都の中にはスケベな店はないのでしょう?その何とかバーのようなお酒を飲むところ以外は」

「秘密で営業している店がなければないはずだ」と義父。

「となると、きっと若い女性が集まる広場か何かにいるはずよ!!そこで女性達に声をかけてキィィィ!!行くわよサン!!」

「は、はい!」


妄想上のドモンに怒るナナ。

その妄想の中でドモンは一体何をしでかしたのか?

ともかくナナの助言もあり、王都内に7割、近隣の街に3割の騎士を動員し、捜索が開始された。

ナナの予想は半分当たりで半分ハズレ。



「はいぃ!!どうだ!!」

「アハハハ!!」「わはは!!」「いいぞ~!!」


下半身裸にお盆一枚で現れたドモン。

くるっとお盆を回転させてみせた。


「次はトッポだぞヒック」

「よーしやってやろヒックうじゃありませんか!」

「ヨッ!王様!」「トッポちゃーん」「さっさと脱ぎなさいあんたは」


昼過ぎ、ドモン達はまだあの店で飲んでいた。

御者との待ち合わせもすっかり忘れ・・・。


「それ!痛っ!!あああ~」ガランガランと床を転がるお盆。

「やっぱり子トッポがぶつかったかワッハッハ」「大きい!!」「バカねほら!早く隠して!」


身分も何もかももうバレバレ。だがなぜか騎士達には見つからない。

こんな下品なことをしているとは、全く想像していなかったためだった。

チラっと店の中を確認して即通過。国王陛下が下半身丸出しな訳がないし、今はそれにかまっている場合でもない。


「次はボスだぞ」「そうです」と目の座ったドモンとヨダレを垂らすトッポ。

「な?!なんで私が!!出来るわけないじゃない!!!」

「あ、じゃあ私がやります」と一緒に来た女の子。

「なら私がやるわよ。恥ずかしいものなんてもうとっくにないし」ともうひとり。

「あたしがやろうか?アッハッハ!!」店の奥さんもドモンらに飲まされ出来上がっている。

「俺がやるよ」「私ね」「じゃあ僕も」「女は度胸よ」「それじゃ俺も・・・」


異様な盛り上がりを見せる店内。

みんなが順番に手を挙げ、最後に渋々女ボスが「じゃああたしもやるよ・・・」と控えめに手を挙げた。


「どうぞどうぞ」「どうぞどうぞ」「どうぞどうぞ」

「やっぱり!!なんかおかしいと思ったのよ!!」


女ボスがトイレに行ってる間に口裏を合わせていたドモン。

店内は爆笑の嵐。


「あんたらこれであたしがビビって引っ込むと思ってるんじゃないだろうね?やるわよ!やってやるわよ!!ええ!!」


トイレにもう一度入って下半身丸裸になってお盆で隠しながら現れた女ボス。

それにはトッポの子トッポもガッツポーズ。賢者転職待ったなし!


「さあご覧・・・」


がに股に脚を開き、右手でお盆を持って構える女ボス。ゴクリと息を飲み込む一同。

厨房からはお尻が丸見えで、店主もナニかがガッツポーズ。


「これが・・・あたしの生き様よ!!」

「ドモン様」

「あ、御者」


突然やってきた冷静過ぎるシラフの男を見て羞恥心が一気に蘇り、女ボスはカランコロンとお盆を床に落として、しゃがみ込みながら両手で顔を隠した。





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