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第298話

「ど、どうしたらいいのぅ?」と小声でドモンに話しかけるエリー似オーガ。

「まあいいからいいから。普通に質問に答えてくれ」とドモンも小声で答える。


もしかしたら兄に会えるかもしれないとだけ考えていたのに、急に民衆に晒され、こんな事になるとは夢にも思わず。


「あなたにはお兄さんがいましたね?」

「は、はい・・・二十数年前に置き手紙をしてそれっきりで・・・」

「ふむふむ」


ちょっとおかしいが、メガホンをマイク代わりに、ドモンが司会っぽくエリー似オーガに質問をはじめた。

客達は、期待と好奇と不安とが入り混じった目をして、じっと舞台上を見つめたまま。


「では少し質問を変えます。あなたの好きなものは何でしょうか?」

「え?えぇ・・・私はやっぱり娘でしょうかね?」

「ほう・・・」


期待していた答えと違って、ついがっかりしてハァとため息を吐く客達。


「娘さんが生まれたのですね」

「はい。兄が出ていってからしばらくした後に結ばれて、娘が生まれて」

「長い年月、色々なことがありましたね」

「はい」


「娘さんも同じようにこんなスケベな身体で?」

「いやですよもう~ドモン様ったら!でも確かに似ていますね。あの娘も新鮮なミルクが大好きなので、つい飲みすぎてしまったせいかもしれません」

「おぉ~!!」「やっぱりそうだ!!」「ほら!言ったでしょ?!ね?」「ミルク好きであの体・・・なるほど!!」


突然騒ぎ出した客達に、エリー似オーガは驚きキョトンとした顔。


「お兄さんはなぜ出ていかれたのでしょう?正直に教えていただけますか?」

「え、えぇ・・・それは私が・・・人間の皆様とお友達になりたくて・・・」

「うおおお!!」「もう絶対そうよ!!」「早く会わせてあげてよ!!」「うぅぅ・・・」


予備知識があるおかげで、いちいち客達の反応がすごい。

右端の客達は、今にも飛び出して行きたそうにしている兄のオーガの方も見て、ウンウンもう少しだ!と小さく声をかけている。


「兄がうぅぅ・・・俺が悪者のふりをするからと言ってうぅーっ!!」

「よしよしわかった!みなまで言うな!お前達の気持ちは皆知ってるよ!」とそっと抱きしめるドモン。

「うぅぅ」「グスン」「うぅぅ・・・奥様鼻水鼻水・・・あ、その布で拭いてはダメです」


大号泣の観覧客に思わずプッと吹き出すドモン。

雰囲気を出そうとは思ったが、少しだけやりすぎてしまった。

ジロリと睨んだ義父を顔を見て、オホンと軽く咳払い。


「さあその兄と思われるオーガが、この布の向こう側に座ってます。最後の質問をしていいですか?」

「は、はい・・・」


「あなたのお名前は何でしょうか?」

「・・・エミィです」


うおおお!!と皆が思わず立ち上がる。

子供が危ないので落ち着いて座れと騎士達が必死に宥めるが、それはもう無理な話。

ただ舞台などを見慣れているせいなのか、押し寄せてくるようなことはなかった。


「お兄さんはあなたの事を忘れたことなど一度もなかった!あなたを想い、あなたのためにと出ていった!さあご対面のお時間です!お兄さんどうぞ!!」


ドモンが一気に捲し立て舞台の端に手を掲げると、ナナとサンがパッと布から手を離す。

そこには青い姿のオーガが涙を流しながら座っていた。


「エ、エミィ・・・」とゆっくり立ち上がる青オーガ。

「にい・・さん・・・?」とエミィもゆっくりと歩を進める。


観覧客からは嗚咽。サンとナナも大号泣。義父や貴族達まで涙。

ドモンだけ「俺に小金治役は無理だって」と笑いを堪えプルプル震えている。


お互いに何か言葉をかけようとしていたが何も出ず、兄妹はただ抱きしめあった。

どちらももう二度と会えるとは思ってはいなかったし、エミィはきっと兄は亡くなったのだと思っていた。


「生きててくれて・・・ありがとう!」


エミィがそう言った瞬間、この日一番の大歓声と大拍手が巻き起こった。

鳴り止まぬ拍手。西日が差し込みふたりを照らす。


ドモンはそれを見て目を細めながら「眩しすぎる。鬼より俺の方が陽の光が苦手だったなんて」と文句を言いながら舞台裏に行き、タバコに火をつけた。



民衆の心を操るにしても、ゴブリン達の時のこともあり、今回は特に気合を入れたら、つい入れすぎた。


この時の兄妹再会話は、のちに本や舞台劇にもなり人気を博すことに。

更に司会者がゲストと対話しながら観客を笑わせたり、感動させたりするショーも生まれ、大人気の娯楽となった。


舞台上で青オーガを貴族にすると義父から正式に発表され、事は全て丸く収まった。魔物を貴族にするという大改革だったが。


その後も王族や貴族達、オーガらやエルフ達を交えて、今後の説明や話し合いが夜遅くまで行われることになったが、ドモンはナナとサンを連れて抜け出し、軽い食事をしてから昨日一夜を過ごした、半壊している建物へと一足早く戻った。



「いいの?ほったらかしで本当に」とナナがフラフラなドモンの肩を支える。

「もう大丈夫だよ。それよりももう・・・ふぁぁ~~~」とドモンは大あくび。


「お辛そうです」とサンは体調を心配。

「ああ、でも病気とかじゃないよ。頭使いすぎたのもあるけど、昨日お前らがスケベすぎて寝てないから・・・ふぁあ」とドモン。

「だ、誰のせいだと思ってるのよ!」

「悪かったってば・・・でもごめん。今日だけはぐっすり寝かせて。お願い」


そう言って見張りをしている騎士に居場所を伝えてから、二階の大きなベッドのある一室へと入った。

普通の宿もいいが、こういった店のベッドは快適なのだ。


ベッドに入るなり大の字に寝るドモン。本当に寝不足であった。

最近は寝ている時も辛そうな顔が多かったが、この日は満足そうな顔をして寝ていて、ナナもサンも一安心。

義父に貰った薬草を、ちょんちょんとドモンの顔にサンが塗る。


「あーあ、水浴びもしないで寝ちゃって。こんなに汗かいてるのに」と汗まみれの首元を拭くナナ。

「そうですね、昨日もしっかりとは洗ってませんでしたし・・・あ!あの・・・」途中から失言だと気がついたサン。


「フゥもう良いわよ。さっと汚れ落として服洗ってからは、どうせスケベなことばかりだったんでしょ?それにしたってあんなおばあさん達と!」

「そ、そうなんですけど、エルフの皆さんも何故か少し若返ってましたし・・・なんというかご主人様は、それも本当に調べようと思っていたみたいなんです。ですが・・・」


「ちょっと脱がせてみたらつい興奮しちゃったと?」

「『これならまだ俺のストライクゾーンだ。俺って奴は呆れたもんだぜ』と・・・まあどういうことかはよくわからないんですけど・・・」


昨日の経緯をナナに説明したサン。

実際はもっと酷い脱がせ方や抱き方をしていたが、心の中にしまっておいた。



ドモンはサンの言っていた通り、エルフという種族を調べようとしていた。

明らかに若返っていたが、それがエルフ特有のことなのか、それとも自分が原因なのか?


確かに女性は男性と結ばれることによって女性ホルモンが安定し、体や肌の調子が良くなるということは科学的に実証されている。


だがこんなにも、目に見えて変化するなどありえない。

エルフだからなのか自分の力なのか、ナナがいない隙きに色々と実験し、確認しようとした。


裸のまま飛び出し、無理やり風呂場へエルフ達を引っ張り込んで、強引に服を脱がせて今の肌の状態を確認しようとしたところ・・・思いの外魅力的な胸と先っぽであり、あちこちいじくり回しているうちに、ドモンもエルフ達も我を失ったのだ。

事後にエルフに聞いたが、見た目が若返るなんて事は初めてで、結局原因はドモンだということ以外何もわからなかった。


「もし分かるとすれば、魔物の王くらいじゃろうて」


そう言ったエルフに「魔王かよ・・・」とドモンはため息。

魔王の存在についてはいつか調べようと思ってはいたが、魔王の秘密を知るどころか、自分の秘密を魔王に聞かなければならないなんて、まるで冗談みたいな話。


ドモンはもう面倒になり、他人に迷惑をかけない限りどうでもいいという判断に至った。すでにかなり多方面にわたって被害を与えているけれども。



「今はそっと寝かせておいてあげようか」とドモンに毛布をかけるナナ。今日のドモンは頑張った。

「はい、そうですね」とサンも反対側からドモンに毛布をかけた。毛布をかけながらついクンクンと首元の匂いを嗅ぐ。当然酷く汗臭い。


「お、奥様・・・」

「な、何よ?」


ナナは直感で、サンがドモンに何かをしようとしているのを察知。


「あの時のジルみたいに・・・あれをクンクンしたことって・・・」

「な!?ないわよそんなこと!」ちょっぴり嘘をつくナナ。


どの時かの説明もしていないのに、ナナはそれが何かわかった。

ドモンが死んでいた時のことだ。実はあの時ナナも気になってはいた。


「ひどい臭いだったというのに、惹きつけられて、ジルもついくっついてしまったらしいんです」ゴクリとつばを飲み込むサン。

「そりゃ・・・そうでしょうね」

「それをジルだけ知ってるというのはズルいと思うのです」

「普段は絶対にそんなことドモンは許さないもんね・・・恥ずかしがって」


ぐっすり寝ているドモンの顔を覗き見てから、目を合わせたふたり。

その顔はニンマリと悪い顔。

かかっている毛布の下半分をそっとめくりあげ、ドモンの下半身を露わにした。


「ま、まずはズボンの上から嗅いでみようか?」

「そうですね・・・」


左右からそこに顔を近づけるふたり。

鼻をくっつけクンクンスーハーと匂いを嗅ぎ、大興奮で大悶絶していると、突然ドアが開いた。


「ドモン様失礼します!あ!!!!」


エイはドアを開け叫び、前回と同様に、またもやドアをそっと閉めることになってしまった。





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