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第295話

「おおどうした?そんなに慌てて」

「ハァハァハァハァ!で、伝令だ!!ハァハァ・・・・」


オーガの兄妹が再会を果たす少し前。

一組の冒険者と一人の商人にオーガと騎士達が昼食の焼肉を振る舞い、ナナ似のオーガが旅人達を温泉に案内しているのを見ながら後片付けをしているところへ、馬から飛び降り、転がるように伝令の騎士がやってきた。


「そんなに慌ててどうなされたのですか?」とナナ似オーガの父。

「ハァハァ・・・ドモン様が街を作り直す・・・オーガの方々をすぐに呼べと・・・ハァハァ」

「ひとまずこれでも飲んで落ち着いて?」とエリー似オーガがはちみつを加えた冷えたりんごジュースを手渡した。


「す、すまない・・・ゴク・・・ハァ・・・街にあなた達の仲間が捕らえられていて、それをドモン様が救い出し・・・フゥフゥ・・・その青いオーガの方を貴族にすると・・・フゥ・・・」

「えぇ?!」「なんだって?!それは本当か???」


その報告に騎士達も叫ぶ。


「仲間・・・?え??それは本当なのですか?!」「青いオーガ・・・」「ドモン様すごいですぅ!」


オーガ達も一斉に驚いた。

そこへナナ似のオーガも「みんな温泉気持ちいいだってお母さん。タダじゃ悪いからってお金貰っちゃったエヘヘ」とやってきて、銀貨を握りしめ嬉しそうな顔をしていたが、皆の様子がおかしいことに気が付き「どうしたの?」と急に不安げな顔に。


「何人くらい街に向かえば良いのでしょうか?」と父オーガ。

「とりあえず10人くらい来て欲しいと。あまり多すぎても人間が怯えてしまうのと、ここを守る者も必要だろうとおっしゃられていました。ただ・・・」

「ただ?」「え?え?何の話?ねぇってば」


「奥様は必ず呼ぶようにとドモン様が・・・」

「ちょっとちょっと!!何よ!!あの人またお母さんとスケベなことしようとしてるんじゃないでしょうね?!」と、空気の読めないナナ似のオーガ。

父に「少し黙っていなさい!」と怒られしょんぼり。


「ま、まさか・・・?いえそんなはずはないわ!だってもう二十年以上も音沙汰もなく・・・」

「行って確かめてきなさい」


エリー似オーガの肩に手をやる父オーガ。


「はいはーい!私も行くー!」「わ、私も出来れば・・・」ナナ似とサン似のオーガも立候補。

「あ、あの・・・ドモン様が、結構荒っぽい力仕事になるのと、場所的に訳あって男性の方じゃなければ駄目だと・・・奥様だけは会わせたい人がいるので、特別に来て欲しいとおっしゃられていまして・・・」大変気まずそうな騎士。


「いやよ」「うぅ・・」

「わがままを言ってはダメだ。ドモン様に叱られてしまうぞ?」

「ウギギギ・・・私にあんなにスケベなことをしておいてほったらかしにするなんて!許さないんだから!」

「こ、これ・・・」


父に諭され、みんなの前でとんでもないことを口走るナナ似オーガ。

ドモンがオーガ達を抱いたのは内緒だったのに、予期せぬところで全てがバレてしまった。しかもその両親に。

母は素直に祝福したが、父親はやはり複雑。サン似オーガは優秀なので黙っていた。


結局エリー似オーガと男性のオーガ10名が、ドモンの元へと向かうことになった。



オーガが駆け足で行けば二時間ほどの距離だけれども、騎士の馬の速度に合わせたため、到着は夕方となる。

街から少し離れた場所に馬車を数台待機させ、合流してからは馬車での移動とした。

住民を驚かせないための最大限の努力。


ただこれでも混乱することは必至で、義父やこの街を治める貴族数名、そして騎士500名が街の入口にて待機。

オーガ達が到着する前に住民の注目を集め、先に『街にオーガが不当に囚われていた事』や、『オーガ達の力を借り、街に女性も楽しめる健全な大歓楽街を建設する』と触れて回った。


噂は一気に広がったものの、意見は当然賛否両論。

そこでドモンは大きな看板に例の建設予定図を綺麗に描き、食事を楽しんだ商店街そばの広場の真ん中に、大々的に掲げることにした。

イメージはマンションが建ったりする時の工事中の塀に描かれている、完成予想図のようなものだ。


その絵はもちろんエイが描いた。今ある自分の技術と魂、想いを全て筆に乗せて。


「す、すごい・・・この絵の中に飛び込んで、今すぐ遊びに行きたいくらいだ」

「ねえ!本当にこれが出来るっていうの?!嘘でしょ?!」


思わずドモンもナナもそう声を上げた。

使用したのは黒一色。なのに描かれた街は色付いて見える。

建物の隙間を吹き抜ける風や、人々の楽しげな声、街の息遣い。安らぎと活気。新しさの中にどこか感じる懐かしさ。紛うことなく感じる天賦の才能。


義父に至っては、街が完成したあとにこの絵が残っているならば、そのまま貰い受ける約束をしていた。金貨100枚の値を付けて。

ただ残念ながら、後日この絵は金貨800枚ほどの値が付き、別の街の豪商の手に渡ることになってしまった。安値を付けた義父は国王に散々嫌味を言われることに。



看板を広場に建てた瞬間、驚きの声が上がった。



そしてここからはドモンの出番である。

もうあの時の同じ轍は踏まない。

ナナに向こうで買ったスケベな服を着せ、看板の前に作った舞台の上に並んで立つ。

簡単に厚紙で作ったメガホンを持ちながら。


看板とこれぞ本当の看板娘によって、人々があっという間に集まった。その人数は約千名。


「こりゃ俺も気合入れなきゃなんねぇな・・・」

「ねぇ凄い人よ?また石なんて投げられたら・・・あの時と人数も桁違いだし・・・」

「さ、流石にわかんねぇけど・・・やるしかねぇだろ。帽子と腹巻きでもありゃもっと気合も入るってもんなんだけどな。今は仕方ねぇ」


不安そうな顔でナナとサンがドモンの横へ。

ドモンは目の前に置かれた机をパンパンとメガホンで叩き、更に皆の視線を自分に集めた。


好奇に満ちた目や不安そうに見つめる目、訝しげにドモンを見る目。

騎士達は下がれ下がれとやっていたが、当のドモンは来い来いと手招き。


ジリジリとにじり寄る民衆に大きな声で「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」と叫んで、もう一度机をメガホンでパンと叩いた。





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