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第294話

「どういうことだ?!オーガを里に帰す相談ではなかったのか??」


義父はてっきり、王族の力を利用してオーガの評判を回復させつつ、平和的にオーガを里に帰す方法の説明を受けるものだと考えていた。

そのついでに、ここら一帯の『大掃除』をする予定で騎士を連れてきた。


そしてそれはドモン以外の全員が似たような考えで、オーガに関する良い噂を流すなにか良い喧伝方法があるのだと思っていたのだ。



「まずはあの温泉のオーガ達をこの街にたくさん呼んで欲しい」

「ちょ、ちょっと待て!ちょっと待つのだドモンよ!」

「忙しくなるから昼までに呼んでね」

「待てと言っておろう!!」


ひとりのオーガの存在をどうするかと思案している時に、とんでもないことを当たり前のように語りだしたドモン。

そんな事になれば、街は大混乱必至である。


街にクマが出没したから、山からたくさんのクマを呼んでこいとドモンが言い出したようなもの。

理解など出来るはずがない。


現在、街にオーガがひとり現れたと噂を聞いて、この街を捨てて出ていこうとしている人々がいるくらいなのだから、大勢のオーガが押し寄せてくればどうなるのかなど想像に難くない。


「オーガ達の力が必要・・・かどうかは、実際わからないんだけどさ。ここは敢えてオーガ達の手柄としたいんだ」

「どういうことだ?この図や、ここら一帯を作り変えるといった話と関係しておるのか?」

「ああ。オーガ達に手伝ってもらい、ここに健全なスケベな街を作る!すすきのは俺らの街に作るとして、ここに第二のすすきのを作るんだ。ピンサロ団地妻復活だぜヨイショッ!!」

「・・・・」


ドモンが何を言っているのかさっぱり理解が出来ず、沈黙する一同。

だが最後の方の話を聞く限り、皆なにか不穏なものを感じている。


当のドモンは、またその図に何かを描き加えながら「いらっしゃいませいらっしゃいませ!ようこそここは団地妻!お兄さんもお父さんも~スケベさんもムッツリさんも~花びら回転大回転!サービス満点夢満開!イッちゃってヤッちゃってぇ!イッちゃって出しちゃって~!ヨイショ!」と早口で歌うように、意味不明なことを言っていた。


「それが何かを聞くのも嫌だわ」とナナはジト目で睨む。

「でもなんだか格好いいです」と、スケベな事に対してのアンテナの感度がまだ低いサンはニコニコ。


「まずここらの建物全部壊して通りを大きくするだろ?で、このど真ん中に交番・・・じゃなかった憲兵の詰め所を置く」

「絶対スケベなことよサン」

「そ、そんなことないです奥様!花びら回転とか夢満開とか素敵な言葉だったじゃないですか」


ドモンの話を無視してナナとサンが議論を交わす。

義父はドモンが描いた図を見たまま固まっている。


「まあ薄暗いのも雰囲気はあると思うんだけど、健全さをアピールするためには通り自体を明るくしないとな。で、大人のお店のど真ん中に詰め所を置いたら、すぐ隣に役所・・・ええとこっちでは何かの許可を出す時は、貴族の屋敷でだったな?じゃあ貴族の屋敷を置く」

「待て待て」小さく呟く義父。


「団地妻ってのがよくわからないけど、なんだかスケベな匂いがプンプンするのよ。というより、スケベさんもムッツリさんもって言ってたじゃない」

「でもでも!歌みたいでしたし・・・き、きっと異世界の有名な歌なんです!」


必死にドモンを庇うサンだったが、もう勝つ見込みがない弁護士の答弁のような強引な意見陳述。


「この辺りは飲食店や、恋人同士がスケベなことをする専門の宿、ここら辺りを占いババアの館として、その上にはメイドカフェや、おっぱいの大きな女が添い寝してくれる店を作ろう。その上には病院も置いて、働く女性達は定期的に検査させる」

「・・・・」

「ちょっと!私達を働かせるつもりじゃないでしょうね?」「メイド・・・カフェ?」


「違うってば。とにかくこれから全ての大人の店は、貴族の許可が必要とする。まあこんなスケベなところに住んでくれる貴族はいないだろうし、このオーガを貴族にしてやってよ。もちろん里に帰りたい時は、いつでも休みとって帰っていいからさ」

「待て待て待て待て!!」「待ってください!!」


「管理者の一番上がオーガなら逆らう奴もいないだろうし、今みたいに奴隷を売ったり女を使い捨てにするような奴らも消えるだろ。まあその前にジジイが消すかもしれないけれど・・・」

「う、うむぅ・・・」


ナナとサンがおしゃべりしてる中で発表された、ドモンの大改革案。

これにより暗躍している悪党共も減り、店の健全化、働く女性達の保護、娯楽増加での街の観光地化、オーガの地位向上も。その他諸々全てが好転すると考えられる。


ドモンが細かく説明をする度に、皆にはその図が光り輝いていくように見えた。


「そしてこの建設計画を、オーガ主導で全て任せたいんだよ。力も強いし身体も強い。もちろん人間達も協力させるからさ」

「なるほど・・・さすれば人々もオーガの事を信頼できるようになるであろうな。なのでオーガ達を呼べというのだな?」

「そういうこと。許してもらうとかどうとかじゃない。認めさせるんだ」


難題はたくさんあるだろう。

だがようやく義父も納得いった。

恐らくもう一人の義理の息子もこんな気持ちだったのであろうと義父は考える。


『もうやるしかあるまい』


「・・・貴族として、生きる覚悟はあるか?」と義父。

「ハァハァハァハァ!俺・・・いや私はどうしたら・・・・」突然のことにオーガはまともに呼吸が出来ない。


突如切り開かれた未来。

突然降り注いだ希望の光。

苦しみ続けたオーガの、たったひとつの夢。


オーガは泣いた。

人の役に立ち、人と仲良くしたいと願った妹のことを思い、青オーガが泣いた。


「どうしたらもこうしたらも、俺がやれって言ってんだからやれよ」と吐き捨てるドモン。

「や、やります!やらせてください!命に代えてもやってみせます!!」

「うむ」「俺も早くサンと続きをヤりたいよ」


ドモンの催促によって覚悟を決めたオーガ。そして義父。

そしてナナの手によって天に召されたドモンと手当てをするサン。

義父の指示により、温泉のオーガ達のところへ騎士が大急ぎで向かった。



その日の夕方、青い肌のオーガの兄と赤い肌の妹は、二十数年ぶりに再会を果たすことになる。





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