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第293話

「次はドモンが仰向けになってサンが上よ。私はこっちから・・・」

「はい」「待って待って!もう許して!俺怪我してんだぞ!!」


「怪我してるのに浮気したのはどこのどなたかしら?オホホ。ほらほらほら!」

「うわやめろ!変なとこに指を!!」「へうっ?!奥様どうして私にも??ああー」

「私をのけ者にして楽しんだ天罰よ!イーッヒッヒッヒ!!」


「ドモン様失礼します!あ!!!!」


ドアを開け叫び、そっとドアを閉めたエイ。

ドアの向こう側の大きなため息を聞きながら、そそくさと着替える三人。


顔を見るまでもない、何度も聞き覚えのあるあのため息。


エイはある意味驚愕。

王族や騎士達を、早朝に恐らく叩き起こしたような状態でわざわざ色街まで呼び出しておいて、当の本人は女性達と組んず解れつやっていたのだから。エルフや肝心のオーガまでほっておいて。


手紙を門番に渡すだけで震えていた自分がバカバカしくなる。

しかしエイの驚きはその後もまだまだ続く。


「早く着替えて出てこんか!こーの馬鹿息子めが!!」

「ちょ、ちょっと待てって!あの~・・・スッキリしてからじゃ駄目?ねえナナ、手とおっぱいでいいからさ・・・」

「ならぬわ!!我慢せい!!ぬぅ!!!」

「チッ!クソジジイめ!」


ドア越しの王族とドモンとの会話を聞いただけで、目眩がして倒れそうになったエイを、騎士のひとりが慌てて支えた。

奥様方も何故夫のこんな態度を許しているのか?と、エイは怒りすら湧いてくる。が・・・


「もう何なのよおじいちゃん!酷いじゃない!」とドアを開けるなり、文句を言ったナナ。

「うぅ~サンの番だったのにグス」洗ってまだ乾いていないメイド服姿で、ポカポカと義父の胸を叩くサン。


この態度にエイは、処刑待ったなしとしか思えない。なのに。


「おお、すまぬすまぬ・・・早くそなたらの無事を確認したかったのだ」とナナの肩とサンの頭をポンポンと優しく撫でる義父。


普通に今王族の方が謝罪している状況を、エイは頭の中でイチから整理し直す。

ドモンが早朝に王族と騎士達を呼び出し、スケベな事をしながら待っていて、今慌てて必死にやってきた王族や騎士達に女性達まで一緒になって文句を言っている状況。うん、やっぱりわからない。と。


「俺の心配をしてたんじゃなかったのか?」

「ふん!貴様の心配などしとらん!!」


嘘である。馬車の中で何度もドモンの怪我についてエイは聞かれていた。

目は見えていたのか?腫れはどうなのだ?赤い目をしていなかったか?などと。


「それよりこいつに無礼な態度取ってないだろうなお前ら。手紙にも書いておいたけど」

「と、当然だ」「え?!私???」


急に真剣な目になったドモンに焦る義父と、突然ドモンと視線が合い、また驚くエイ。


「も、申し訳ありませんドモン様・・・門番がかなり不躾な態度を取ってしまい、もちろんきちんと注意はしておきましたが・・・」すぐに片膝をついて頭を下げた数名の騎士達。

「クソが」

「いいの!いいです!!もういいですからっ!!」


騎士達が改めてエイに謝罪の意を示し、焦りに焦るエイ。

突然のお姫様扱いに気分が良かったのは最初だけで、今はもう罵倒でもされて蹴られた方がまだ気持ちは楽に思えた。


だがエイは知らなかった。自分が王都どころか、王宮ですらフリーパスで入ることが出来るようになっていたことを。



「エルフやオーガとは会ったのか?」

「いやまだだ」


ボスの部屋までつかつかと、ドモンと義父が先頭を歩きながら語り合い、その後ろをナナとサンがおしゃべりをしながらついて歩く。


「ドモン様を介してご挨拶がしたいと言ってましたので・・・」と、更にその後ろから声をかけたエイ。

「まあいきなり王族が自分とこに来たらなんか嫌だもんな。わかるわかる」とドモン。

「貴様は・・・」頭を引っ叩こうかと思った義父だったが、怪我のことを考え寸前で思いとどまった。エイはずっとひやひや。


コンコンとボスの部屋のドアをノックし、「おーい、四人でスケベな事やってなかったか?」とドモンが冗談を言いながら入室すると、部屋の隅の方で全員が固まり、アワワと慌てていた。


「し、しておらんわ!」「そんな余裕なんぞないさね!」「ひっ・・・」


ドモンの後ろに明らかに王族だと思える人物の姿を見つけ、必死に取り繕いながら反論するエルフ達。

ただの人間であるなら貴族であっても何も思うことはないが、王族だけは話は別。

いくらエルフであってもそのくらいは理解している。


オーガは王族であっても恐れることはないが、今この場で会うのがあまりにも気まずすぎるのだ。

自ら進んで街に潜伏した訳では無いが、結果的にそうなってしまった上に、建物を半壊させてしまったからだ。


酔って暴れた記憶が薄っすらある中で、早朝警察官が家にやってきた気分。



「まあそう畏まらんでも良い。特にエルフの方々には感謝を申し上げたいと思っておったのだ。本当に助かった。感謝致す」と義父が頭を下げ、騎士達も皆平伏した。

「いやいや頭を上げてくだされ!」と慌てるエルフ。


「それとオーガの者よ、長きに渡り辛い思いをしたようであったな。謝って済むことではないが、私が代表して謝罪させてもらう。申し訳なかった」

「え・・・?えぇ?!」


これから自分はどうなるのか?

これから自分はどうしたらいいのか?

不安で仕方なかったオーガは、その言葉を聞いて安心し、涙が溢れ出た。


「まあこれで今回の件は不問に処すってところなんだろうけれど、問題はこれを住民達にどう知らせるかということなんだよ。それに人間がオーガを恐れているのは知ってるよな?」

「はい・・・」俯くオーガ。


「今回のことで更に恐怖は増した筈だ。俺もそこまで強いのかと焦ったし、サンなんておもらししちゃったくらいだ」

「ああ~御主人様!うー!!」ドモンの口を塞ごうと手を伸ばすサン。


「俺は・・・一体どうしたらいいのでしょうか?どうしたら許して・・・人間に許してもらえるのでしょうか?うぅぅ」と泣いた青鬼。ではなく青オーガ。

「ドモンよ、何か考えがあるのだろう?私は何をすれば良いのだ?」と義父。


ドモンは黙って、先程手紙と一緒に描いたとある図をテーブルの上に広げた。

興味深げに皆それを覗き込んだが、何のことなのかさっぱりわからない。


「ここら一帯を作り変える。仕組みも丸ごとな」


そう言ってドモンはニンマリと笑った。





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