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第278話

ドモンの冗談で大轟沈したナナやサンを尻目に、皆に向かって真顔でドモンが話しかける。


「そういえば王都までは後どのくらいなんだ?もう街はないのか?」

「行程としてはちょうど半分くらいでしょうか?小さな街なら途中いくつかありますよ」と騎士のひとりがドモンに説明。

「王都に近づくに連れて、街の数が増えるんだ。やっぱり王都から近けりゃ便利だからな」ファルも説明に加わった。


「その王都自体の規模はどのくらいなんだ?住民は何人くらいなの?」と聞いたドモンの質問に、オーガ達も耳を傾ける。

王都自体はある程度話には聞いているが、詳しい人口までは知らないので気になっていたのだ。

ナナやサンも復活し、ドモンの横に並んでまた食べ始めた。


「ほぼ隣接している近隣の街も含めるならば、百万人はくだらないであろうな」とちょっと自慢げに語る義父。

「百万人?!」「へぇあそこってそんなに人がいたの?」「凄いですね!」


驚くオーガ達。百万人という途方もない人数に、もうその想像すらつかない。

ナナは行ったことがあったのでそこまで驚くことはなかった。サンは実は知っていたが少し気を使った。


「貴様も驚いたであろう」

「お、おぅ・・・俺の生まれた街は二百万人弱だったけどな」

「な、なんだと?!」

「でも首都から随分と離れていた島だったから、田舎者扱いされることもあるんだよ」

「そんな訳なかろう!!」


まさかの倍。

義父の面目丸つぶれである。

だが・・・


「そ、その王都・・・いや首都というのだと、規模はどのくらいなのだ?」

「そこだけなら1400万人くらいだったかな??こっちで言う王宮みたいなものもあるよ」

「1400万人だとぉ・・?!」

「近隣の街も含めるとどのくらい住んでいるの?」ナナ似のオーガも興味津々。それをナナがもぐもぐしながら聞いている。


「その首都圏すべて含めると確か3700万人ほどの人が住んでるよ。王都37個分ってところだな。東京ドーム方式で表現するなら。アハハ」

「!!!!!!!!」



実際に向こうへ行ったことがあるナナ以外絶句である。

ナナは店外には出ていないけれど、本屋に行った際に旅行の本などで向こうの世界がどんな様子なのかを知っていたし、高度な文明も実際に目にしてきた。


そんな国の王都であるならば、そのくらいの人が集まっていても何ら不思議ではないとナナは思った。


「まあ人が多けりゃ偉いってもんじゃないよ。スケベな店がたくさんあるってなら話は別だけどな」

「こーらドモン!」ドモンの耳を引っ張るナナ。


「ちゃっちゃと王様に挨拶済ませて、職業学校だかなんだかの話通したらさっさと帰ろうぜ。俺らの街へ」

「あードモンよ。それについては・・・」

「もう今更鍛えたって強くなんかならないってば」

「それもそうなのだが・・・」


なんとも歯切れの悪い義父。その様子を見ていたオーガ達も何かを察する。

だがしかし、カールの義父の口から出た言葉は意外なものであった。魔王のことではなかった。


「まずはひとつ貴様に頼みがあるのだ」

「やだ」

「話を聞かんか!王都にホークと呼ばれる画家が居るのだけれども、まあなんというか・・・とんでもない才能の持ち主なのであるが、一癖ある男なのだ。其奴に絵を描くよう説得を頼みたいのだ」

「嫌だよ。なんで俺が」

「屋敷の風呂の壁の絵で、娘が言っておった画家がこの男なのだ」

「あぁ・・・そういやなんかそんなこと言ってたな」


義父とカールの奥さんが、なんだか面倒な話をしていたことを思い出したドモン。

カールの奥さんが関係しているとなると、さすがのドモンも無下には断れない。


「まあ無理にとは言わぬ。さすがの交渉術を持つ貴様でも説得するのは難しいであろうからな。私や王自ら頭を下げようと、いくら金を積もうと、気に入らない仕事だと思えば動かぬ男なのだ」

「んぐ!まるでドモンじゃないの!」とナナ。食事はまだまだ序盤戦。


「じゃあ良い酒とタバコでも持っていけば・・・」

「奴は酒もタバコもやらぬ。食事も自ら作らず取り寄せばかりで、食べ散らかして部屋が汚れては引っ越しを繰り返すような男だ」

「なんかどこかで・・・で、歳はいくつくらいなんだ?」

「いくつかはわからぬが、私よりも上なのは確実だろうな」


酒もタバコもやらない変わり者の頑固爺さんの説得という、あまりにも高すぎるハードル。

義父が渋っていたのも納得である。


「話好きな爺さんだったら少しは希望はあるだろうけど」

「大変に無口な男だ」

「やっぱり。もう無理じゃねぇの?」

「だからこそ貴様に頼むしかないのだ。無理ならば娘に諦めてもらう他ない」

「なるほどなぁ」


まさに無理難題。

義父とドモンの会話を聞いていた周りの者の間に漂う諦めムード。ナナはまだモグモグ。


「まあ・・・もし俺が思い描いている男とそっくりならば、小豆さえあれば、話のきっかけくらいは作れるかもしれないけどな」


ブツブツとドモンが独り言を言いながら、ジンギスカンをひとつまみ。

内臓が酷く痛み、カレーライスと同様に肉も身体が受け付けないということを知った。



夕方前にもう一度ドモンは温泉へ。

様子がおかしいことに気がついたサンとナナが慌ててドモンについて行き、すぐにサン似とナナ似のオーガ達もふたりを追いかける。


「御主人様フラフラです!」

「ちょっとドモンってば・・・全然食べてないじゃないのよ・・・うぅ」


ふたりに抱えられるようにしながらドモンは服を脱ぎ、温泉に入った。


「大丈夫ですか?御主人様」サンも一緒に入り、ドモンの左側へ。

「おっぱいを・・・おっぱいを吸ったら治るかもしれん」

「はぁ・・・ドモンあのねぇ・・・今はふざけないで」ナナもドボンと飛び込み右側へ。

「顔色が随分悪いわね」「本当に」オーガ達も裸になってドモンの正面に。


女性達にイタズラをしながら気分よく温泉を楽しんでいるうちに、ドモンは本当に癒やされた。


その様子を見て安心した女性達は、ドモンが望むままスケベなことを受け入れ、皆大満足のツヤツヤで更衣室の横にある休憩室でひと休み。ドモンもイビキをかいてグッスリ。



『ハッハッハ良い湯を堪能させてもらったぜ!オーガも抱けたし、お前には珍しく褒美をやろう。喜ぶがいい』



目を覚ましたドモンは、なぜか温泉に入っていた間の記憶がなかった。

ただ体調はすこぶる良く、肉を食べても身体に問題は起きず。


今回も誰もそれを知ることはなかったが、ドモンの最大HPは、旅に出発する前よりも少し多いくらいまで戻っていた。





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