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第276話

以前向こうの世界で金貨を交換した時に行ったように、ドモンは『そう思い込ませること』が得意である。

ドモンのこの能力によって、ケーコも散々な目にあってきた。



馬車の中でドモンがナナに使った道具はたったひとつ。目隠しをしただけ。

あとは全てドモンの言葉による洗脳のみ。

もちろん手で少しはナナの身体をいたずらしていたけれども。


ドモンがかけた深い暗示により、ナナは叫び続け、吐き、漏らした。


視覚を奪われた中で『ナナは今、裸で店番をしている』とドモンが言えば、ナナはそう思い込む。

『トイレに行きたいのに縛られて動けない』とドモンが言えば、やはりナナはそう思い込んでしまう。


快感が10倍になると言えば身体中が敏感になるし、恥ずかしさが10倍になると言えば羞恥心で気が狂いそうになる。

100人の男達にくすぐられていると言えば、全身を100人分の手が這い回っているように感じてしまう。


洗脳や暗示という言い方を変えるならば、催眠術といったところか。


テレビ画面の向こう側では、楽しい催眠術ショーがたまに行われているけれども、一度は皆考えたことはないだろうか?

『これを悪用するとどうなってしまうのか?』を。特に男が女に対して。


ドモンが頭に思いつく限りのスケベな事を、まるで実体験しているかのように強制的に妄想させてしまうのだ。

もちろん悪用と言っても、傷をつけるような危害を与えることはドモンはしないけれども。



なんでもアリの夢の世界では、時に現実ではありえない恐ろしい出来事を見ることがある。

ドモンは目隠しをするだけで、それを自在に見せることが出来る。しかも目を覚ましたままで。



「あ・・・あ・・・」


ナナから話を聞き、サンは思い出す。

眠らされて両親と会った時の、夢の中の夢で、ドモンに見せられたあの夢を。


大勢の人の前で裸にされたあの夢は、夢の中で見た夢だというのに、サンは鮮明に覚えている。

サンもあの時すでに同じ事を経験していたのだ。


サンが思いの外それを喜んだため、それを仕掛けた何者かは驚いていたけれども。



「思い込ませてしまうって・・・それって何でもありってことでしょ?ドモン様」とナナ似オーガが何かを妄想して、少し赤い顔に。

「で、でもまあ夢の中でということならまだ平気かと・・・」と、サンはまた夢の中での夢を思い出す。


「私の場合は夢じゃないのよそれが・・・目は覚めているのに、服着てるのが恥ずかしいだろって言われて、私実際に慌てて脱いだんだから」とナナ。

「そ、そ、それって、今ここでされたら、皆さんの前で脱いでしまうということですか??」とサン似のオーガが、温泉から戻ってきて、良い気分で雑談している義父や騎士達の方を見た。


「いやいや!目隠し外したら徐々に正気に戻るから!ナナだって戻っただろ?だから自分でパッと目隠し外しゃ平気だよ・・・多分」


女性陣に訝しげな視線を送られ、焦るドモン。


ケーコを含む今まで付き合ってきた女性達全員、一度は「みんな見ていないから裸になっても平気だよ?」と目を閉じている時に暗示をかけられ、混雑したゲームセンターや居酒屋の中で裸になったことがある。


目を開けた時、正気に戻るのはあくまでも『徐々に』なので、気がついた時にはもう遅い。

平気なの?あれ?平気なんだよね?・・・と、上半身裸で周りをキョロキョロ。


たまたま一緒に出かけていた母親に「ちょっとドモン、ケーちゃんなんか裸になってるんだけど・・・」と言われてすっ飛んでいくと、ゲーセンのパチスロを上半身裸の胸丸出し状態で打っていて、店員が大困惑していたのだ。

ケーコが眠そうにしていたので、ドモンが冗談で暗示をかけたら、目を開けたあとに服を脱いでしまったのだった。


ホテルで「ケーコの服と下着は誰かが窓の外に捨てた。早く取りに行かないと拾われてしまうぞ」と暗示をかけ、全裸で廊下に飛び出して、走っていってしまったこともある。

この時は途中で正気に戻り、手で隠しながら戻ってきたものの、オートロックで締め出されてしまってドモンが助けた。呑気にタバコを一服した後に。



「妄想と現実を曖昧にさせちゃうだけなんだよ」

「すごく怖いんですけど!」とナナ。


女性が警戒するのは当たり前の話。

スケベなおじさんの思うままになるなんて、女性の本能が許さない。


「まあさっきのあれはお仕置きだから・・・普段はしないってば」

「本当ね?」

「うん・・・」

「・・・・」


そう言ったが、ドモンは普段から無意識にそれを行っており、そしてナナとサンはもうそれに気がついている。

ただこれ以上犠牲者を増やす訳にはいかない。

少し怒られた感じになりドモンはしょんぼり。


「サ、サンになら少しくらいならいいですよ?」と、落ち込んだ様子のドモンに話しかけるサン。

「何よ!ずるいわよサン!私も少しくらいならその・・・あ、あんなに激しいのは駄目よ?」とナナ。

「あ、あの私にも・・・」「私もちょっとくらいなら。妄想だけよ?妄想だけ」サン似とナナ似のオーガ達まで赤い顔で少しムズムズ。


実際に危ない経験をするのは絶対に嫌だけど、男達に捕まって辱められたりする自分をちょっぴり想像しないこともない・・・という、大変難しい女心である。

嫌なものは嫌だけど、イヤイヤしている自分は好きなのだ。



「やらないってば。それで俺はジジイにお仕置きされて散々な目にあったんだから」

「す、すこしくらい良いじゃない!ちょっと今やってみて?何事も経験してみないとだわ。それに私達・・・オーガに効くかどうかも試してみないとわからないでしょ?」とナナ似のオーガ。無茶なところまでそっくり。


「ちっ!まったくもう」とドモンは呆れながら、ナナやサン達に耳打ち。

そして椅子に座らせたナナ似のオーガの背後に周り、左手でそっと目を塞いだ。



「ほらわかるか?お前の周りに騎士達が群がってるぞ。スケベそうな顔をして、舌舐めずりをしてヨダレを垂らしながら」

「・・・・そ、そんな、嘘でしょ?え?ホントなの???」


耳元に口を近づけ、小声で囁くドモン。

脳に直接言葉やイメージが伝わってくるような感覚で、すぐにその映像が頭に浮かんだ。


「お前の服は透けているんだ。おっと、手で隠すなよ?隠すとお前の両親が呼吸できなくなるようになっているんだぞ?だから両手を上げて、頭の後ろで組むんだ。そして絶対に離すな」

「ひ、酷いわ・・・うぅ・・・」


震えながらゆっくりと手を挙げ、頭の後ろに回したナナ似のオーガ。

そばで見ていたサンまで目を開けていたはずなのに少し暗示にかかり、両手を上げた。


「さあ拷問ショーの始まりだ!騎士達全員がお前の身体を舐め回すぞ」

「い、いやぁ!!駄目よ駄目!!許して!!」


ドモンの目配せで、剥いたリンゴをナナ似のオーガの腕や首にチョンチョンとくっつける女性達。


「ちょっと!!本当じゃないのよ!!ねえドモン様みんなをやめさせて!お願い!頭がおかしくなってしまうわ!!」

「恥ずかしさがどんどんと増えていくぞ。なのに脚が開いていってしまう。服が透明だから丸見えだ」

「ヒィィィ見ないで!!ああ舐めるのも駄目よ!!みんなもうやめてぇ!!恥ずがじくで死ぬぅ!!!」


脚をパカッと開いたところで、ナナ似のオーガの目から手を放したドモンが「とまあ、こんな感じかな?」と説明をしたが、ナナ似のオーガの頭は大混乱を起こしていて、「お願いだからもう離れて!服を元に戻して!」と周りに向かって叫んでいた。


機械を使わずに行う、恐怖のVR体験。

たった一分で着替えしなければならなくなった上に、一生涯のトラウマ・・・いや何かのネタとなってしまった。



「どう?わかったでしょ?私が裸で過ごした方がマシと言った意味が。私、これを馬車の中で何時間もやられたのよ?」とナナ。それを聞いてもサンは悩ましげに身体をくねらせている。


「裸で二階の窓にぶら下がって、通行人に見られながらオナラしちゃったんだぞククク!しかもそのついでに大・・・」

「ちょっとドモン!!言わないでよ!!!」


サンとサン似のオーガはやはりモジモジ。

ナナ似のオーガはまだ暗示が解けきっておらず、「いやぁぁ!見ないで!!」とバンザイしながら立ち上がり、必死に何かにぶら下がっているパントマイムを始めた。


それを見たドモンとナナはゲラゲラと笑っていたが、サンはそれをとても恐ろしく、そして魅力的に感じていた。


ドモンはスケベな事にしかその能力を使わないし、そんな事は絶対にしないとは思うが、「五分後に死ななければならない」と思い込ませることも「周りの人間をすべて殺さなければならない」と思い込ませることも可能であり、それが悪魔の持つ能力の中でも、ずば抜けて危険な行為だと悟ったためだ。


もちろんある程度の信頼を得てからじゃなければならなかったり、視界を奪った状態でなければならないなどの条件が揃わなければ出来ない芸当だが、一度かかれば、もうその運命はドモンが握っているのと同じ事。


全てはドモンの気分次第。その事実にサンは恍惚としていた。



「ドモン様大変お待たせ致しました!羊肉をお持ち致しました!」

「骨付きのままなんだな。骨から肉を取ってくるくると丸太のように丸めて、魔法で軽く凍らせてくれないか?ナナと違って氷の魔法出来るんだろ?」

「お任せください!」「容易い御用です」


オーガの男達の気持ちの良い返事。


「ちょっと!私だって氷の魔法出来るの知ってるでしょ!」

「一日一発だけだろ。知ってるんだぞ?氷の魔法使ったあと、疲れてウトウトしてんの」

「し、仕方ないじゃない!寝ないと回復しないんだから!」

「だから一発で魔力が空になる方がおかしいって言ってんだろ!」

「キィィィィ!!」


お互いのほっぺたを両手でつかんで引っ張り合うナナとドモン。


「よさんか!いい大人が夫婦揃って何をやっておる!」と、見るに見かねた義父が雷を落とした。

「そうだそうだ!ふたりの歳合わせて70近くなんだからナナはいい加減大人になれ」当事者なのに他人事のように言うドモン。

「なによ!その70の内の殆どがドモンでしょ?!あんたこそ大人になんなさいよ!!」当然ナナはもっと怒る。


「おやめください!」「ダメです!」とサンとサン似のオーガが二人を止めるも、収まる気配がない。


「でもあいつひとりで70超えちゃってるんだぜ?本当にジジイだな」

「そうねウフフ」「プッ!」


突然ふたりの矛先が義父の方に向かい、思わず吹き出してしまったナナ似オーガ。

サン達は頬がパンパンに膨らんでいる。



ハァ・・と大きくため息をついた義父だったが、もうそれ以上何も言わずにいた。

そこにいたのはいつものドモン。


「私がなんとかせねばなるまい」


義父はそうポツリと一言もらし、笑っているドモン達を見つめていた。







目隠しで暗示をかける話もゲーセンと居酒屋の話も実話だったり(笑)

まあ時効ということで。




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