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第275話

まだ温泉に入っているナナとナナ似のオーガ。

ドモンとサン達は食事の準備へ。


「あーあ。結局ドモン様の方がすごいし強かったのね」

「うん。まあ最近はちょっとやりすぎなんだけどね。あれでも本当に加減してたのよ?ドモンが本気になっていたら・・・」


ドモンが本気になっていたなら、心も操られていたかもという言葉をナナは飲み込んだ。

ただナナ似のオーガは何となくそれを察している。


「人間達も私のお父さん達も、まるで歯が立たないだなんて」

「ドモンがああなったら、みんな恐怖に飲み込まれてしまうのよ・・・仕方ないわ」

「・・・ナナには感謝ね。た、助けてくれてありがとう。あんなドモン様を止められるなんて、あなたもすごいのね」

「これでもドモンの奥さんだからね!エヘヘ」


ふたりも温泉から上がり、ドモンの元へ。

それと入れ代わるように義父や騎士達がやってきた。

まだもう少しかかるからと、ドモンが先に風呂にするように促したのだ。


ちなみにここの温泉は乳白色のにごり湯で、褐色だったゴブリン達の温泉とはまた別のもの。

傷だけではなく高血圧や動脈硬化等にも効果のある温泉で、年配の方には特におすすめだとドモンが得意げに語っていた。ケーコに連れ回された時に覚えた知識。


ドモンはここにも温泉宿を建てる気でいる。

オーガと人間達との交流の機会のためでもあるが、何より自分のため。


それをドモンがオーガ達に伝えたところ、驚きとともに歓喜の声が上がった。

特にエリー似オーガは喜び、涙を流しながら夫に抱きついていた。


「出ていった兄もきっと喜ぶわ・・・うぅぅぅ」と泣いた赤い肌のエリー似オーガ。出ていった兄は青い肌。



そんな話をしながらドモンは焼肉の準備に取り掛かる。


「おぉ?!これは随分いい肉だなぁ!」


オーガ達が用意していた牛肉と豚肉は、まるで元の世界で売っていた高級肉のように綺麗に脂のサシが入ったもので、これにはドモンも驚いた。

スライサーで実際にスライスした途端、ナナが「ド、ドモン!これってもしかして?!」と立ち上がり、ドモンと一緒にコクリと頷く。


「どうしてこんな肉が・・・?どこかの村からちょいと拝借したなんてことはないよな?疑っちゃ悪い話だけど、普通にその辺にいる野生の牛とかじゃ、なかなかこうはいかないと思うんだけど・・・」とドモン。

「ハハハ!そんな事はないですよドモン様。これらは私達が育てている家畜でございます」とオーガの男。

「牧場のようなものがあるのか?!」

「ええ、山の少し上の方で育てているのです」


オーガ達がいることによって人や害獣なども近寄らず、ストレスなくのびのびと育った家畜達は、甘みのある脂が乗ったおいしい肉となっていた。

それはオーガ達自慢の逸品で、だからこそドモンに食べてもらおうと、供え物として用意していたのだ。


「牛と豚以外には飼ってないのか?」

「あとは鶏や羊などがいますが、鶏は主に卵が目的なのと、羊肉は少しクセがあるので・・・」

「ドモン!!」「御主人様!!」

「ああ!」


オーガの男の返答の途中で、ナナとサン、そしてドモンも大興奮。


「ね、ねぇ!その羊肉ってジュル、すぐに用意出来るものかしら?」

「奥様ヨダレヨダレ」


また普通にヨダレを垂らしてしまったナナの口をすぐに拭くサン。

ナナ似のオーガは、何故か自分がヨダレを垂らしてしまった気分になり、猛烈な羞恥に身悶えていた。


「わ、私達の食事用に保存しているものでしたらございますけど、女神様が・・・あ、いや奥様が召し上がられるのですか?かなりその・・・味もニオイも・・・」

「大丈夫です!」「食べるわ!お願い!」


サンもナナと一緒になって羊肉を催促。


「俺からも是非頼むよ。もしかしたら、ここに温泉宿を作った時の名物になると思うから」

「は、はい!ではすぐに!」


慌てて駆けていくオーガ達。

実は食料を保管している山の洞窟まではかなりの距離があるが、オーガ達は十数分でここまで往復出来てしまうので、ドモン達はすぐそこだと勘違いしている。

馬にすぐに追いつく脚力を持ったオーガが十数分かかる距離だ。


「お前らは玉ねぎとピーマンを持ってきて、皮を剥くのと種取りをやっといて。もやしがないのが残念だけど、今回は仕方ないな」

「はい!」「お、お前ら!むふ!」


サン似のオーガは良い返事。サンは突然乱暴な呼び方をされて思わずクラクラ。

オーガ達の名前は聞いたけれどドモンは全く覚えられず、面倒になって全て指を差し「お前」で済ませていた。

それがサンにもうっかり出てしまっただけだが、サンは大興奮。


「何をやってるんだお前達は・・・」などと言われることはたまにあるけれど、命令口調での「お前」は、サンにとってのご褒美。

だがそれより最高なのは叱り口調。ゴブリン達と初めて会った時に「お前は!失礼だろ!」とドモンに怒られたあれだ。

ジル達には悪いとは思いつつ、サンにとって最低で最高の思い出。ドモンが行った本気の躾である。


今でもたまに夢に出てきて、寝ぼけて腰をくいっと持ち上げた状態で目覚めることがある。

シーツの洗濯と交換は大変だけども、その日一日は最高の気分で過ごせるのだ。


「こ、この玉ねぎの皮、剥きすぎて全部駄目にしたら、御主人様怒るかなぁ?」

「当たり前じゃない!すっごく怒られるわよ!!何言ってるのよサン???」


玉ねぎを剥きながら、妙な事を言い出したサンに呆れるサン似のオーガ。

そんなサン似のオーガにヤレヤレと、当時のドモンの躾がどれだけ激しいものだったのかをサンが説明し、サン似オーガを卒倒させた。


「ほらほら、おしゃべりばかりしてないで、しっかり手を動かせお前ら。50人前も用意しなくちゃならないんだから」


オーガの子供らに貰ったリンゴをナナと一緒に擦り下ろしながら、ドモンがふたりに注意。

ナナ似のオーガはピーラーを使ってリンゴの皮剥き中。もちろん最初は裏返しに使用してナナに笑われていた。


サン達に何の話をしていたのかとナナが聞き、呆れたように大きなため息を吐く。


「サン・・・おじいちゃんにも言ったけど、ドモンの本当の本当のお仕置きはそんなのじゃないのよ。ふぅ・・・」

「????」


ドモンがナナに馬車の中で何をやっていたのか?

話せる範囲を慎重に考えながら、ナナは語り始めた。





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