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第260話

慌てて起き上がったふたりの目の前には、筋骨隆々の大男が三人。頭には小さな角がふたつあり、肌の色は三者三様。

ドモンとは全く違う逆三角形の上半身は、何かの漫画の最強格闘家のよう。


「オ、オーガ?!」とナナ。

「え?それってやっぱりあの・・・息子もすごく強い?」とドモン。

「????」


ナナが話に聞いたオーガは、とても凶暴且つ残忍で、人間を食うと言われていた。

日本では一般的に「鬼」と呼ばれている。


「私達は確かに人間にオーガ族と呼ばれている者です。我が主よ・・・」


ドモンの前に跪くオーガ達。

心なしか恍惚とした表情で、変な話、投げられたボールを取ってきた犬が主人の前におすわりをして『褒めて褒めて!』とやっている時の雰囲気であった。


「奥様も驚かしてしまったようで、大変申し訳ございません。ほらお前達も・・・」

「申し訳・・・ございません・・・」「ああなんとお美しい・・・あ、いや大変失礼いたしました!」


さっきまでの驚きと恐怖はどこへやら。

ナナはもうお姫様気分。


「あなた達もその・・・ゴブリンやオークの人達と同じような?」

「はい」

「え?なになに?オークって何??同じってなんだよ???」


どうやら自分を中心に話が進んでいるようなのに、全く意味がわからないドモン。

ドモンは酔っていて、オークの記憶が殆どない。大きなおっぱいのふくよかな女性達とでも説明すればすぐ分かったが。


「あ!もしかしてさっきの地鳴りや雷って???」とナナがポンと手を叩いた。

「は、はい!物陰から見守っていたのですが、我が主の意思を感じ・・・」


「もう!すごく驚いたわよ!やぁねウフフ」

「も、申し訳ございませんでした!!余計な真似を!!」

「いいわよ。許したげる」

「ありがたき幸せに存じます!!」「ああ女神様・・・」「祝福を感謝致します!!」


ドモン抜きでやけに弾む会話。単純なナナはますます良い気分。

ドモンはキョロキョロ。


「お前、魔物達の女王かなんかなの?」

「はぁ?それはあんたでしょ!!あ、いやそうじゃなくて、ドモンのせいというかなんというか・・・」「アワワ」

「?????」


「あんたはなんか魔物にとって、親しみやすい顔なのよ!ね?そうよね?ね!」

「は、はい」「ええ・・・」「・・・・」


ドモンとナナの会話に冷や汗が止まらないオーガ達。

やはり色々と魔王に口止めされており、ナナ自身も以前オーク達が口止めされているという事を聞いていたので、オーガ達を気遣って慌てて誤魔化した。


ドモンも自分の悪魔関係の何かだとは悟ってはいるけれど、いまいち確証も持てなければピンとも来ていなかった。

普通の暮らしをしている中、なにかの暴力的な組の者達が突然目の前に現れて、「三代目!」と頭を下げられてる気持ち。


「まあなんかよくわからないけど、ナナ、ピザ一枚余ってたろ?折角来たんだしあげたら?」

「そうね!少し待っててみんな!」

「えぇ?!俺達・・・いや私達なんかにまで?!」


タタタタと駆けていったナナが、すぐにピザを持って戻ってきた。


「少しだけ冷めちゃったけど、まだきっと美味しいわよ。それより『もう腹が空いたのか?!』とおじいちゃんが驚いていたわ」とナナがヤレヤレ。

「まああり得なくはないのがナナのすごいところだ。ほらみんな食べてよ」とドモン。切込みが入ってなかったので手で千切った。

「あ、ありがたき・・・うぅ」「この御恩は一生忘れません!」

「ウフフ!大げさよみんな」


正座をするように膝を地面に付きながら、一口でぺろり。

その味、その旨味。そして自分達のために駆けてまでピザを取ってきてくれたナナ、それを千切って分け与えてくれたドモン、それらすべてに感謝。そして感激。



「で、結局何しに来たんだ?まさか本当にナナのおっぱいが呼び出しボタンになっているんじゃ・・・ほれポチ」

「はぁん!もうヤダこのスケベおじさん!!そんな訳ないじゃない!!」


またイタズラをしたドモンの頭を引っ叩くナナ。


「そ、そういった訳ではないのですが、主様がお困りのようでしたのでつい・・・」

「主ってやっぱり俺のことなの?やめてくれよ、ドモンでいいよ」

「!!!!!そんな恐れ多いことを!それだけはお許しください!」

「せめて名前にして。御主人様的な呼び方はやっぱり女だけがいいな」


メイド喫茶でこのオーガ達が働いているところをつい想像したドモン。

ないないない!と妄想を必死に打ち消した。筋肉カフェも人気はあるけれど、ドモンの趣味ではない。


「え、ええ、では・・・ドモン様・・・」オーガの顔は真っ赤。このオーガは青い肌なのに。

「まあそれなら良いか。ゴブリン達もそんな感じだし」


ようやくドモンも納得。話はさっきの続きに戻る。


「もうおひとりの奥様がその・・・楽しみにしておられました先程の・・・」

「ああ、風呂は残念だったな」


「はい。それでその事についてなのですが」

「この先の街を越え、その次の山の麓に温泉が湧いておりまして、是非それをお知らせしたかったのです」


横にいたふたりのオーガが、真ん中のオーガと一緒になって矢継ぎ早に要件をドモンに伝えた。


「おぉ!?それはいい情報だ!やったぜ!そこはお前達の棲家か何かか?」

「棲家は山中の洞窟なのですが、その温泉も時折利用しておりまして」

「寄る寄る!必ず寄るよ。ありがとうみんな」


ドモンは跪いたままのオーガ達とがっちり握手。

その見た目に反して、信じられないほど手が震えているオーガ達を見て、ナナがプッと吹き出した。


「では私達はその温泉を綺麗に整備するため、一足先に向かいます」

「旅のご無事をお祈りしております!」

「温泉への入り口には、この青い布を印として木に括りつけておきますので。では!」


まだ遠いと思われるその山の麓までそのスピードで持つのか?と、疑問に思うほどの速さで走り去っていくオーガ達。

ひとりのオーガがよそ見をしていたのか木にぶつかり、その木を倒しながらも止まらずに駆けていった。


苦笑しながらオーガらを見送り、ドモンとナナはゆっくり目を見合わせる。



「ねえナナ、結局俺ってなんなんだろ?この世界で」

「さあ?魔物達にとってなんか偉い人だとは思うけど。ゴブリンの長老さんに聞いても本当にわからないって言うのよ」


「なんかあいつらゴブリン達よりもずっと強そうなのに、ゴブリン達よりも緊張してたよな」

「うーん確かにそうねぇ・・・」


ドモンにそう言われ、確かに強そうなオーク達もそんな感じだったと思い出したナナ。

それでもオーク達はまだドモンと親しげにしていたが、今回のオーガ達はそれどころではない。

ドモンが手を握っただけで震えていたのだから。


「ま、いいか。あ!それよりジジイに紹介するの忘れちゃったな」

「知られたくなかったから、私達二人になった時に出てきたんじゃないの?」


ここでもオークの言葉を思い出したナナ。確か秘密にしたがっていた。


「だとしても、みんなで温泉に寄るんだぜ?」

「あ!確かに!!まあ・・・ドモンの方が重要だったのよ。あの人達にとっては」


あんなのと戦いになんかになれば、並の人間ではまるで歯が立たないだろう。

人間がどうの、王族がどうのなんて、きっとオーガにとって関係のないこと。


オーガがうっかりぶつかって、根元から折ってしまった木の幹は、直径1メートルは優に超えている。

ズズンと音がした方へすぐに騎士達が確認しに行ったが、現場についた頃にはすでにもぬけの殻。

それほどのスピードで何事もなかったように去っていった。あれは人間レベルでは無理。



「子供がいるかどうかも聞きそびれちゃったな。あとオーガの女達のことも・・・イヒヒヒ」

「ハァ・・・じゃあほら、呼び出しベルだかってのもう一度押してみる?」と冗談で胸を突き出したナナ。


ドモンが両方の先端のボタンを両手でポチッと押した瞬間、ドモンの元気なレバーをナナが鷲掴みにしてグッと下げた。




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