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第259話

「アッタリマエじゃないドモン!アハハ!」

「そ、そりゃまあそうだよな・・・」


たまたまやってきたナナにも笑われてしまったドモン。


「てっきり王宮で寝泊まりするのかと・・・」

「貴様という男は・・・」


王都では王宮に泊まる気満々でいたドモン。

言われてみれば確かに無茶な話である。



元の世界で言うならば、皇居で行われる催し物か何かにお呼ばれをした有名人やスポーツ選手が、田舎から東京へとやってきて「え?皇居に泊まれるんじゃないの?!」と言っているようなもの。


それに気がついたドモンは顔が真っ赤に。


いくら義父と仲がいいとはいえ、それがどうした、だ。

学校で仲良くしている級友が「今日遊ぼうぜ」「じゃあ皇居に来いよ。ついでに泊まっていけ」なんてことになれば、ちょっとしたニュースにもなるだろう。


その上、隙きあらば侍女にまで手を出そうとしていただなんてバレた日には、いくらカールの義父でももう庇いきれはしない。頭と胴体が切り離されて終わりだ。



「まあある程度は良い宿を用意する故、そこで寝泊まりするがいい」

「はいはい、わかりましたよ」


ナナだけじゃなく、ピザのおかわりを持ってきたサンにまでウフフと笑われる始末。

ドモンは赤い顔のまま、少し離れた森の中の草むらに、ビニールプールを膨らませて風呂の準備をした。


「あっちに膨らませておいたから、あとで頃合見てナナとサンでお湯入れといてよ」

「わかったわ」「はい!」

「最初にジジイやみんなを入れてから、俺らは最後に入ろう。ゆっくり入れたい・・・じゃなかった、入りたいし。いや入りたいってそういう意味じゃなくて。結果そうかもしれないけど、俺が全部入るわけじゃなく一部分、いや先っぽだけだから」

「・・・・」


ジトっとした目でドモンを睨むナナと義父。サンは赤い顔をして走り去っていってしまった。



「サン、もうそのピザで最後みたい・・・って、何しているの?」と、まだピザを馬車のストーブで焼いていたサンの元へやってきたナナが、不思議そうな顔をしながら尋ねた。


「お、奥様!!あのあの・・・その・・・汗をかいてしまったので香水を・・・」恥ずかしそうなサン。

「あ!!!わ、私も汗かいちゃったから少しつけていこうかな・・・」とナナも照れ笑い。


これから風呂に入るというのに香水をつけたふたり。

髪を髪留めで上げ、うなじも露わに、少し色っぽい格好で馬車から出てきた。


「ふぅ~暑いわ~」テントで休んでいたドモンの隣りに腰掛けたナナが、服の胸元辺りをパフパフ。

「いや、くっそ寒いだろ!何言ってんだ」季節はもう秋である。夜風は冷たい。


風呂の準備も整い、義父や騎士達にお風呂に入るように促したサンもテントへやってきた。


「はぁ暑いです」とドモンにくっつくサン。

「だから寒いってば!てかなんかふたりとも・・・」


クンクンとふたりの首元の匂いを嗅ぎ、ドモンはムズムズ。

今にもふたりを押し倒さんばかりのドモンを「まだダメよ」とナナがお預け。

「あとでた~っぷりいろんなところを洗ってあげますからね?ドモンさん」と微笑むサン。


もうさっさと義父や騎士達をビニールプールから追い出して、真っ裸になって飛び込みたいドモン。が、その時。


「うおおお!なんだ?!」

「ああ!!」「うわっ!」「あーーっ!!」


義父と数名の騎士の声が森に響き、すぐに「ド、ドモンよ!!」と呼ぶ声が聞こえ、ドモン達が慌てて見に行くと、ビニールプールはペチャンコに潰れていて、義父と騎士達が裸のままオロオロと狼狽していた。


「ああ~!!」サンの悲痛な叫び声。

「何があったのよおじいちゃん!」とナナも目を見開く。


「わ、わからぬ!突然爆発音がしたかと思えば、潰れて湯が抜けてしまったのだ」と焦る義父は、何かをブラブラさせてしまっているのも気が付かず。

「やはり場所をずらしてしまったのが悪かったのではないでしょうか・・・」と騎士のひとりが言い、義父はジロリと睨んでいるドモンから目をそらす。


「あー完全に穴が開いているな。お湯入れたまま引きずった時に、石か何かで傷がついたんだ。修理する道具は向こうでたくさん買ってきたけど、今回は屋敷に置いてきちゃったから街に戻るまで直せないぞ」

「うわぁぁん!戻るぅぅぅ!!」

「サンってば・・・流石に無理よ・・・」


ドモンの言葉にサン大号泣。

ナナも残念ではあったけれども、あまりにサンが泣いてしまった為にもう慰め役に徹することにした。

謝罪しようにも全裸で気まずい義父。


「どうして場所をずらそうなんて思ったんだよ?」

「い、いや、折角ならば夜空が見えた方が情緒があると思ってな・・・ほれ、ゴブリンの村の温泉のように・・・な、なんとかならんのか」

「こればかりは道具がないとなぁ・・・買ったばかりだから壊れること想定してなかったんだよ」

「むぅ・・・」

「とにかく服着ろよ。こいつらもいるし寒いだろう」


ドモンの言葉にそそくさと服を着た義父と騎士達。

サンを泣かせたのと、貴重な物を壊したのとの両方で、空気も重苦しい。


見るも無惨な姿になってしまったビニールプールに付いた水滴をサンは拭き取りながら、何度もフゥと小さく溜め息を吐いて、スンスンと鼻水をすすっている。

たまに義父をちらっと見てはプイッと顔をそらす。目の下の頬に涙の筋。


「従順で、酔っていない時はしっかり者のサンがああなるって余程のことだぞ?」

「いやぁ面目ない」

「それこそ王宮で結婚式を挙げてやると言っても『結構です』と断りそうな勢いだ」

「うむ・・・」


ドモンが言っているのは嫌味でも何でもない。

サンのその背中がすべてを物語っていた。


「あーあ。黙って行っちゃった」と、ビニールプールを折りたたんで馬車へ戻るサンを見送るナナ。

その後を重い足取りで追う義父と騎士達。


「どうすんの?すっごく怒ってるわよ?」

「そんな事言ったって、俺が壊したわけじゃあるまいし」

「よ、夜にたっぷりスケベなことをしてあげるとか・・・」

「なんかそんな雰囲気でもなさそうだぞ?」


そのドモンの言葉通り、サンは馬車に戻ってビニールプールを箱に片付けるなり、馬車の中に布団を敷き、ドアをガシャンと締め切って朝まで不貞寝を決め込んだ。

暫くの間、義父と騎士が馬車の外から謝罪を続けたがサンの返事はなく、皆落ち込むことに。


「どうにかしてあげてよ。サンも可哀想だし、おじいちゃんも気の毒だわ。悪気があったわけでもなさそうだしね」

「うーん・・・」


ナナと添い寝をするように横に並んで草むらに寝転び、夜空を見上げるドモン。


ふと横を見るとレストランの呼び出しベルを何倍も大きくしたようなナナのおっぱいが目に入り、いきなり指でむにゅっと先端を潰して「ピンポーン!おーいこっちだこっち!早く来い!」とやりだした。


「あん!!いきなり何すんのよ!!」

「いや呼び出しボタンかと思って。サンが来るかもしれないだろ」

「おっぱいなんかで呼び出せるわけないじゃない!バカ!!こんな時に!!」


「お呼びでしょうか我が主よ」

「きゃあ!!」「うおっ!ホントに来た!?」


突然の事にふたりは驚き、「お、おあいそで・・・」とついドモンは返事をした。





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