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第258話

「おぉ・・・そなたらのような麗しい娘達がなぜこのような醜い男に・・・」

「うるせぇジジイぶっ殺してやる!」


ドモンのその言葉とは裏腹に、義父はうつ伏せになったドモンに馬乗りになったまま、優雅にピザをつまんでいた。

仰向けだとドモンの爪の反撃にあうことを以前学んだ義父に抜かりはない。


微笑ましい親子喧嘩だったのが、ドモンがちょっかいをかけ続け、気がつけばほんの一瞬でこうなった。


「なによ、作ってくれるっていうんだから別にいいじゃない」とナナ。

「ああ~おやめ下さい!御主人様が大変です~!」と、サンは高級ドレスよりもドモンが心配。


サンが義父の腕を持ってウンウンと引っ張るもびくともせず。

ナナはヤレヤレといった表情でまたピザをひとつまみ。


「ほれ、悔しければここから抜け出してみろ。出来ぬであろう。これが野盗であるならば、貴様はこのまま首をかき切られ死んでおるぞ」

「くそ・・・」

「だから王都で貴様を鍛えてやろうというのだ。このサンやナナのためにもな」


膝でドモンの両腕も抑え込み、したり顔で語る義父。

ドモンはもう完全に身動きが取れず。が・・・


「・・・いいんだな?本当に・・・」


ドモンの目が赤く染まる。

それを見たナナとサンが大慌てで叫びだした。


「駄目よドモン!!やめなさい!!おじいちゃん早く逃げて!!」

「御主人様堪えて下さい!!」


義父ではなく、ドモンの方を止めるふたり。

だが義父はどこ吹く風。


「なぁに、もう同じ轍は踏まぬ。此奴のやり口など重々承知しておる」

「ナナ・・・サン・・・離れていろ。騎士達もだ。そしてジジイ、てめぇも一旦離れろ。巻き込みたくはないからな・・・」

「む?!貴様?!」

「逃げて下さい!!」「おじいちゃん早く!!あなた達も急いで!!」


ぎゃあぎゃあと鳥が鳴き、空に羽ばたく。

周囲の木々がガサガサと揺れ、地鳴りがし、そして夜空に雷鳴が轟いた。


義父は慌ててドモンから飛び退き、後退りを続けるナナとサンの腕を引っ張り馬車の陰に避難。

騎士達はそれを囲むように輪となって、剣を抜きドモンと対峙。


「ドモンは・・・ドモンはどうしちまったんだ?ナスカ・・・」とファル。

「ド、ドモンは・・・」本当に悪魔なのかもしれないのという言葉を、ギリギリで飲み込むナナ。


ゆら~りと立ち上がったドモンは、俯きながらゆらゆらと三歩ほど歩き、ゆっくりと顔を上げた。


「どうだ・・・」とドモン。

「な、なんだ?!」ドモンを見つめる義父。


「抜け出しただろ」


そう言ってタバコに火をつけたドモン。

全員状況を全く把握できていない。


「抜け出せるものなら抜け出してみろって言うから、こうして抜け出しただろ」

「ハァ?!」


ドモンの言葉にナナが一番に叫んだ。


ドモン渾身のブラフ。

以前はいまいちだったが、ナナやサンまで利用することによって、ようやく義父も引っ掛けることが出来ドモンは大満足。


ただこのドモンのブラフに、近くにいた魔物達も協力していたことはドモン本人も知らない。

この時、雷の魔法を放つことが出来た魔物は、後に魔王から直々に表彰されることとなった。



「貴様という男は・・・」

「あ、あんたねぇ!!ぐぎぎぎ!!」


呆れる義父と怒れるナナ。

ナナは本気で心配していたのだ。

サンはうううと泣いて、ドモンに抱っこされている。


「嘘だって計略のひとつだ。むしろ戦いなんてある意味嘘のつきあいだ。騙し騙され、最後に騙し抜いた奴が勝つ」

「・・・・」義父も含む一同、言葉もない。


「剣を振ると見せかけ、先に相手に剣を振らせ、防御を出来なくさせてから斬る。これもある意味嘘から始まっているだろ?」

「なるほど・・・」騎士もようやく納得。


「敵を油断させたり欺いたり、自分を強く見せたりあるいは弱く見せたり、カードゲームが好きなジジイはよく分かるはずだ」

「・・・・」

「ジジイはストレートフラッシュだったのに、俺がエースの4カードを持っているように嘘をつき、ジジイは勝負を降りた。それだけの話だ」

「フン・・・また負けたのか私は」



くだらないやり取りではあったが、それもある意味ドモンの本当の能力である。

人の心を操り、意のままに動かす。それがどんなに恐ろしい事か。


これがもし戦争だったならば、数千人数万人の生命の行方を左右していたかもしれない。

そもそもその戦争自体も、言葉ひとつで起こりうるのだ。



ドモンにはそれが出来る可能性がある。



これならば、魔法などで大きな攻撃をされた方がまだマシ。

その本人を倒せば済むのだから。


その嘘によって残された遺恨や心に刻まれた傷は、その本人がいなくなった後も、消えることはなかなかない。

国民を丸ごと洗脳し、他国を恨ませる事をしている国も実際にあるくらいだ。


各々が怒ったり笑ったり納得したりしている中、サンだけがしくしくと泣き続け、そして義父だけがそんなドモンを恐ろしく感じ、顔を青くしていた。



「ほらサン、騙しちゃったのは謝るから、食事の続きを早く済ませて風呂にでもしようぜ」

「うぅ・・・はい」

「まだ食べてない奴やおかわりをしたい人もいるだろうからな」


トンと膝の上からサンを下ろすドモン。


「私あと二枚食べる!もうドモンのせいで今夜はヤケ食いよ」とナナ。

「お前はヤケにならなくてもそのくらい食べるつもりだっただろ」

「デヘヘ当ったり~。さあサン、どんどんピザ焼こ?」「はい!」


元気を取り戻したサンと一緒に駆けていくナナ。

ふたりを見つめながら、ドモンはまたタバコに火をつけた。


「さて俺は風呂の準備でもするか。ジジイも入るだろ?」

「うむ」

「王宮の風呂ってどんな感じなんだ?やっぱりあの皿みたいな風呂?」

「そうだ。まあ近々大風呂にするつもりだがな。貴様らだけ楽しませてたまるか」


ドモンと話しながら義父もピザをおかわり。

70を超えているとは思えない食べっぷり。


「あの風呂はあの風呂で、俺としては珍しいから残しておいてほしいんだけどな。侍女達が湯加減聞いてきてイヒヒヒ!お湯を足す時にチラッと見てくるんだよな」

「見ておらんわ!貴様はいつもそんな事を考えおって・・・」

「ジジイだってすぐ色んな女とズッポシやってるだろ。俺も楽しみだぜ!王宮でズッポシするのが」

「ん?」

「え?」


会話の途中で何かが噛み合わずピタリと話が止まり、お互いにキョトンとした顔でしばらく向かい合っていた。






『人の心を操り、意のままに動かす。それがどんなに恐ろしい事か。

これがもし戦争だったならば、数千人数万人の生命の行方を左右していたかもしれない。』


えー、この部分の伏線回収は恐らく行われません(汗)

第234話のあとがきで書いた通り、韓国での将棋倒しになった痛ましい事故があったため、このあたりの話を丸ごとカットしたんだけど、ここは残ってしまっていた。


でもこの話を削ると次話以降が変な感じになってしまうんで残した。


ちなみにこの辺のプロットは、エリーやナナが店で客を掌握→ナナが広場で客を整列(和風パスタ作った辺り)→祭りで人心掌握術披露→今回の話→この先紆余曲折→戦争→ドモンらの活躍で敵軍大混乱で自滅→そして伝説へ(?)みたいなことになるはずだったのだけれども、途中から丸ごとカット。


海辺の町付近の話も端折ってしまったので、なんか申し訳ない。読んでもいないんだから知らんけど??という人が多いとは思うけども(笑)

「近所の掃除をしてこの辺り一面きれいになる予定でした」と言ってるようなもんだしな。聞かされた方は「知らんわ」としか言いようがない。


自分の中ではちょっと気持ち悪い感じで残ってしまっているので、いつか万が一書籍化でもされたら書き足す予定・・・ってことにしとこう。自分のために。




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